第10話 長崎沖の駆除作戦

 コールサイン「パンサー03」と「パンサー04」のF-2は二機が並んで長崎県上空に差し掛かる。

 「パンサー03、目標は福江島上空を南下中」

 西部航空方面隊の指揮所から新たな鳥の位置情報が届き、パンサー03とパンサー04は進路を南へ向ける。

 一方で、F-15のプラム01とプラム02は鳥を長崎市と五島列島の間に引き連れていた。

 「プラム01へ、駆除作戦開始、武器使用を許可する」

 丸川はレーダー情報の位置から駆除開始を命じる。

 陸地から離れた海上、これなら流れ弾で民間に被害は出ない。

 「了解、これより駆除作戦を開始する」

 プラム01は返事をするとプラム02に反転を命じ、プラム02は鳥の後ろに回り込む。

 鳥をF-15で前後で挟む形になる。

 プラム01は自分で鳥の注意を引き付け、プラム02に攻撃させようとしていた。

 「プラム02、機関砲を撃て」

 プラム01の命令を受けて、プラム01は二〇ミリバルカン砲を放つ。

 プラム02が射撃をすると、プラム01はピッチングで機首を急激に下げて降下し、射撃を回避する。

 F-15は右の主翼の付け根に一門の二〇ミリバルカン砲を備えている。曳光弾を混ぜた射撃は鳥の背中や足に命中した。

 鳥は痛さに悲鳴を上げるような声を上げた。

 「命中を確認、ダメージを与えたものの目標は飛行中」

 プラム01は再度上昇しながら鳥の様子を報告する。

 「今度はこっちが撃つ」

 プラム02は被弾して飛ぶ速さが落ちた鳥を追い越していた。だからプラム01が攻撃する。

 「プラム01、射撃する」

 機関砲を発射しようとした時だった。

 「新たな目標が急速接近中、注意せよ」

 西部航空方面隊指揮所からの伝達だ。

 注意せよと言われたが、目の前の敵を撃ち脅威を減らすべきだと考え撃つ

 プラム01の射撃を右の翼に受けた鳥であったが、すぐに降下して射線から逃れようとする。

 (すまんが、ここで落ちて貰う)

 追いかけるプラム01はそう思う。

 人を傷つけたとはいえ、この世界の原住生命体だ。

 いきなりやって来た自分達が殺めてしまう事に少しの呵責がある。

 「プラム01、新たな目標が出現!」

 プラム02が警告する。

 すると、北の方から同じ鳥が飛んでくるのが見えた。

 「新たな目標出現、駆除を行う」

 プラム02は福江島の方向から飛来した新たな鳥へ向かう。

 「プラム02、射撃する」

 鳥と向き合う位置で射撃するプラム02

 だが、その鳥はプラム02の射撃をくちばしに受けたが、構わずプラム02を追い越して飛んで行く。

 「プラム01、そっちへ向かったぞ!回避!」

 新たな鳥の動きは明白だった。

 同族の仲間を助けようとしているのだ。真っ直ぐにプラム01へ向かっている。

 「くそ、回避する」

 あともう一撃で落とせそうな時に邪魔が入りプラム01は悪態をつきながら、機体を左へ横滑りさせて離脱する。

 新たに現れた鳥は傷ついた鳥に近づき、低い鳴き声で呼びかけているようだった。

 「目標は合流、二匹は並んで北西へ飛行中」

 鳥から離れたプラム01は報告する。

 連れ添う様に飛ぶ二匹、撃つの事に躊躇いが出る。

 「プラム01とプラム02、駆除作戦を続行せよ」

 丸川は命じる。

 プラム01は目の前に見える二匹の様子から丸川の命令に従うのに抵抗があった。

 (あれは民間人を襲ったんだ。ここで倒さねば・・・)

 出撃前に鳥によって起こされた人的被害を聞いている。それを思い出し鳥は討つべき敵だと思い起こさせる。

 「プラム02は新手の鳥を撃て、俺はあの手負いを撃つ」

 プラム01は覚悟を決めて命じた。

 並んで飛ぶ鳥の後ろへ二機のF-15は近づく。

 すると、新手の鳥が威嚇するように大きく泣きながらこっちへ向く。

 「プラム02、射撃する」

 構わないようにプラム02はバルカン砲を鳥へ撃った。その射撃は鳥の胴体を貫いた。

 その鳥は短く鳴くと、そのまま糸が切れたように海へ落ちて行った。

 手負いの鳥はその様子に驚き、逃げようとする。

 「すまない」

 プラム01はそう呟くとバルカン砲を発射した。

 その射撃は鳥の背中から後頭部に被弾し、後頭部に受けた銃撃の貫通で即死した。

 翼を広げたまま鳥は海へ真っ逆さまに落ちた。

 大きな水しぶきを上げた海をプラム01とプラム02は旋回しながらしばし見つめていた。

 それは生死の確認でもあり、弔いの祈りもしていた。

 「こちらパンサー03、後を引き継ぐ」

 到着したF-2の二機は鳥が活動再開をしないか上空警戒する任務をプラム01とプラム02から引き継いだ。

 「後は任せた。帰投する」

 新田原基地へ帰るプラム01の声はやや重かった。

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