第50話 超☆会議へのエントリー
帝都にヴェノム達がたどり着いて、しばらく後。5階建ての大きなビルの広い一室に通された彼らの待遇は、一言で言えば貴族さながらだった。
世話役のメイドが一人つき、今は扉の外に待機しているが、ヴェノム達が見た限りでは他の部屋も同様のようで、つくづくこの世界の配信者の人気が伝わってくる。
「いやー、まさかあれだけ有名になってるとはな」
「凄い数の住民の方でしたね」
「あの
帝都の城壁前、白いレンガが
ヴェノム達に自覚は無かったが、商業のジャマにしかならない盗賊や闇ギルドは商業で成り立つ帝都の民の恨みの対象で、それを毎日のように蹴散らしたヴェノムたちは、まさにヒーローなのだった。
そこから入国審査が終わった段階でメイド服の女性が案内係として現れ、そのままこのホテルに案内されたのだ。
ちなみに護衛の馬車は別の通りに案内されて行った。
「流石帝都だな、しかもまだここって帝都で言えば端っこだろ? そんなところのホテルでさえカキョムの迎賓館と変わらないもんな」
「ですよね。あ、地図で場所を覚えとかないと……」
紅茶のカップを
「えーっと……」
「ここが入国審査を受けた検問。そこから北へ向かって進んで、東に一回北に一回曲がったからここだな」
指で迷いなく来た道をなぞるヴェノムに、コロラドが驚きの目を向ける。
「凄いですねヴェノムさん……曲がった回数とか方角、覚えてるんだ……」
「いや普通覚えとかないと迷うだろ。こんなの慣れだよ慣れ。お前ならすぐにできるようになるさ」
場所はわかったが、重要なのはそこからだった。
帝都の地図は5色に色分けされており、『うーさぴょんの超☆配信者会議予想動画』にあったように、エリアごとに特色が違うらしい。更によく見れば今ヴェノム達がいるホテルには地図上に色がないが、周囲のホテルを地図で見るとそこは赤や青の色が塗られ、窓から実際に確認すると同じ色の旗がはためいていた。
すると扉がノックされ、入室をヴェノムが許可すると、
「お気づきのようですね」
と、メイドが言った。
小柄なメイドだったがそれでいて立ち振る舞いは
「ご説明をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「お願いします」
「今ご覧になっているあの旗は、そのホテルで『許可された配信』を示します。細かいことは地図に記載がありますが、赤は食事に関係する配信、青はクイズ・考察・討論に関係する配信、そして黄色は決闘に関係する配信です」
「決闘……」
「ほとんど当たってましたね、うーさぴょんの超☆配信者会議予想動画」
「1週間後の開会式、その前日までにお客様には『登録』を済ませて頂きます。赤青黄、どの色の配信で参加するかを期日までに私にご申告ください。そしてさらに、お客様にはこれを」
「?」
見ると、それは木の板に星が3つ焼印されたものだった。
「……これは?」
「色の登録とは別に、今回の参加者の皆さまを星で分けさせて頂きました。
お客様のランクは星3。最大が星5ではありますが、星5は各国王族のような
「へー……」
「ランクですか」
「私には無いのか?」
「いえ、スカーレット様は護衛としてご連絡頂いておりますので、こちらの太陽の札をお持ちください。
ヴェノム様かコロラド様のご同行さえあれば、同じランクとしてご対応させて頂きます」
「ふむ、ありがとう」
「お渡しした地図にも記載はありますが、星3の方々はご登録以降のお食事が赤旗の店舗で無料、ご宿泊先もご登録先と同じ色の旗の宿場であれば1日1か所、ご自由にお選び頂けます」
「つまり、例えば今赤色で登録すれば、今夜はそこの赤のホテルに宿泊できるのか?」
「その通りです。ただしご登録までのご宿泊はここ以外実費となりますのでご注意を」
「実質、今日中で決めなきゃですね」
「うーんまぁそうだな。今決めるか……」
とはいえ、選択肢は一つしか無いに等しい。
「……黄色で登録してくれ」
「かしこまりました。それではヴェノム様並びにコロラド様は『ジャンル【決闘】の星3実況者』となります。変更は不可能ですが、よろしいでしょうか?」
「はい」
「大丈夫です」
「……かしこまりました、ではお手続きをさせて頂きます」
そう告げてメイドはポケットから小さなビンを取り出し、中に何かのハンコを押し込んで、星の焼印のプレートに押す。
「これで、お手続きは終了です。それでは最後に『とあるお方』からの伝言ですが……」
「?」
「『配信中に法はありません』。そして、『スラム街には近づかないように』。それでは引き続き、宜しくお願い致します」
そう言ってメイドは頭を下げ、部屋を出た。ヴェノム達はしばらく無言だったが、コロラドのお腹がくぅ、と鳴って赤面する。
「……メシでも行くか」
ヴェノムのその言葉で、次の行動が決まったのだった。
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