第25話 緊急記者会見
「公開ね・・・大丈夫なのか?」
横川から市ノ瀬からの要望を聞いた藤原は不安になった。
もはや報道されてしまったアリア達
しかし、情報公開となれば日本全体が異世界に来た事も伝えねばならない。
自然と異世界から元の世界に戻るのでは、と言う希望を砕く事になる。その意味で不安だった。
「明日には記者から質問責めになる。大丈夫かどうか気にする余裕は無いですよ」
横川は止められない情報の広がりに社会の影響を考える余裕は無いと考えていた。
情報を流した例の週刊誌の記事には「今までの世界と異なる外国からの要人」であるとアリア達を説明している。その情報源は政府筋であるとして。
内閣情報調査室によればネット上でのアリア達の姿が広く拡散され、宇宙人だ中世ヨーロッパから来た昔の人達に異次元人と憶測される中で「最近の国外との通信や流通が通じない事と関係があるのでは?」とする意見も広まっていた。
もはや情報を抑える、規制をする事に意味が無くなっていた。
「分かった。今夜中に記者会見をしよう。準備してくれ」
藤原は決心すると横川は部下へ記者会見の準備を指示する。
「総理、事前のレクをするには時間が足りないで、マスコミへの説明や質疑応答は市ノ瀬にやって貰います」
横川の提案に藤原は安堵した顔で「それがいい」と答える。
藤原は今の状況を説明できるほどに理解していない。だから市ノ瀬が説明役をする事に正直に安心したのだ。
午後一〇時
総理官邸にマスコミ各社の記者を集めて緊急の記者会見が行われた。
横川が会見の始まりを告げ、藤原が登壇する。
「国民の皆様、今回は重要な発表があります」
藤原がこう前置きをする。何を言うかは記者の誰もが分かっている。
あの自衛隊中央病院に来ていた古めかしい格好をした者達についてだろうと。
「報道されている政府が隠す団体についてです。あの団体はアートラス王国なる国から来た人たちです」
聞いた事が無い国名に記者たちに少しざわつく。
「アートラス王国は私達が知っている世界にありません。現在、日本があるこの世界にある国です」
藤原の言い方に記者の誰もが首をかしげる。
「日本が現在置かれている状況は、日本だけが違う世界に来てしまった状況です。アメリカや中国にヨーロッパやアフリカはありません。未知の世界です。そんな世界で最初に我が国と接触して来ましたのが、アートラス王国から来ましたあの団体です」
初めて公にされた日本の状況
カメラのフラッシュの眩しさがマスコミの反応を示していた。
「詳しい事については、この事態に対応するために発足した特殊事態対策本部の事務局長である市ノ瀬から説明があります」
横川がアナウンスすると、藤原は下がり市ノ瀬が登壇する。
「特殊事態対策本部の事務局長を務めています市ノ瀬です。まずはこの特殊事態対策本部についてと、総理から説明がありました未知の世界について説明します。その後で質疑応答を行います」
市ノ瀬は日本の隣国が中世ヨーロッパのような様子である事、この前例なき異常事態が起きた事で特殊事態対策本部を発足させた事を説明した。
これは情報に触れて記者たちが疼いているのが分かる。問い質したいのだ。
「続きまして、アートラス王国からの団体について説明します」
市ノ瀬は分かっている上でアリア達について説明する。
海自の哨戒機がアーガス号を見つけたところから始まり、アリアやエーギル・セザールから聞いたアートラス王国が置かれた状況を説明する。
もちろん、モンスターによって国土を失われつつある事を
市ノ瀬は間を置く。
ここから言わねばならない、アリア達の目的を
それを公開すべきだとまず言ったのは辻川だ。それを肯定したのは市ノ瀬
(賛同者なのだからな)
市ノ瀬は覚悟を決める。
「アートラス王国からの団体は、アートラス国王の王女でありますアリア・バルジーニ殿下の団体です。アリア殿下の目的は我が国にモンスター退治の要請をしました。この要請について政府はまだ検討をはじめたばかりであり、何も決定しておりません。説明は以上です」
またしてもカメラのフラッシュが激しく光り反応をする。
市ノ瀬は自分の顔は今どんな表情なのだろうかと気になる。
今までこんな大人数のマスコミの前に立った事が無い。
フラッシュの嵐が静まってから市ノ瀬は「質疑応答を始めます」と告げる。
すると一際勢いよく手を上げる記者が居た。
「週刊新風です。市ノ瀬事務局長にお尋ねします」
四角い顔で長髪、口ひげを生やした中年の男が名乗ったのはアリア達の姿を撮影し、記事にした週刊誌だった。
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