第34話 ベリンガムの首
やはり明け方で道中誰にも会う事は無かったので、思ったよりもすぐに屋敷まで辿り着く事ができた。
ここを押さえれば、今回の戦いは終わる。本当に長い一日だった。
もう勝利は目前だが、ここで気を抜いて取り逃したり、反撃にあっては元も子もない。
こういう時こそ、焦らずに慎重にいくべきだろう。
どうすればいいんだろう。屋敷を取り囲んだ上で全員で突入するのが確実か?
「ラティス様、ここは私にお任せください。ゲンツと面識がありますので私が確実に! 」
「ああ、それは確かに。それじゃあギルバートさんに頼もうかな」
「はっ、このギルバート腹わたが煮えくり返っております。あれほど友好的な顔と言葉を浮かべておきながらレクスオールに牙を剥くとは。絶対に許せん! おいユンカー、ハンニバル参るぞ!」
「行きましょう」
「今回も大将首は俺がもらう」
そういうと今度も三人がいきなり屋敷の扉を蹴破ったと思ったらそのまま屋敷の中へと駆け込んで行った。
「あ……」
声をかける間も止める間も無く、あっという間に行ってしまった。
屋敷にどの程度の敵兵がいるかもわからないのに突っ込んで行ってしまった。
「グアッ、何奴!」
「我こそはレクスオール一の家臣ギルバート・メイゲン。ゲンツ・ベリンガムその首貰い受ける」
「なっ! レクスオールだと!? どういうことだ!」
「問答無用!」
「カッ……」
争っているような音がしたと思ったが、それからすぐにギルバートさん達三人が戻ってきた。
「ラティス様、これを!」
「うっ……それは」
「はい、ゲンツ・ベリンガムの首です」
ギルバートの手には禿げた頭の男性の首がしっかりと握られていた。
生首を見たのは初めてなので、強烈に気持ち悪いが、ここで吐くわけにはいかない。
「見事だ」
「はっ、有難きお言葉。全てはラティス様の神謀によるもの。さすがはグリフォンの化身ラティス様。やはりベリンガム如き相手になりませんでしたな」
それにしてもメルダスにしてもギルバートさんにしても三人で敵を倒してしまった。
神謀と言ったって策も何もあったもんじゃない。
正面から突破しての特攻。
とんでもない脳筋。
だけど結果ゲンツの首をあげてしまっているのを考えると、この人たち物凄く有能なのではないだろうか。
俺の策があったにしても七十程度のレクスオール軍が五百近いベリンガムを殲滅し大将首まで無傷であげた。
これはどう考えても普通じゃない。
それこそ史実に残るようなありえない事が起きた。
やっぱり、この人達脳筋だけど、凄く優秀なのだと思う。
とにかくこの危機的状況を回避できてよかった。
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