第12話
市街地の武器屋で立ち入っていた。多くの武器はすでに売り切れのようで新しく作るにも素材が国王が独り占めしているために作れない状況だった。
「国王がなにかも材料を独り占めにしちまってんだ。もう本当に最悪だよ」
「そうでしたか…」
「みんな表では言わないが、今の国王は民のことなんてなにひとつ考えていない。遊ぶことしか考えていない。輸入も輸出もストップ。討伐隊もストップ。国内にある材料だって独り占め。まったく、先代王はなぜ選んだんだと、もっぱら口々に言っているぜ」
口々に不満が洩らすこの国の現状に嘆くように話す店主。そんな話を聞きながら、シノたちは店の外へ出ていく。すると、慌てふためくかのように逃げ出す群衆に遭遇。逃げる群れの中から一人選び、なにがあったのかを聞くと、「商店通りで殺しがあったって。いま、兵士たちがいったんだが…」その人はぜいぜいと息を切らせながら唾を飲み込み「兵士はみんなやられたって。あれは傀儡だ。この国にはいないと聞いていたのに……国王はいったいなにを考えているんだ……」その人はそのまま走り去ってしまった。シノは主人公を見て、「討伐士さん」と希望に満ちた表情を浮かべるが主人公は「武器がない」と青ざめて言った。
「あんたが討伐士さんなんかね」
先ほど店内にいた店主が立ち聞きしていたようで逃げる準備をするように、地下へ下りていく。主人公たちに黙ってついてこいと言わんばかりに指でちょいちょいと呼んだ。地下には、幾つかの武器が置かれていた。
「ほとんどは材料がないために修理中のものばかりだ。本当ならちゃんと修復してからお客さんに渡すものなんだが、非常時だ。これを――」
「これは――」
店主から渡されたものは意外なものだった。
シノと店主を先に行かせて、主人公は商店通りに向かって走った。何人かの群衆とすれ違いながらもその足取りは討伐士だったころと同じように地面に向かって二回連続で蹴ることで六メートルほどひとっとびした。
商店通りの道の真ん中で<物まね仮面>が正体を見せていた。ウシノノの表情は引きつるかのように笑みを浮かべていた。
『コイツを倒せば魔王様はお喜びになる』
ウシノノを殺そうとする。だが、すぐには殺せない。それはなぜなのか<物まね仮面>でさえ分からなかった。そうこうしていると魔王が来ていることに気づいた。
『やばい!』
<物まね仮面>は魔王がここに来ることが分かった。もうすぐそばまで来ている。もし、失態を知られたらなにされるか分かったものではない。ドクドクと鼓動が鳴り響く。心臓部もないはずなのに得体のしれない何かが襲ってくる。<物まね仮面>は胸に手を置きながらじっと考える。
「うおりゃっ!」
ハッと我に返った時、凄まじい力で吹き飛ばされる。<物まね仮面>は一瞬何が怒ったのかわからなかった。だけど、吹き飛ぶ際に見えた。今目の前にいるウシノノという少年が石ッころを握った手によって無様に攻撃されたことを知った。
『ぬああああ!!』
たかがレベル10未満の子供に簡単に攻撃の隙を与えただけでなく吹き飛ばされたと<物まね仮面>は感情が逆上がりし、支配するかのように怒りと憎しみをこめてウシノノにめがげて針を突き刺そうとする。
そこに魔王が針を真っ二つに折るように切った。突如と現れた魔王の存在が一層<物まね仮面>は強張った。魔王が来てしまった。この惨状を見て、どう思われるのかどう思わされてしまうのか、<物まね仮面>はもはや自分の意思通り…命令通りに動ける余裕はなくなっていた。
「大丈夫か。いま、楽にしてやる」
それは討伐士であるから言っているのかそれとも魔王として言っているのかどちら側で言っているのかわからない。だけど、ウシノノは討伐士として理解しているはず。<物まね仮面>は魔王の立場として見ているはず。
<物まね仮面>は仮面をかぶり、兄貴の姿に化け必死で取り繕う。
「待ってくれ、俺はお前の兄貴だ。そいつは魔王だぞ! 俺を殺そうとしてるんだぞ!」
その必死な抵抗は魔王の勘に障る。なぜなら兄貴に化け、正体がバレないように殺すことが当初の命令だった。それが呂律が回らないまま兄貴に化けなんとか任務をこなそうとしたが、ウシノノは一言「殺してくれ。もう、兄貴を苦しんでいるところを見たくない!」その瞬間、<物まね仮面>は殺されるのだと察した。魔王に褒められることもなければ情けをかけられることもない。<物まね仮面>は必死で取り繕うとした。だけど圧倒的なレベル差でそれは叶わないと知ると、この場から逃げ出そうとした。だが、魔王はそれを許すことはなかった。
一瞬だった。傀儡がボロボロと朽ち果て消えていく。その凄まじいパワーはとてもじゃないが、マネすることも超えることもできないとウシノノは悟った。掴んでいた石ッころがまるでネズミのように小さいものだと悟った。
「…あは、やっぱ討伐士はすげーんだな」
ウシノノは空を見上げながら「兄貴、俺…強くなるよ」と拳を突き出し兄貴に誓うのであった。
それから、ウシノノたちが率いる<夜明けの旅団>に混じり、魔王であることがバレないまま、彼らと一緒に旅立つ。だが、魔王であることを少しずつだが、討伐隊たちは近づいていた。
「<傀儡>の残骸ですね。しかも一撃。これは、魔王ではないとありえないことですね」
新A班のリーダーとして君臨していたミラは独自に調査していた。王が支配する町の中で傀儡が暴れたという報告を聞いたからだ。<物まね仮面>そういう名であったことをミラは上官から与えられた秘密道具によって判明していた。
「魔王は近くにいる。それも、凶悪な仲間たちを手に入れたようね。主人公…あなたはどこへ行ってしまったのだろうか」
空を見上げながら主人公のことを思うミラであった。
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