第37話 ギルバートと訓練
決意を新たに俺はギルバートさんを捕まえて聞いてみる。
「ギルバートさん、ちょっといいですか」
「はっ、なんでしょうか?」
「サンドニ男爵って知ってる?」
「それはもちろん知っております。レクスオール家の寄親たるメルベール男爵家と敵対関係にある男爵家ですからな」
「やっぱり敵対してるんだ」
「はい、ここ数年は特に顕著で小競り合いが何度か起こっております」
「サンドニ男爵って強いの?」
「そうですね。強いか強くないかでいうと強いですね。男爵家なので前のリクエ子爵軍に数は劣りますが、質は上かと。サンドニ男爵家自体が武を重んじる家柄。サンドニ男爵も武勇を誇っていますが、その軍の練度も高いものがあります」
「そうなんだ。もしも、もしもだよ、レクスオールがサンドニと相まみえたら勝てるだろうか」
「ラティス様、それは愚問というものです。レクスオールに敵などおりません。サンドニ程度相手になろうはずがありません」
「そうか。それは安心だ」
ギルバートさんに意見を求めたのが間違いだった。この脳筋の答えは常にひとつ。レクスオールに敵無し。
それは置いておいてやはりサンドニ男爵は強敵らしい。
レクスオール戦記によると次の相手はサンドニ男爵だ。
後数ヶ月後にメルベール男爵に攻め入るはずだ。
それに少しでも備えるしかない。
「ギルバートさん、お願いがあります」
「はい、なんなりと」
「二ヶ月でできる限り、兵と俺を鍛えてほしい」
「ほう、二ヶ月ですか」
「そう、新しく組み込まれた兵も含めて徹底的に鍛えてほしい」
「……それはサンドニが関係しているので?」
「そうだ。期限は二ヶ月なんだ」
「わかりました。できる限りのことはやりましょう。それでは早速ラティス様の訓練を開始しましょう」
「え〜っと」
「さあ武器をお持ちください。このギルバートがお相手いたします」
ギルバートさんが直接訓練してくれるのか。ギルバートさんは間違いなく強いだろうからきっと強くなれる。
「ギ、ギルバーさん」
「ラティス様、なにか?」
「ちょ、ちょっと手加減を!」
自分の希望でギルバートさんと訓練を始めたが、すぐに後悔することとなってしまった。
俺も剣術の訓練は定期的にやっていたし、それなりになんとかなるかと思っていたが完全に間違いだった。
今までやってた練習を一だとすると冗談抜きで百くらいの強度だ。
全ての攻撃は弾かれ、そして打ち返される。
ギルバートさんは木剣なので斬れはしないが、死ぬほど痛い。
教えてくれているというよりも袋叩きにあっているかのよう。
大人と子ども、いやそれ以上に技量の差がありまともな立ち合いにならない。
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