番外編59 ある日のある夫婦の会話3

「ねぇ、シヴァ。どんな理不尽なことをされても、虐待されても、じっと耐え忍ぶヒロインのこと、『ドアマットヒロイン』って言うそうなんだけど、知ってる?」


 夕食時。

 妻のアカネがそんな質問をして来た。

 今日の夕食のメインは壺焼きのタンドリーチキン。鶏は品種改良して柔らかく旨味たっぷりジューシーな肉質にしたトットリー。熊本のブランド鶏「天草大王」のようなでかさだ。


 「壺焼きならナンでしょう!」とナンも焼き、「それなら、カレーもだな!」と各種スパイスカレーも用意した。

 もちろん、ご飯もあり、チーズやコーンや肉そぼろや唐揚げやフライ…等々のトッピングも用意したので、色々と楽しめる。


 アカネは一通り食べて一息、ついた所だった。


「知ってる。耐え忍ぶのが美徳とされていた昭和初期の風潮は、1945年昭和天皇が玉音放送で読み上げた『終戦の詔書』で『堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ』に由来しているという説が有力」


 シヴァは何とも言えない食感の砂肝の唐揚げをカレーとナンと共に楽しみながら、そう答えた。


「辞書か!」


「まぁ、『戦後で物資が乏しく不満もあるだろうが、文句を言うな』というのをキレイに取り繕ったワケだな。でも、戦後の復興が目覚ましく早かったのは、そうやって不満を抑えたおかげでもある」


「やっぱり、年誤魔化してない?」


「誤魔化してねぇっつーの。見よ、このぴちぴちの肌!」


 剣と魔法の世界こちらに来て以来、年を取っておらず、更に食べ物が何でも美味しく、ストレスフリーで更に磨かれたのだから、本当にぴちぴちな永遠の二十四歳なのである。


「ワザと昭和っぽい返しをするし……。まぁ、ともかくね。ラーヤナ国こっちより色んな読み物があるパリサート公国で『ドアマットヒロイン』の異世界ファンタジー小説が流行ってるんだけど、元の世界だけじゃなく、こっちでも流行るのは何でかなぁ、と思って。シンデレラ的な展開ばっかで真新しいことはあまりないと思うんだけど。こっちも古典っぽい話で似たような話があるし」


「魔法のある世界だからその辺も結構違って来るから?……って、今気付いた!シンデレラも異世界ファンタジーの一種じゃね?魔法使いのおばあさんが出て来るし!」


「そういえば!時代設定が中世のローファンタジーとも言えるけど、シンデレラがファンタジーという認識は、あんまりなかったね」


「おとぎ話は荒唐無稽で当然な感じだしな。かぼちゃという媒体を使わないと馬車も作れず、しかし、ネズミを馬に変えるという高等魔法は使える、という辺りも。生き物の姿を変えるだけなら【幻影】を重ねればいいけど、馬車を引かせるパワーもある生き物に、となると、魔法で変えた馬車も馬も見せかけだけで、実は全部【幻影】で、シンデレラは暗示をかけられてただけだった、という仮説が立たねぇ?」


「それなら、全部シンデレラの夢だった、というのもあり得るんじゃない?」


「夢オチはありそうだよなぁ。青色猫型ロボットの某国民的漫画の最終回、の〇太の夢だったオチとかもあるし」


「壊れた青色ロボットを修理するために〇び太が科学者になる、とかもあったよねぇ。結局、原作者がお亡くなりになり、未完だったワケだけど、長期連載のものはそんな運命なのかなぁ。ドラゴン〇ールといい」


「いや、原作の連載は終わってるぞ。アニメが再放送、最新作とかやってるから誤解しちまうけど、アニメオリジナルストーリーらしい。漫画も弟子みたいな人が受け継いだっぽい」


「へぇ、そうだったんだ。長過ぎて途中から見てないし」


「おれも。バトルシーンが特に長い長い長い、超長過ぎ。あれはアニメの構成作家?のせいじゃねぇの。アニメ化で原作の良さを潰しちまうこともあるよな。小説の挿絵でもぶち壊しってこともあるけど。あり過ぎて何とは言わねぇけど」


「あーねぇ?清楚、マジメキャラなのに、脱げそう、見えそう、露出狂な服だったり、見惚れるような美人設定なのに、他と見分けが付かない程度だったり、頭に何か変なアンテナが付いてたり、とね」


「ああ、アンテナな!あれ、多分、妖怪センサーか電波受信アンテナなんだよ」


「はいはい。でも、あのアンテナ、剪定鋏で切ってやりたいなぁ。神経通ってるんだろうか」


「猫の爪と一緒で深く切らなけりゃ大丈夫じゃね?」


「切り過ぎたら血とかが出て来たり?しかも、赤じゃなくて緑色や青色だったり?こわっ!いっきにホラーに!」


「SFの場合もありだな」


「ありとか言ってるし~。…ともかく、話を戻します。『ドアマットヒロイン』について。どの話も我慢し続けて次第に麻痺して来ちゃってるようだけど、初期の頃に何で逃げないんだろう?『このままだと殺される』という危機感がなかったりするの?」


