第27話 閑話 ミコト2
ミコトじゃ。
ワシは今、ある少年を指導している最中なのじゃ。
ヌシ様じゃな、ああそういえばケイと名を変えたのであったな。
ワシの未来の婿になる予定なのじゃ。
確か以前の名前は。
----ん? き、くぃ、きよ?
なにやら言いにくい名前のはずじゃったが覚えておらん。
その少年の指導なのじゃが、最初などなかなか上手くいかんかった。
この世界に転生してからの環境が最悪だったから、仕方ないのかもしれんのじゃが。
思い出すだけで怒りがこみ上げてくる。
自分の仕事を全て押し付けておきながら、その失敗をヌシ様の所為にして
力を奪い取り処分するなど……
その馬鹿のおかげで常識をどこかに置き忘れた、会社にとっては理想といえる完璧な社畜に仕上がってしまっておった。
百数十年もの間放置?
休日、何にそれ?
食事・睡眠そんなの必要ないから働け。
無能は役に立てるだけありがたいと思え……など読み取れた記憶だけでも少年がおかしくなった理由だとわかる。
それ以前に、普通の天使なら強制的に休眠モードになってもおかしくは無い。
まぁ、ヌシ様は天使の姿をしてるだけなんじゃが。
正体は最強といわれておるワシでもわからん。
教育指導をはじめた当初。
話が通じないことが足を引っ張った。
常識が通用しないから、自分は普通だ、まともなのだと勘違いしておった。
前世の記憶も断片的に残っていたのも問題で、
いや、そのまた前世の記憶も交じり合っておった。
真っ白な部屋?
病室か?
こやつ前世で娘、いや孫?がおったのか。
病気なのか?
途切れ途切れで……わからん。
話しているうちこちらまで混乱してくる始末。
ゲシュタルト崩壊とか言うヤツじゃったか。
最初の三年ほどは、ワシの知る地球の常識を徹底的に教え込むことにした。
うむ、労働時間のことや休日のこと。
食事はしっかり、睡眠は何時間は、とかな。
勘違いした会社の方針など様々教えた。
なかなか治らないので苦労したがの。
記憶の混濁はおそらく完全には治せないじゃろう。
う~~む、何かの呪い?
わからん。
日常生活に多少支障はあるがマシにはなった。
それから一般常識であるジャパン文化。
これは念入りに教え込んだ、当然のことじゃ。
もはやこれなくして漫画アニメを語るなーーと言える世界でもっとも優れた文化。
確か十年、いや二十年くらいじゃたか?
五十年かもしれんが、それはまぁ良い。
あぁ当然ジャパン文化だけではなく、お米の名を冠した国や中の国のアニメや漫画も忘れてはいない。
そうして、とりあえず地上で生活できる位までの教育は終わった。
生きていくうち最低限の一般常識、
簡単に言えば、義務教育期間のことじゃ。
「メイドに邪道などなし、名言は使えるときに使え、漫画は聖書と思うべし、古新聞は掃除に使えーーーー」
「よし、次は人にぶたれた時の言葉を言ってみるんじゃ」
「はっ!!『 殴ったね親父にもぶたれたことないのにーー』と、
『修正してやるーーーー』であります」
「よろしい、次はーーーーじゃ」
「だけど不自由であることーーーーれは無いよ!」
「次!!」
「やっぱり 人間って………お……」
ふふふ、完璧じゃ。
感無量じゃ。
----と、『油断したオヌシにはこれじゃ!! この彼女にかける言葉を言ってみよ』
「----!!」
やはり気を抜いたな、まだまだ未熟。
しかしこれは基本、間違うこともなく瞬間的に口に出さないと駄目じゃ。
ちなみに正解は「笑えばいいと……」じゃ。
やはりまだ教育を続けるのじゃ。
「賓乳はステータスだ。……、お前はもう……、撃っていいのはーー」
「よいぞ~よいのじゃ、では最後に卒業問題、これは本気で最難関問題中のひとつ、はたしてオヌシに解けるかのう……」
…………
……
「俺が結婚してやんよ」
「!!!!なっ、まさか本当に正解するとは」
感動した。
あの非常識九十九パーセントオーバーだったコヤツが……
エーのビートのこれを……
合格!!
少し、ほんの少しやり過ぎた感はあるが、後悔はしておらん!!
完璧でなくても良い、あとはじっくり時間をかけて育てていけば良いのじゃ。
盆栽のようにゆっくりでの。
そろそろ地上に向かい、あのバイブルのように冒険などを楽しむもの良いじゃろう。
アイテムボックスの地球の食材も切れそうじゃし丁度良い頃合かのう。
しかしSHOPのポイント所得不可なのが痛すぎる。
この教育期間でかなり消費した。
残りはほんの僅か、お陰で限定のアレを購入するのを断念した。
今は直接仕入れにもいけんし。
なんとかポイント入手の手はないかのう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます