第二章 FFweb小説 ルーキー杯
第5話
始業式から数日後…。
いつものように、視聴覚準備室に来ていた光世と襟鹿は、打ち合わせをしていた。
「で?書けたの?」
当然のような襟鹿の催促。
「いや~、はっは」
そこには、いまだ原稿が完成せずに苦笑いしている光世と、それを見てイライラしている襟鹿のいつもの構図だった。
「いつになったら書けるのよ‼あんたの締め切りがいつか分かってんの⁈」
「えっーとっ、三日後くらい…?」
「明日よ、明日‼もうデッドラインギリギリなのよ‼」
「うるせぇ!そんなに急に書けるなら今頃書籍化してるわ‼」
「なんであんたが逆ギレしてんのよ‼ふざけんじゃないわよ‼こっちの作業量のこともちょっとは考えなさいよ‼」
確かに襟鹿の言う通り、今日中に光世が原稿を上げられなければ、それは遅れとなって襟鹿の負担が増す。
今回のイラストレーターに割り当てられるイラストの枚数は四枚。
あらすじ、中盤、そして後半にイラストをいれることが定められている。
四枚のうちどこで使うのかは、イラストレーターに任せられるが、ルール通りならば中盤に二枚、もしくは後半に二枚ということになる。
襟鹿の作業ペースを知っている光世だから、少しの甘えが出てしまっていた。
「もう終わるから、あと少しだから静かにしてろよ‼」
そこから約一時間後…。
パソコンをたたく音が襟鹿との口論で激しくなりながらも、光世は約四か月ぶりに一作を書き終えることができた。
規定の十五万字をクリアした推敲もなにもされていない真っ白な作品。
それがいま光世のパソコンの画面に表示されている。
(なんか、この達成感久しぶりだな…)
その余韻を見ていた襟鹿は、光世の目の前からパソコンを取り上げる。
「読んでも、いい?」
「うん、すまん、またせた」
そのままえ襟鹿は、膝の上にパソコンを置いて読み始める。
光世は、待っている間の手持ちぶたさと書き終えた達成感を感じてか喉が渇いていた。
「襟鹿、なんか飲むか?」
襟鹿に聞いてみたが返事はない。
「ちょっと飲み物買ってくるわ」
席を立った光世はコーラかなぁ、と思いながら扉を開ける。
待たせた上の勝手に飲み物を書くことに後ろめたさを感じながらも光世は視聴覚準備室をでようとした。
その背中に襟鹿の声がかかる。
「コーラ」
振り向くとスクロールしながら文章を真剣に目で追う襟鹿の姿があった。
(きっと構図考えながら読んでんだろうなぁ。申し訳ない)
「分かった、金は後でかえし…」
「みーつーもーりー?」
「へいへい、りょーかい」
そう言って光世は、扉を閉めた。
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