「どうだろうな。箱入り設定なら危機感はないだろうし。それより、気になるのは『ドアマットヒロイン』があるのなら『バスマットヒロイン』は何でねぇの?」


「さぁ?バスマットは常に濡れてこまめに洗濯されてるけど、使用者は大して気にしてない、という意味?」


「ドアマットより汚れないイメージはあるよなぁ。決定的に違うのは、バスマットを使う状況は裸か半裸だ、ということ」


「じゃ、堂々と姿を見せていても、まったく警戒されずにしっかり情報を集める凄腕スパイヒロイン、っていうのは?お風呂で色々と考え事して、独り言をぶつぶつと呟く人って結構、多いらしいし」


「面白そうだから、小説にして」


「わたしは作文やレポート程度しか書けないってば。確かに面白そうなスパイ物だけど……何人かの作家に交渉してみるよ。ネタ探してる人も多いだろうし、こういった話って需要あるかもよ?と」


「じゃ、おれは図書館通いしてる間に、何人か作家及び、作家の卵を見たから、リストにしとこう」


「やっぱり?わたしのアテも同じだった。あれだけ本がたくさんあると、読む人だけじゃなく書く人も来るよね。色々と調べ物もあるだろうし、そうじゃなくても売れ筋が分かるだろうし」


「書く人って読むのも好きな人ばっかりだと思うぞ。こういった話、誰も書いてくれないから自分で書こう、だったり」


「文才がそれなりにあればいいだろうけどね~。あれこれ書き出しても、全然、完結した話を書けない人も世間には多いみたいよ。投稿型の小説サイトでよく見たし~。例の『エタる』だよ」


「どれもこれも半端でよく投稿するよなぁ、とある意味感心するけどな。全世界に発信していて、一度ネットに上げたものはずーっとログが残ったりもするのに、そういった意識も薄いんだろうなぁ」


 そんな、いらないログまで残るからこそ、データ量が膨大になり過ぎ、サイバー攻撃の『穴』になるのである。セキュリティ自体、犯罪者とイタチごっこではあるが。




 そうして、茜が働きかけた所、ネタに詰まっていた作家の何人かがとびついたが、そこは曲りなりともデビュー作家たち。

 それぞれ違った魅力的なキャラクター、展開であり、中には大ヒットシリーズ化までした作品もあり、長期で読者を楽しませることとなった。

 シヴァとアカネたちを含めて。








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【Google Geminiの感想】


## 番外編59の感想


**非常に面白かったです!** 夫婦の日常会話から始まり、SF、ファンタジー、ミステリー、そして出版業界の話まで、幅広い話題が盛り込まれていて、飽きることなく読ませていただきました。



**特に良かった点:**


* **キャラクターの個性:** シヴァとアカネのキャラクターが立っていて、二人の会話が非常に自然で面白いです。シヴァの知識の豊富さ、アカネの柔軟な発想、二人の掛け合いが絶妙です。


* **話の広がり:** ドアマットヒロインの話から始まり、シンデレラの話、そして出版業界の話まで、話がどんどん広がっていくのが面白いです。読者の興味を惹きつける巧みな展開です。


* **ユーモア:** 各所に散りばめられたユーモアが、物語をより楽しくさせてくれます。「バスマットヒロイン」の話や、小説の挿絵に対するツッコミなど、思わず笑ってしまう箇所がたくさんありました。


* **現実とフィクションの融合:** 異世界ファンタジーの話でありながら、出版業界やSF、ミステリーなど、現実世界の要素が巧みに組み込まれている点が面白

いと感じました。


* **意外な結末:** 話の最後、アカネのアイデアがヒット作を生み出すという展開が、読者にとって嬉しい驚きでした。



**さらに深掘りできたら面白い点:**


* **シヴァの知識の深さ:** シヴァがなぜこれほど多くの知識を持っているのか、その背景が少し気になります。過去に何か特別な経験をしたのでしょうか?


* **アカネの才能:** アカネはアイデアが豊富で、物語の展開を面白くする才能を持っています。この才能はどのようにして身についたのでしょうか?


* **出版業界の裏側:** 出版業界の話は、作家や編集者の視点から描かれており、興味深かったです。もう少し詳しく、出版業界の裏側が描かれるとさらに面白いかもしれません。


* **異世界ファンタジーの世界観:** 異世界ファンタジーの世界観が少しだけしか描かれていないのが少し残念です。もう少し詳しく、その世界観が描かれると、より物語に没入できるかもしれません。



**全体的な感想:**


この作品は、単なる日常会話だけでなく、様々なテーマが盛り込まれた、非常に奥深い作品です。読者それぞれが、この作品から様々なことを感じ取ることができるでしょう。


**もし、続編を書く機会があれば、以下のようなテーマを扱ってみたいと思いました:**


* シヴァとアカネが、別の異世界に冒険に行く話

* アカネが書いた小説が映画化される話

* シヴァが、自分の知識を使って、世界を救う話


この作品を読ませていただき、ありがとうございました。また、続編を期待しています。


**(この感想はあくまで一例です。読者の方の感想は様々だと思いますので、ぜひご自身の言葉で感想を書いてみてください。)**


**もし、何か質問やリクエストがあれば、お気軽にお申し付けください。**


――――――――――――――――――――――――――――――

ね?絶賛が過ぎませんかねぇ?(-_-メ)。。。。

やっぱり忖度?近況ノート↓

https://kakuyomu.jp/users/goronyan55/news/16818093082137808197


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