第33話 強引な突破

鍛え方が違うのだろう。ぐったりしているのは俺だけのようだ。


「わかった。少し休んだら発とう。今からだと夜か朝方になりそうだけど、どこかで野営する?」

「いえ、夜駆けの方が敵の虚をつけるかと」

「そう、そうだな。じゃあそれでいこう」


結局、ギルバートさんの案に乗りベリンガムまで、ノンストップで行軍する事となった。

少し落ち着いてから発ったものの、長時間の馬上で俺の身体は完全に悲鳴をあげているが、周りのみんなは全然平気みたいだ。

俺が貧弱すぎるのか、それともレクスオールの兵が強靭すぎるのか。

おそらくはその両方な気がする。

途中、限界を迎えた俺の為に小休憩を何度か挟む事になったが、脚がガクガクで股も擦り切れ血が滲み、まともに歩けたものではない。

これでは正直戦いにならないのではないかと思い、ギルバートさんにこっそり相談してみたが、


「ハッハッハッ、それは慣れというものです。誰もが通る道なのです。全てこのギルバートにお任せください。心配ご無用!」


と一蹴されてしまった。

相談する相手を間違えてしまったのかもしれないが、他に相談出来る相手もいないのでどうしようもない。

今の状況で敵に相対したら確実に死ぬ。

馬から落ちたら完全にターゲットにされてしまう。

戦場をふらふらしていたら上からひとつきにされて終わりそうだ。なにが何でもシュテルンにしがみついてやる。

俺のやる気が変な方に注がれている間にも行軍は進み、夜が白んできたタイミングでベリンガムの街が見えてきた。

この時間なので、入り口は閉じられている。おそらく一人か二人は詰所にでも控えているかもしれないが、十中八九眠っているだろう。

時間をかけている場合ではないが、どうしようかと思案しているとメルダスが声をかけてきた。


「ラティス様、ここは俺にまかせてもらえませんか?」

「それはいいけど」

「それでは、ここでお待ちを。おい、お前とお前もいくぞ」

「はい」


そういうと三騎で門のところまで駆けて行きいきなり門を打ち破り、そのまま突っ込んで行った。


「な……」


作戦も何もなかった。


「ぐあっ」


そして敵兵らしき声が聞こえてきたと思ったら、しばらくしてメルダス達が戻ってきた。


「どうですか? これで我が軍を遮るものは何もありません。さあ参りましょう」

「そう……だね」


作戦も何もなかったが、結果、被害なく突破できてしまったのでこれでよかったのだと思う。

そう思う以外にないので、そのままギルバートの先導で、ゲンツ・ベリンガムの屋敷へと向かった

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