第32話 次なる戦い
「ラティス様、今回私達はなにもする事がありませんでした。まさかこのような策でベリンガムを殲滅するとは」
「まさか、罠と煙だけでベリンガムを倒せるとは夢にも思いませんでした。さすがはラティス様」
「ああ、少し疲れたから向こうで休ませてもらってもいいか」
「もちろんです。そういえば顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
「少し休めば大丈夫」
本当は大丈夫では無いが、ここにはレクスオールの兵達がいるので、どうにか我慢して後方の開けた所へと歩き腰を下ろす。
自分のやった事に、恐怖を感じるが同時に安堵も感じて全身の力が抜ける。
殺さなければ殺されていたのは俺だ。
まだこの時代にきて数日しか経っていないけど前回と今回の戦いでさすがに俺でもわかる。
これは本に書かれている文字だけの出来事じゃ無い。
命をかけた戦い。
手を緩めたらその瞬間弱い俺は消されてしまう。
甘い事は言ってられない。
俺には力がない。平和な時代に育った俺には力がない。
だけどラティスとして生きなきゃいけない。
今回の戦いはレクスオール戦記の記述だけで勝てたわけじゃない。
俺の時代の知識と運があって勝てた。
力のない俺にあるのはレクスオール戦記の中の知識。起こった出来事を知っているという事。
それは今までの俺にとっては過去の出来事だったが、今の俺にとっては未来の出来事。
つまり俺はこれからの未来を知っているに等しい。
ラティスはこの時代を生き抜いた。
つまりはラティスの史実をなぞれば俺は生き残れる可能性が高い。
俺はラティスじゃない。
ラティスがやった事を俺ができるかどうかはわからないけど、それでもやるしかない。
ベリンガムの兵を殲滅した事で覚悟が決まった。
この時代を生き抜く。
覚悟は決まったけど、身体は正直だ。
全力で不調を訴えてきている。すぐには立ち上がれそうにない。
「ラティス様、大丈夫ですか?」
「もう少し休ませて」
「それはもちろんかまいませんが、ベリンガムの兵を確認したところゲンツ・ベリンガムの姿がありません。おそらくですが自領に数十の兵と留まっているものと思われます」
「え〜っとゲンツって……」
「ベリンガムの領主です」
「領主って事は敵の大将はまだ倒せていないって事か」
「はい。ベリンガム領に残っているのはおそらく五十程度。奴らは出兵した兵が全滅したのを知りません。間違いなく油断しているでしょう。ラティス様このまま攻め入りましょう」
「このままって今からって事?」
「はい、ベリンガムの大部分を殲滅した今、ゲンツの首さえあげてしまえばベリンガムはレクスオールの物となりましょう。ゲンツの屋敷には何度か先代と様とうかがった事があります。おそらく多くても警護は十もいないはずです。今しかありません」
ようやく戦いが終わったのにまた今から戦いに行くのか。
身体がもたないぞ。
「みんなはいけるのか?」
「もちろんです! なあ皆のもの!」
「おおおおおお!」
「ベリンガムをレクスオールのものに!
「レクスオールに勝利を!
「この機を逃す手はありません」
「うおおおおおおおお〜!」
みんなやる気だ。
強敵を討ち果たしたからか異様にテンションが高い。
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