第15話 閑話 ミコト

 な……。


 なな……。


 なんでワ、ワシは……あ、あんなミスを。


 それにきゃつはいったい何者なんじゃぁぁぁぁ。


 しかも、このワシに名前付けじゃと。


 ありえんのじゃ。   


 この状況は、一体なんなのじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。




 すまん、ワシとしたことが取り乱した。


 ワシの名はミコト……。


 この次元のものではない。


 数多く存在する創造神すらしのぐ力、様々な次元を行き来する能力。


 上級神程度なら尻尾の一撃で滅せる力を持つ存在。


 姿を近距離で直視すると、意思の弱いものなら意識が吸い込まれるような黒く艶のある鱗。


 スラリとしたスマートな身体、最上位で唯一の存在。


 光と闇、さらに次空間魔法を有する最強の龍。


 それが始まりの龍。


 ビギニングドラゴンである。



 唯一というのは生を受け幾星霜、どれほどの年数かは忘れたのじゃが。


 これまでに数多く上位種という龍・竜に出会ってきたが。


 どれらも格下、相手にすらならないほど貧弱な存在。


 喧嘩を売ってきたやつや、自分のものになれ、ハーレムに入れとか言ってきたやつはすべて叩き潰してやった。


 もちろん物理的にな、まぁやつらも上位種とかいうだけありいずれかは復活するかもしれんがの。


 ここで言う上位種とは地上世界のものではなく、神や創造神に近い存在のことじゃ。


 強さに引かれする寄ってきたやつなどは無視、しつこいヤツはちょっとO・H・A・N・A・S・I したら近寄らなくなった。・


 少し前までの名は#### ## 命## #######と言う。


 まぁ、この次元の者達には聴くことも発音することも不可能なんじゃが。


 ――あり得ないことが起きた。


 ことの発端は。


 この次元の創造神により、地球をベースに創られた世界。


 アースの別荘地にたまたま寄ったときのこと。


 ……って、まんまそのままじゃが。


 創造神よ姿形どころか、名称まで真似るのはどうかと思うぞ。


 確かに地球というのは創造神や神達に大人気じゃから仕方はないが。


 日本とかジャパンとか言われてるその中でも小さな島国の文化が人気の秘密。


 まず食べ物が美味い。


 心眼でなんなしに見ていた時、ワシはすでに地球にむかっていた。


 瞬間的に身体が動いていた、見ただけでよだれがとまらないほど美味しそうな存在感。


 とても言い表せないくらい美味しかった、……一年位経過していた。


 一年なんてワシらからすれば一瞬のこと。



 そして漫画・小説・ラノベ・アニメ・メイド文化などなど。


 なので気が向けば度々足を運んでいた。


 あぁ、一つ言っておくが龍の姿のワシに足などないがのぉ。


『脚など飾りじゃよ、偉い人にはそれが』――――おっと、ついついあの名言を口にしてしまった。


 当然じゃが、浮かんでいるのに足なんか必要か?


 そう必要ない。


 地球の日本では人間の姿でないと駄目じゃから人間体で過ごした。


 それが何故だか気に入り。


 常に人間体なんじゃが、ふふふ、完全にジャパン〇タク文化に染まってしまった。





 まっ、まぁそんなアースにある別荘地でのこと。


 天気の良い日、気まぐれで優雅に空中散歩しておった時のことじゃ。


 心地よい陽の光を浴びながら、おだやかに吹く風に身を任せただただ漂っていたその時、きゃつがあらわれた。


 ワシの周囲に張り巡らしている空気の結界めがけ落ちてきた。


 どこからかと言えば、当然変な勘違いしてるやつらの住みかの天界からじゃな。


 見ると天使?


 天使にしては……小さなボロボロの翼であるが、漂う存在感はまったく別物。


 いや堕落した神か?  


 と言うか何か色々なものを無理やり混ぜ込み天使の形にした生き物。


 きゃつの身体に触れ、断片的に記憶を読み取り――はっとした。


 何か運命的な予感がした、つい先ほど別次元で読みまくっていた恋愛小説のような運命的な出会いと。



 屋敷で介抱し、話を聞いたんじゃが…………。


 とにかく、話が通じん、聴いているとこっちのほうがおかしいのかって気になる。


 常識? 何それ美味しいの? どんな味がするのって――。


 非常識九十九%の特濃。


 残りの一%の常識すら無くした少年。


 危うく脳の血管が切れるところじゃった。


 とまぁ、そこらへんの所は良い。


 最初に話したように問題は名前を付けられたこと、名付けされたことじゃ。


 名付けとは、格上のものが下の者に力を分け与える儀式とか呪い(まじない)のこと。


 その逆は絶対ない、ありえない。


 つまり、このビギニングドラゴンであるこのワシより、あの頭のおかしな少年天使もどきのほうが格上。


 頭が痛くなった。


 それより、きゃつ……いや、サイガ キヨムじゃったか。


 キヨムを鑑定してもほぼ文字化けでまったくわからん、ワシの鑑定は最上位のなんじゃが。


 上級神クラスまでなら、すべての能力を丸裸にできる自身はある。


 それが今や……ほとんどのスキルを封印され、能力値は最高値の数%にまで減少。


 鑑定スキルは残ったが少々使える程度にまで能力ダウン。


 最初に出会ったとき気づくべきじゃった、あの時運命の出会いで浮かれてさえいなければ。


 まぁ、過ぎたことは仕方ない。


 逆に考えれば。


 キヨムはワシを超える力を持つ男、そう異性じゃ。


 見た目は……今は幼いがそれは問題ない。


 いずれ成長するじゃろからな。


 顔立ちは悪くないどころかものすごいイケメン。


 いわゆる青田買いってやつ。


 あの非常識なのは矯正――いや、教育していけばよい。


 そう考えれば何やら楽しくなってきたのじゃ。



 ん?


 語尾がぶれてる?


 あぁ、いわゆるキャラ付けってやつじゃな。


 何やら地球の日本では、語尾に のじゃ とか のぉ などをつける黒髪少女がモテルと聞いた。


 秋葉で三十年くらい教科書(ラノベ・漫画)や参考書(同人誌)さらに映像学習(アニメ・特撮)などを読み漁って、またまた先日もどって来たばかり。


 当然教科書、参考書などの聖書は購入しアイテムボックスで収納しておる。


 ワシはとても勤勉じゃからのぉ。

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