第5話 父と子
「…私の遠い祖先、それは当然裕太の祖先でもあるが、フィンランドでは今でも伝承として名を残す、実在した魔法使いだ。信じるも信じないもお前次第だがこれは紛れも無い事実だ。本来であれば私の知る数々の魔法は、お前の父である
ついに自分の話が始まったが、自分が何かしらの魔法が使えるという自覚は全くなかった。
「…魔法は実は大きく分けて三つの種類がある。一つ目は自分の中に宿るパワーを増大または顕在化するもの。二つ目は精霊たちに力を貸してもらう事で何かを成すもの。そして最後に何らかの存在を召喚するもの、この三つだ。お前は既に3歳にして精霊たちと交信し、遊び相手にしていたのだ。特に風の精霊と仲良しで。風を使って落ち葉にダンスをさせたり、時には自分の体を浮かせる事もあった…」
あまりに幼い時の事なのか、僕は記憶の中を探そうとしたが思い浮かぶものは無かった。
「…お前は覚えていないだろう。私はお前が魔法の才能を持っていることを喜んだ。しかし…私は喜び過ぎた。息子の
鏡の中のじいちゃんの顔は、後悔の色を滲ませた苦痛に歪んでいた。
「…それ以後裕太、お前は精霊と話すことを止めた。そして私と陸の間には埋める事の出来ない溝が生まれ、お前に魔法を教える事はもちろん、魔法の話をする事も出来なくなった。時間が経つにつれてお前の記憶の中から魔法の事が消え去っていくのを感じた。そして私から見るに、陸は私だけでなく、お前に対しても見えない壁を作ってしまった。私が恨まれるのは仕方がない、それだけの仕打ちを私は陸にしてしまった。だが裕太…陸がお前に対して距離を置く理由は分からない。怒りなのか、悲しみなのか、それともそう思いたくはないが妬みからなのか…」
僕は父が
「私はいよいよ我が魔法使いの系譜が断絶する事についての覚悟を固めた…いや、手品と称して裕太にこっそり魔法を見せた事もあるから偉そうな事は言えないな…未練があったのさ…そして80歳を越えてあちこち、特に心臓に不安を抱えて
じいちゃんの表情からは苦痛の表情が消え、目には何かしらの決心を示す強い光が宿っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます