第12話 才賀 虚無(サイガ キヨム)3
五十歳になったがまだまだ現役。
会社の為、社会の為頑張っていこうと考えていた。
そんな志を胸に抱きつつ日々を過ごしていた。
そんな夏のある日のこと。
仕事も終わり、急な上司の用事も済ませ。
ひさしぶりに施設に顔を出し軽い宴を楽しんだ。
とても楽しかった、気力が満ち溢れる気がした。
なので、断りを入れるシスターには内緒で財布の残金すべてそっと事務所に放り込んだ。
当然、まったく後悔はしていない。
子供達やシスターにはお腹いっぱい食べて欲しい。
彼らの笑顔を思い浮かべるだけで満足できる。
施設の帰り、身体の不自由な公園生活の人達に宴のお土産を配り。
大満足(自己満足)の中、自宅へと帰ることにする。
壁も薄く、自分以外誰も住んでいない築六十年は超えているボロアパート。
九州の右上のほうの県では破格の月五千円の家賃(水道光熱費+二千円) は大家さんに感謝。
少しお酒を飲んでいる為、通勤用のMTBは施設に預けていた。
お酒を飲んだら自転車も飲酒運転になる。
まぁ、アパートまで歩いても二時間もあれば到着する、夜も更け日にちが変わろうとしていた頃。
深夜でも騒がしい県の中心街の公園に差し掛かった時。
…………
………………!!
「!!っおっ、おい、こ、これやばいんじゃ」
「知らないぞ、俺じゃない、おっ、おまえがっ」
「馬鹿、喧嘩してる場合か、さっさとずらかるぞ」
「おっ、おいっ、あんた、大丈夫か、おい早く警察をそこの君逃げたやつらの――――」
――と、まぁそこで意識がなくなった。
あぁ、そうだね私は死んだようだ、刺されたから刺殺?
それとも角材で殴られたから撲殺?
まぁ、別にどちらでもいいが、彼らには悪いことしたな、こんなに簡単に死んでしまって。
ん?
あぁ、私はどうにも感情が良くわからないようなんだ。
――あっ、シスター達には愛情を持って育ててもらったからとても感謝してる。
それは間違いない。
わからないのは、自分自身に向けられる害意かな。
何故か相手に怒りを感じない、まったくと言っていいほど。
例えば、いきなり殴られたりしてもどうも思わない。
それ以外に対する害意には敏感みたいだけど。
あと、恋愛感情とか。
と、まぁこれが私の一生。
どこにでもあるような平凡な人生だよね。
残念なのはもっと、育ててくれた施設や拾ってくれた会社に恩返しがしたかったことと。
やりかけの企画の引継ぎをやってないことかな。
運よく生まれ変われたら少しは――――したいかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます