第22話 チュートリアル3
クマクマの強さを知ってから数日。
自分の弱さを改めて実感――したが、特に気にならない。
初めての野宿の時には僕もミコトちゃんもテンションが上がっていた。
想像でしか味わえなかった冒険での一夜。
これは誰でも気分が盛り上がるよね。
――まったく盛り上がらなかった。
虫は多いわ、獣の声は五月蝿い、焚き火は近いと熱いし遠いと寒い。
風呂も無い、周囲からは見られているような奇妙な感覚に獣の息つかい。
なので一時間でミコトちゃんが切れてしまった。
彼女はアイテムボックスから簡易結界と十人用のコテージを取り出し設置。
記憶にあるログハウスみたい、さっさとお風呂で汗を流し、すでに自室でお休み中。
実は僕はまったく気にならなかったのだけど。
さらに数日が経過、その間は特に何事もなく過ぎていったのです。
……スライムやゴブリンに追いかけられた事実なんてありませんよ、ええ本当に何も無かったのです。
一番近い村まで歩いてあと五日ほどの場所に差し掛かった時、何かに囲まれている気配がした。
ミコトちゃんからのアインタクト。
僕はまったく気づかなかったけど、当然わかっていたよって顔でうなずいた。
木の背後から草を掻き分け何かが姿を現した。
額から右目の下まで残る大きな傷の人間、マスクで口元を隠したモヒカン、ツンツン頭の髭もじゃの大男。
中でも斧を持った一番の大男の背後には数人の人の姿。
ぱっと数えただけで二十人くらい?
ファッションは……う~~んかなりいやボロボロの服装ですね、見た目は世紀末覇者かな、いや普通の顔か多少いかついだけだね。
偏見は駄目絶対!!
僕達を取り囲むようにゆっくりと移動している。
「ん~~と、木こりさんの集団ですね、丁度よかったのです僕達村に行きたいんです道はこっちで間違いないですよね」
「えっ……あっ、あぁ、その道を道なりに進んでいけば数日で着くぞ」
良かった道は間違ってなかったみたいだ。
大男さんの横を通り抜けようとしたが回り込まれてしまった。
「俺達は木こりなんかじゃねぇ、わかってんだろう」
「けけけっ、馬鹿の振りして逃げようなんて甘いんだよ」
ん?
どういうことなんだろう?
――、痛いミコトちゃんに殴られた。
暴力反対です!!
「はぁ~~やっぱりまだまだ常識知らずのままか、こいつらは盗賊じゃよ」
「キュ――!!!」
ひどいクマクマもそこまでいわなくても。
「お嬢ちゃんはよくわかってるじゃねえか、嬢ちゃんは俺達がたっぷりと可愛がってやるよ」
「ひや――はっ、ガキは外見通りどこぞのボンボンみてえだな、こいつは珍しい髪色なんで高く売れますぜ」
いや、ヒヤッハーって本当に言う人はじめて見た。
「お頭、女は俺らにもまわしてくださいよ」
「飽きて壊れたら上の連中の奴隷商に売ればいいですぜ」
ん?
僕を売るの? ふ~~ん、それはかまわないけど。
ミコトちゃんに危害を加える?
あれっ?
あれれっ……なんか胸が。
なんかムカムカしてきた、なんだろうこの感覚は?
とりあえず殴る――いやでも拳を握ると力が抜ける。
…………。
「キュッキュッ!!」
「つまらん、クマクマだけで済んでのぉ」
またクマクマが瞬殺してしまった。
さきほどの変な感覚は何だったのかな、今はもう何ともない……。
アイテムボックスから取り出したロープで全員を縛り上げ拷――尋問。僕じゃなくミコトちゃんがね。
彼らは木こりではなく盗賊で人攫い、色々な場所に住処を持つ非合法奴隷商の下請け。
僕らが行く予定だった村を襲い、アジトである拠点に帰還中のだった。
今日の夜の食料を集ている時、僕らを発見し、ついでにって考えていたそうだ。彼らの馬車にはまだ数人の盗賊と攫われた人達がいる。
ミコトちゃんの教えでは、弱者を狙う悪人に人権など無い。
見つけ次第尋問し、そのすべてを滅すべし。
情けをかけるな、見逃せばまた同じことを繰り返す。
他人に悲しみを生み出すことで自分の利益をだすゴミに生きる権利など無い。
では、ヤ〇マ―ーじゃなく救出作戦開始。
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