第4話 じいちゃんの部屋
「あぁ…」
部屋に入ると自然と声が漏れた、じいちゃんの匂いを感じた瞬間、様々な記憶と感情が
「じいちゃん・・・」
ひとしきり泣くと僕の心は少し落ち着いた。気を許すとまた悲しさや寂しさといった感情に押しつぶされそうになる。そんな心をなんとか整えながら、僕はじいちゃんが残したという僕へのメッセージを探し始めた。
机の上、勝手に見ていいか少し迷ったが机の中、そして本棚に溢れる本の間。しかしどこを探してもメッセージらしいものは見当たらなかった。
ふと窓の外を見ると日がだいぶ傾いてきていることに気付いた。二時間ぐらいは探していただろうか。少し疲れを感じて僕は畳の上に仰向けになった。天井を眺めているとまたじいちゃんとの思い出が蘇った、しかし今度が何故か悲しさや寂しさではなく、懐かしさを帯びた幸せな感情が胸を満たした。そして僕はその幸せな気持ちのまま眠ってしまった。
夢の中で僕はじいちゃんとの思い出を追体験していた。じいちゃんがいる、例の手品の一つを僕に見せている。じいちゃんが鏡に話しかけている。すると不思議な事に鏡の中のじいちゃんがじいちゃんと違う動きを始める。そしてじいちゃんと鏡の中のじいちゃんが会話をしだすのだ…
そこで僕は飛び起きた。眠気は吹っ飛び、意識が研ぎ澄まされている事を感じた。僕は既に薄暗くなった部屋の中で身を起こし、立ち上がると鏡の前に移動した。鏡の中の僕がこっちを見ている。あの時じいちゃんが鏡に語りかけた言葉を思い出す。
「…
一瞬鏡全体が淡く青く光ったような気がした。次の瞬間、鏡の中にいる僕の後ろにじいちゃんが現れた。僕は自分の後ろを振り向いた、だが当然だがじいちゃんの姿は見えない。もう一度鏡に目を移すとそこにはあの、いつもの笑顔を湛えたじいちゃんがいた。
「じいちゃん」
じいちゃんは〝うんうん〟と頷いたかと思うと語り始めた。
「裕太、このメッセージを裕太が見ているとしたら、私の遺言に従ってこの部屋に来てくれたという事だな、ありがとう。そしてやはりお前には魔法を扱う才能があるようだな…」
「魔法?」僕は聞き返したが、まるで動画が再生されているかのようにじいちゃんは一方的に語り続けた。
「…このメッセージは魔法で鏡に覚えさせたものだ。ただ私が亡くなっているなら魔法の効力は消え、メッセージを伝えられるのはこの一回きりだ。裕太よくお聞き。」
僕は固唾を飲むとじいちゃんの言葉を待った。
「先ず裕太には礼を言わなければならん。私の人生の終末は、裕太のお陰で本当に豊かなものとなった、ありがとう。」
じいちゃんはそう言うと笑顔で一つ頷いた。しかし急にその笑顔が苦痛で歪んだ。
「ただ同時に裕太には謝らなければならない。もう薄々気付いているかもしれないが私は魔法使いだ。そしてその事が私と息子である
父の名前が出て僕の胸にさざ波が立った。友人の親子関係に比べると、父である陸と自分との関係はどういう訳かギクシャクしているように感じていた。それには何か理由となる出来事があったのだろうか?そしてその事には魔法が関係しているのだろうか?
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