第13話 覚悟?
「ギルバートさん、本物のラティスは? いったいどうなったんですか? 天幕の中に遺体があったでしょ」
「心配ご無用です。ラティス様が先の戦いに立つ前にビルドワースがよしなに」
よしなにってなんだ?
俺が戦いに立つ前……
確かにギルバートさんがなにかをビルドワースさんに頼んでいた気はする。
まさかあの時……
「ラティス様、我らがレクスオールも今回の戦で三十名を失いました。この乱世、敵は四方から襲ってまいります。今回の戦功周辺領地にもラティス様の名声は轟きましょう。もうレクスオールはラティス様抜きには立ち行かぬのです。ラティス様お覚悟を!」
「我ら何があっても天の御子たるラティス様について参ります。このメルダスの命はラティス様と共に」
「このユンカーの命はラティス様に!」
「おおっ、このハンニバルが敵将の首を上げれたのも全てはラティス様の神業のおかげ。命尽きるまで従います」
「我らが主はここにおられるラティス様をおいて他にありません」
「このビルドワースの主人はラティス様です」
とんでもない熱と圧が五人からは迫ってくる。
「い、いやだけど。俺がラティスって、すぐバレちゃうでしょ」
「ラティス様、残念ながら先日事故にてご両親はお亡くなりになられ、ラティス様にご兄弟はおられません。今まで表舞台に立って来られなかったのも幸いしました。近しいといえば身の回りを世話するメイドぐらいでしょうが、そのメイドも結婚が決まっております。早々に暇を出しましょう。ラティス様が士爵位を継がれれば、文句を言うものなどおりません。領地に帰るまで少し時間がありますので、その間に髪も多少伸びましょう。もうラティス様をラティス様だと思わないものはおりませんな」
無茶苦茶だ。ラティスってある意味孤独だったのか?
家のものを刷新するってヤバい。
それにそれだけで、本当にいけるのか?
髪が少し伸びただけでラティスと区別がつかなくなるなんてそんなことあるのか?
薄く血が混じっているとはいえ、そんなに俺と外見が似ていることなんてあるのか?
あまりの無茶振りに頭がショートしてしまいそうだ。
俺の頭が混乱してどうしていいかわからずにいると天蓋の外から声が聞こえてきた。
「ラティス様、グラディスが御目通りを願っておりますがいかがいたしましょうか」
グラディス? ああ、さっきやり合ったあの騎士か。
「え〜っと」
「入って構わんぞ」
え!? ギルバートさんなんで勝手に返事しちゃうの。
「はっ、失礼します」
ギルバートさんの勝手な返事を受けひとりの兵士と共にグラディスが入ってきた。
「ああ、さっきは」
「はっ、ラティス・レクスオール様。あなた様に拾われたこの命、あなた様に捧げます。いかようにもお使いください」
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