第23話 仮面の貴族の正体は!?
私は立ち上がって、颯爽と馬車を降りた。
「お嬢さん! 移動中ですよ! 勝手に降りたりしないでください!」
「馭者さん、私今から走ってキノエ海岸まで行くわ。お金とか返さなくていいから、それじゃ!」
「あぁ、ちょっと待って!」
馭者の制止を振り切り、私は一目散に走り出した。やっぱりこっちの方が早い。
一分も経たないうちに、馬車は見えなくなった。そしてすぐに目的地に到着した。
「ここがキノエ海岸……あぁ、海風が気持ちいい」
目の前に広がる綺麗な海、そして澄み渡る海風、思わず癒されるわ。
さっきは馬車の中で思わず変な気分になったから、ここで思う存分洗い流そう。
「ここの海風は最高でしょう。それに海の幸も豊富に採れるんですよ」
「へぇ、そうなの。野営をするには最適……って、あなた!?」
なんとすぐにマクスウェルも駆け付けていた。この男も走ってきたの。
「女性一人だけを走らせるだなんて、そんなことできませんよ」
「……あなたを少し見くびっていたわ」
「ふふ、仮にもAランクですよ」
「でも戦闘力はどうかしらね。ほら、あそこ。目的の奴がいたわ」
私が指差した先にちょうど巨大なカニ型の魔物がいた。
フライングクラブ、ギルドで見たのと同じ外見だ。図体もデカいけど背中に虫のような羽も生えている。多分飛べるわね。
「言っておくけど、私は一切手を貸さないわよ」
「ご心配なく。すぐに片づけて見せますよ」
マクスウェルは腰の鞘から剣を抜き、フライングクラブのそばまで近づいた。
向こうも彼を感知したのか、すぐさま向きを変えた。そして羽を広げ、飛び上がった。
「本当に飛んだ、あのカニ……」
「しゃああああああ!!」
でかい図体のくせに意外と身軽なのかもしれない。そのまま巨大な両腕のハサミを広げ、マクスウェルに攻撃を仕掛ける。
しかし彼は動じず、さらりとかわす。そして彼も高くジャンプし、剣を振り下ろした。
よく見たらあの剣、ミスリル製ね。フライングクラブは声もあげず真っ二つだ。呆気なさすぎる。彼が強いのか、それとも敵が弱すぎたのだろうか。
「終わりましたよ、ナターシャ殿」
「あぁ、そうね……」
「これで問題なく合格ですよね?」
動きに全く無駄がない。Aランクの実力は確かみたい、いやそれ以上かも。
彼の言う通り、本来ならこれで合格だ。でも私は、彼に確認しないといけないことがある。最も大事なことを。
「まだよ。魔法の腕前も確かめておきたいわ」
「そうですか。わかりました、では二匹目を見つけましょう」
その時、背後に気配を感じた。魔物ね、しかも同じフライングクラブだ。
すぐに振りむいて反撃、と行きたいところだけど、私は敢えて気づかないふりをした。
さぁ、マクスウェルはどう動くかしら。
「危ない! ナターシャ殿、伏せて!」
彼が剣を持っていない左手を広げ、前に出した。次の瞬間、背後で爆発が起きた。
「ぎりゅあああああ!!」
後ろを振り向くと、フライングクラブが焼き焦げた状態で倒れた。そしてマクスウェルの行動も予想通りだ。やっぱり私を護ってくれている。
「大丈夫ですか、ナターシャ殿!?」
「フレアボールじゃない。威力もかなりあるわね」
「いえ、褒めている場合じゃないですよ。ここには魔物が多いようです、気を引き締めてください」
「えぇ、そうね。でもあなたはしっかりと私を護ってくれるでしょ?」
「……私はあなたの相棒に過ぎません。冒険者としてパーティーを組むわけですから、自分の身はあくまで自分で守りましょう」
「その通りよ、自分の身は自分で守る。でもあなたは絶対に私を護ってくれるわよね?」
マクスウェルはほんの少しだけ微笑んだ。
「それはまた、信頼されていて嬉しい限りです」
「そうよ。だってあなた、白馬の王子様なんでしょ?」
その言葉にマクスウェルも固まった。
「……それは……どういう意味でしょう?」
「とぼけないで、もう正体はバレてるわ。いい加減仮面を外しなさい」
マクスウェルは仮面を握った。さすがの彼も観念したようね。
そしてそのまま取り外そうとしたけど、急に周囲の様子をうかがい始める。
「ここじゃまずいから、あの洞穴へ行こうか」
彼が指差した先の岩肌に、大きな洞穴があった。私は頷いて、マクスウェルと一緒に洞穴へ向かった。
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