番外編15 初めての夜遊び!
「きょーおのお酒が美味いのはぁ、みなみなさまぁ、のおっかげですぅ~♪」
「まっじめにしっかり働いてる、おっかげですぅ~♪」
「素材がたっかーい魔物を倒したおっかげですぅ~♪」
「美味い店をチェックしていたおっれ~のおっれ~のおっかげですぅ~♪」
「神獣様ぁが守って下さる、おっかげですぅ~♪」
「うっまい酒を持ち込み、冷してもやってる、おれのおかげが大半じゃねぇ?
YO、YO、YO、YO、ツツ、タンッ!
働き具合では神獣サマたち、ちょーブラック、ちょーワーキング、ブラッ、ブラッ、ブラック、黒くてハードでまっくろくろすけ、働き蜂かよワーキングビー、そんなツッコミ入れたくなる程、神様酷いぜ、適当過ぎだぜ、杜撰過ぎだぜ、改革してやる!
ちゃちゃっ、ちゃっちゃっ、ちゃっちゃっ、ちゃらーん!
文句ありゃ出て来いよ、無茶振りの自覚はねぇのか、可哀想だろ、YO-YO-YO-、
神獣サマたち、遊びにも行けねぇ、たまにはゆっくりしてぇ、風呂にも入りてぇ、仕事ばかりじゃストレスも溜まるぅ~♪」
ジャン!ジャカジャカジャカ、ツツ、タッタカタタタタタタタ……。
ボルグ、ヒューズ、マーフィ、グロリア、ダンのご機嫌で適当で所々調子外れな歌に、途中からアルはアコースティックギターを空間収納から出して適当に伴奏し、五人に続いてアルも即興で歌い、ラップ調に変えてみた。
ここはエイブル国パラゴの街の少々お高めの居酒屋。
個室のこの部屋にはアルが防音結界を張ってあるので、大きな声でも音でもまったく問題なかった。
それはみんなにも伝えてあるので遠慮なしである。
日本なら自然と手拍子でリズムを取るが、こちらの平民は音楽はあまり身近ではないので、手拍子はなく、しかし、身体でリズムを取るのが異世界だと主張している、かもしれない。
「YO、YO、神獣サマ、気持ちはどうかい?神様酷いって思っているよな?YO-YO-、YO、YO、YO?」
『よーって何だ?』
ノリについて行けてないフェンリルの神獣イディオスが普通に訊く。
「何だ何だ何だ、それは単なるノリ言葉、気にしない、気にしない、やっぱ、気になる~?んじゃ、チェキラとか、もっと分からん言葉でもいいぞ?チェキラ!チェキラ!フィアウィーゴー!」
アルが親指中指小指だけ立てて、ボルグに振って見せると、ノリがいいのでちゃんと返してくれる。指もマネして。
「チェキラ!」
「チェキラ!」
「チェキチェキチャキラ!」
「YO-YO-っと、チェキラ!」
『ちゃきら?』
「チャキラー!」
「惜しい!チャキラー!」
「チャッチャッチャッチャッ、チョキラー!」
「チョキラー!」
『ちょ、きら~?』
イディオスもふかふかもこもこの毛皮を動かし、リズムには乗って来ていた。ぎこちないが。
「チェキチャキチョキチェキ、チェキラー!」
「チェキラー!」
「チェチェチェチェ、チェキラー!」
「チャキラー!」
「チャキラー!」
「YO-YO-チェッチェッチェッチェッ、チチチチチチチチ、トッチチトッチチ、トットットッチチ、トットットッチチ……ツツッタンッ、ツツッタンッ、タンッタンッタンッタンッ…ツツ…ちゃらら~」
アルは転調してラップ調からロック調に変えて行く。
「あるぅ日~」
後をついて来い、とアルは手のひらを上に向けて手招く。
「あるぅ日~♪」(合唱)
「森の中」
「森の中~♪」(合唱)
「クマの魔物に」
「クマの魔物に♪」(合唱)
「食われた」
「食われたんかい!」
「いきなり酷い!」
「花咲く森の道~クマさんに食われた~」
「さん付けかよ!」
「しかも、爽やかな感じの曲だし~」
「こちらバージョン」
『そもそも、魔物に出会わないよう行動するべきではないのか?』
「ふらっと出て来るもんだしなぁ」
キュイーン、ちゃりらりらっららららら、っつったらったたら、っつったらったたら、つったた、つったた、ジャンッ!
