番外編18 ぬいぐるみゴーレム一号はお仕事中!

 やぁ、ぼくはフェンリルのぬいぐるみゴーレム一号だよ!よろしくね!


 マスターに「一号」っていう名前をもらってから、前よりも周囲がよく見えるし、ぼくの考えもはっきりするようになった。

 姿形はフェンリルの神獣イディオス様とそっくり。

 マスター、凝り性ってヤツらしくてね。

 すごい、そっくり!ってよく褒められるの。


 まぁ、でも、ぼく、ぬいぐるみゴーレムで軽いし、戦闘力なんてまるでないし、イディオス様みたいな神聖な魔力?も持ってないけどね。

 イディオス様の助手にって、戦闘力がある方も作ってるみたいだけど。


 あ、でも、そうなると、ぼくのお仕事、何かなぁ?

 ゴーレムってお仕事するために作るものっていうことぐらい、ぼく、知ってるよ。

 え、ぼくは撫でられてるだけでいいの?柔らかくなるよう毛皮を工夫したから?それだけ?


 そっか~とその時は納得したけど、何か色々と街の人が食べ物くれるんだけど、どうしよう?

 ぼく、食べられないよ。動くし、口も開くけど、ゴーレムだしぬいぐるみだし。

 マスターも最初はゴーレムだって説明してたけど、次第に面倒になったみたいでお礼を言って、もらった食べ物は収納にしまうようにしてた。

 ぼくってゴーレムに見えないゴーレムなの?


 ゴーレム化した時にもらった知識によると、ゴーレムって土や金属が多いみたいね。液体や気体でもゴーレムに出来るんだけど、難しいから今の時代だと失われてる知識っぽい。

 ぼくみたいにぬいぐるみのゴーレム化、っていうのも難しいようだけど、ゴーレム化したの、人間じゃなく豊富な知識を持ってるダンジョンコアだからね。


 ……あ!ある意味、ゴーレムのエキスパートって言うんだっけ?専門家だよ!ダンジョンコアって。

 だって、大半のダンジョンにはどこかにゴーレムも配置してるからね!

 そっかぁ。すごい人…じゃないね。えーっと、存在?に作ってもらったんだなぁ、ぼくって。



 もっとすごいの、マスターだけどね。

 コアたちですら、こんなに緻密に繊細にイディオス様とそっくりに作れないし、「名付け」で意図せず存在進化をさせられる人間は、マスターぐらいらしいよ。

 で、ぼく、『魔法生物』っていうものになってるんだって。

 コアたちが言ってた~。

 マスター、コアたちにも慕われて尊敬もされてる所もすごいんだよね。


 もちろん、ぼくも大好きだよ!

 遊んでくれるし!撫でてくれるし!おもちゃも色々と作ってくれるし、跳びついても怒られないし!

 …って、マスター、怒るの?見たことないけど。


 まぁ、そんなことより、お仕事、お仕事~。

 ほら、撫でて撫でて!


 ******


 ん~?あれぇ?

 マスターはキエンダンジョンのマスターフロア、温泉宿って呼んでる所に住んでるんだけど、そこには小柄な人間サイズで二足歩行するもふもふ猫型ゴーレム、にゃーこたちがいるんだよね。

 すっごい働き者なの!

 マスターが気持ちよく過ごせるよう、コアが出した飲み物や食事を持って行ったり、お布団干したり、お花飾ったり、マスターが何か作ってる時にお手伝いしたり、と色々と仕事があるの!


 …って、ぼく、最近、散歩ぐらいしかしてない……。

 マスター、色々と忙しいんだもん!

 他にもお仕事を頂戴!


『お仕事、ですか。一号は好きに遊んでゴロゴロしていてもいいのですよ?』


 キエンダンジョンのコア…キーコの分身、カラフルな蝶の姿のキーコバタはそう言うけど、マスターのお役に立ちたいの。ダメ?


『ダメではありませんが…そうですね。一号はもう少し運動能力を磨くと、マスターも遊んでいてより楽しくなると思います』


 そっか!頑張る!

 でも、一人遊びだとすぐ飽きちゃうんだけど?



 にゃーこたちが手伝ってくれることになった。

 お互いにいい運動になるしね!

 こういったのマスターの故郷では『一石二鳥』って言うんだって!勉強になるね。


 ぼくにはにゃーこたちのように学習能力機能は入れてないけど、「名付け」で進化して「自我」が芽生えたことで、自ら「学ぶ」ことは出来るんだって。

 難しいことはよく分かんないけど、頑張ろっと!


 そう思ったのに……。


 やーん、うっかり濡れて身体が重くなっちゃった~…。

 マスターフロアの海の波打ち際で、ぼくはにゃーこたちと遊んでたんだけど、つい、それたボールを追いかけて勢い余って、どぼんっと……。

 すぐに気が付いたキーコが助けてくれたから、流されなくてよかったけどね。

 ぼくの中の綿が海水吸って大変なことに……。えーん……。


 キーコが風魔法と水魔法と火魔法をうまーく使って、キレイに乾かして、塩も残らないようにしてくれたけど、今度からは気を付けないとね!



 そんなある日。

 マスターの時間が空いて、ようやく遊んでくれた!

 何か丸くて大きい家?みたいな所の中に呼ばれたの。

 ここ、この前、マスターが作ってたドームハウスなんだって。すごいね。部屋の中の物も色んな色があって可愛いの!

 その中でマスターとボール遊びしたよ!

 ロフト?って所に上がるのが面白かった!上から部屋の中、見渡せたしね!


 ぼく、ついはしゃいじゃって、何だか疲れて寝ちゃったけど、マスターはそれでよかったみたい。

 うん、おやすみね~。



 次にマスターがたくさん遊んでくれた時は、海遊びだった……。

 また海に落ちるの嫌だなぁ、と思ってたら、マスター、ぼくを結界で包んで絶対濡れないようにしてくれたの!存分に遊んだよ!


 マスターがスキーっていう二本の平たい板を足に履いて、人工騎獣風竜にロープをかけて引っ張らせる『水上スキー』って言う遊び、ぼくはマスターに抱っこされたり、スキーの前に乗せてくれたりしたけど、結界で包まれていて絶対に落ちなかったから楽しかったよ!

 にゃーこたちとも交代で遊んだ~!


 休憩した後は『パラセイリング』て言う、お船に大きな布?みたいなの…あ、パラシュートって言うのね…を引っ張らせて空に浮かぶ遊びもやった!パラシュートに椅子を付けてぼくたちが座るの。

 ふわりってなって、風でちょっと流されたりもして、飛ぶのとは全然違ってた!

 パラってパラシュートのパラなのね。

 海の上って気持ちいいよ!

 ここ以外の海だと、魔物がたくさんいるから、こういった遊びが出来ないんだって。マスターだけなら強いから全然平気らしいけどね。


 マスター、また遊んでね!



 ……あ、違った。お仕事させてね!


――――――――――――――――――――――――――――――

関連話*「250 こだわってこそ物作り」

https://kakuyomu.jp/works/16817330653011554221/episodes/16817330653400888779

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る