第17話 クレセントバード討伐!
私は重大なことに気付いて、鳥の声がした方向へ走った。気配を探るとウィンディも走っているのがわかった。
なんてこと。最初から罠だったのね。多分彼女、私が狙っているのを逆手にとって、あえて違う鳥を射落としたんだわ。
その推測は当たっていた。鳥が落下した場所に到着すると、そこには本命のクレセントバードが矢に貫かれて倒れていた。
だけど、すぐウィンディも現れた。
「やっぱり、あなたもなの……」
「一本取られたわね。さっきのドリルバード、わざとでしょ?」
「そうよ。でも罠だと気づいても、ここに来るの早すぎでしょ?」
「ふふ、足の速さには自信があるのよ」
「サンダルのくせに」
ウィンディも私が間に合ったのが予想外のようね。まだウィンディはクレセントバードに近づかない。警戒しているのね。
でも私は決心した。
「その鳥はあなたの獲物よ」
「あら? もしかして負けを認めるの?」
「認めたくないけど、その弓じゃね」
「……じゃあ、いただくわ」
ウィンディはクレセントバードに歩み寄った。でも立ち止まり、私を見た。
「どうしたのよ、急に立ち止まって」
「とぼけないで。私が矢を抜く瞬間を狙っているでしょ?」
「う……それは……」
なんてこと。私の考えが見抜かれてた。確かに彼女の言う通り、弓で攻撃できない瞬間を狙おうと思ったのに。
「さっさと離れなさい。でないと……」
ウィンディは私から目を離さず、弓を構えた。
「あぁ、もう。わかったわよ」
しばらく歩いて振り向いた。ウィンディはまだ弓を構えたままだ。さっきの私の魔法を見たせいか、一切油断しないつもりね。
だけどこのままじゃ、本当に獲物を奪われるわ。どうしたらいいの。
「ぎぃあああああ!」
突然鳥の鳴き声が聞こえた。その鳴き声の正体がすぐにわかり、咄嗟に振り向いた。
「あれは!?」
「まだ生きてたの?」
「しゃあああああああ!!」
クレセントバードはまだ生きていた。ウィンディも驚いている。起き上がって、そのまま自らの嘴で矢を引き抜いた。
「やるじゃないの、あの鳥。まだ一矢報いれるわ」
「矢がもったいないじゃないの、全く」
舌打ちしたウィンディがクレセントバードに向けて矢を放った。
カキイイイイン!!
何かが衝突した音が聞こえたと思ったら、矢の軌道が急に変わった。
「え? なに今の……」
「そんな、弾いた?」
なんとクレセントバードは頭部の角で飛んできた矢を弾いた。なんて鳥なの。
あの三日月形状の頭部は飾りなんかじゃない。確かに鋭利にように尖っているから、強力な刃物にもなるわ。でもまさか矢まで弾くなんてね。
ウィンディも弱い魔物だからと油断していたようね。
「ちっ、しゃらくさいわね!」
意外と口が悪い女性ね。今度は仕留めようと、力強く弦を引っ張った。
「しゃあああああああ!!」
「え? あれは?」
直後、クレセントバードは首を大きく真横に振った。なんと頭部の尖った刃物の部分が、そのままブーメランのように飛んでウィンディに向かって行った。
「なんですって!?」
予想外だわ、まさかこんな攻撃をするだなんて。
一瞬動じたウィンディだけど、そこはさすがのエルフ、軽い身のこなしでさらっと躱した。
でもこれで終わりじゃなかった。刃物はそのままぐるっと一周して、クレセントバードの頭部に戻るかと思ったら、そうはならなかった。
なんと空中で向きを変え、またウィンディの方に軌道を変えた。
「嘘!? どうなってんの!?」
さすがの彼女も動揺を隠せない。ブーメランのような軌道になるかと思ったら、そうはならずに無理矢理向きを変えるんだもの。
明らかに普通の動きじゃないわね。私は注意深く飛んでいる刃物を見た。
「なるほど。そういうことね」
よく見たら、刃物には何やら細いひもがつながっている。ひもはかなり細長く、クレセントバードの頭部と繋がっている。
ひもは体毛の一種かもしれないけど、ようするにあの鳥、刃物を投げたんじゃなくて、頭で振り回しているだけなのね。
どうりで変な軌道になるはずだわ。そしてあまりに細長いから、一瞬何も見えない。でも種が知れたら、どうってことないわ。
「じゃあ、ウィンディには悪いけど、私がいただくわ」
ウィンディは今攻撃をかわすのに必死になっている。多分ひもの存在に気付いているんだろうけど、矢だと当てづらいわね。
この隙を逃すわけにはいかない。私はそっと気配を消して、クレセントバードに近づいた。近づいてわかったけど、意外とデカい鳥ね。体長2メートルくらいあるのかな。
「ぎぃ? ぎぃあああ!」
私に気付いた。そのまま攻撃の対象を私に変えたみたい。
「遅いわよ!」
すぐさま奴の懐に近づき、私の正拳突きを腹部に直撃させた。クリスタルロックまで破壊した一撃だけあって、クレセントバードもさすがにこれでノックダウンね。
「ふぅ、これで討伐完了ね。シャワーでも浴びたいわ」
「あ……あなた」
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