エレキギターじゃないので、「キュイーン」部分は【ボイスチェンジャー】魔法の応用だった。
アルは無駄に高等技術を使ってみた。
ワーッ!と歓声が上がる。
みんな、呑んでるせいでいつもよりノリがよかった。
ダンたちも結構レベルが上がっているので状態異常耐性はあると思うが、まぁ、雰囲気にも酔っているのだろう。
『何か、不思議な音楽や歌だな。それで、よーって?』
イディオスはブレない。まぁ、気になったこともあるのだろう。
「YO-YO-ってのはノリっつーか、相槌みたいなもん。特に意味はねぇな。『おい』とか『ああ』とか『やぁ』とか何でもいいんだけど、ラップっていう『リズミカルな演説』とも言われる種類の曲だとYO-YO-が普通って感じ」
「じゃ、おいおい、やぁやぁ、よーよーでも、いいんだ?」
面白いと思ったらしく、マーフィが訊く。ちゃんと身体でリズムを取る優秀さだ。
「そう。手を叩いて拍子を取ってもいいんだぞ。手拍子って言うんだけどさ。テーブルをタップしたり、指を鳴らしてもいいし、足で床を叩いて踏み鳴らしてもいい」
こんな風に、パンッパンッ、ツタタタン、パチンッパチンッパチッ、どんっどどどんっ…とアルが見本を見せてやると、元々リズム感は優れている戦う男たち。すぐマスターして音楽で遊び出した。
「床を踏み抜くなよー!」
レベルが上がってるので素の身体能力が高いダンたちに注意をしておいた。まぁ、アルが直すが。
そこで、アルは羨ましそうに見ているだけだったイディオスに気付く。フェンリルなので、手拍子は無理、足で床を叩くのは肉球ありな足ではやはり、ちょっと。爪は……床が容易に傷付いてしまう。
「…あ、イディオスはちょっと待って」
アルは空いてる場所に作業用長机を出すと、材料を出してさくさく錬成した。
「じゃーんっ!ボール型コロコロ鈴!」
大きさは野球ボールぐらい。床を傷付けないよう布製。鈴は合金。
何だっけ?何か名前があった気がするが、忘れた。
転がすと、リンリン鳴る。犬、猫、赤ちゃんのおもちゃで似たようなのが色々とある。
アルはとりあえず、十個作ってみた。音色を変えて。
コロコロ鈴を転がしたり、口に咥えて振ったりして、リンリン!リリリンッ!と鳴らし、イディオスもご満悦だ。
別に人間が持って振っても、投げても蹴っても遊んでもいいので、呑み食いしながらしばらく遊んだのだった。
しかし……。
「『取って来い!』をやりたがる神獣ってどうなんだ…」
室内では狭いので、全員で街の外に来ていた。アルの【影転移】で。
『たまに犬や従魔がやっているのを見るんだ。我ならもっと上手くやれるのに、誰もやってくれんからな』
イディオスにとっては、ある意味憧れだったようだ……。
そして、ノリがよく戦闘力も高い男たち五人+アル。
つまり、『いつまで経っても心は少年』の男たち。
夜とはいえ、星明かりで結構明るく、元々夜目は利く。
イディオスと一緒に
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関連話☆「215 そうだ!法の番人だった!」
https://kakuyomu.jp/works/16817330653011554221/episodes/16817330653336686934
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