第4話 冤罪で追放&殺されかけた1

 あれから数日、なにごともなく日々が過ぎていた。




 服は……あいもかわらず血で染まりボロボロ、というかスラムの浮浪児のほうがよっぽどマシ、というくらいボロボロ。




 もはや布面積は最初の半分以下になっていた、もう全裸のほうがマシである。




 いや、私……。




 いや僕にそんな趣味はないけど。




 どうも外見に精神年齢が引っ張られてるようで、自分が子供のような気がしていた。




 僕って騙されてるのかな?




 いや、天使って嘘なんてつかないよね、うん、そうだよねなんたって天使だし。




 


 でも、なんか体の調子が悪いというか、ものすごくひどい倦怠感でまともに動かない。


 


 お腹も、空いたより痛い感がする。




 なんか、目もかすんでよく見えないし。




 今も立ち上がることさえ出来ずに壁に寄りかかり蹲っている。




 


 ……なんか、怒鳴り声が聞こえたような。














 メガネの天使長は激怒していた。


 


 怒りを天力に変換して杖に込め、壁やら天井に叩きつけていた。




「くそ、くそ、クソッたれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――、糞無能の、生まれが少し、ほんの少し良いだけで運よく俺より上の立場になった分際で―――――」








 長い廊下の壁を破壊し、ようやく少しだけ怒りが収まったメガネ天使長。




「ふ~~ふ~~、くそ、たかが印を押さなかっただけで不採用だと、印などどうでもいいだろうが、中身を見ろ中身を、これだからお役所仕事は嫌なんだ」




 


 お役所仕事どころか、自分で働いてすらいないメガネ天使長。




さらには少年にすべてを押し付け、自身は120年間遊びまくっていたどの口が言うのであろうか。




 こうして少年天使の約百二十年の成果である、企画案件はメガネ天使長が印を押さなかった為、没となった。




 その上司に提出された企画案件はすべて内容も確認されず、破棄されることになった。






 




 


「こ、こんの、くそ無能の能無しがぁぁぁぁーーーーーーーーーー、てめえのせいでこの俺様が、このエリート様の経歴に傷をつけやがって、オラッ、何寝てんだよ、てめえは天使資格剥奪だ、そうだ、お前が、お前が俺を貶めるため、勝手に資料室に住み着きでたらめな企画を出したことはもう伝えてあるんだよ、ほらっさっさとこっちへ来い手間かけんじゃねえよ」






 蹲っている少年の髪をつかみ、引きずるように廊下を進んでいく。




 廊下に彼の血の跡が残されていた。








 長い時間引きずられる少年には、百二十年の間、超超長ブラックで働き続けたその身体には、もはや抵抗する気力もほんのわずかな力も残されていなかった。






 意識を失いかける中。




自分の中に残された天使の力が無理やり吸い出されるような感じがした。






 あぁ、やっと休める。




 これでゆっくりと眠れる。




 あっ、でも何も食べずに寝ると目が覚めるんじゃないか。








 ……などとやはりどこかずれた少年であった。














 天使の力をすべて抜き取られた少年は……。








 ……現在落下中であった。




 


 通常、天使は資格剥奪(普通はまず無いが)されると精神(心が壊れそのまま霧散し、身体を残し消えていく)




 メガネは資格剥奪しただけでは飽き足らず。




 その抜け殻すら天上界から地上へ叩き落した、数万キロともいえる天上から落とされた肉の塊など……おそらくその衝撃で欠片すら。


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