第17話「原因判明?」


 クルミの言葉にもキレたタカシに二人は謝ると改めてイツカズは口を開いた。


「それで、ここで何を?」


「それは……」


 問題はマオー軍の将軍が村で何をしていたのか? それを考えた時にイツカズは今回の事件の首謀者の可能性を疑っていた。


「町を襲った魔族は明らかに弱かった。マオー軍の魔物いや改造された魔獣なら、もっと手強いはずだ、知ってる事を話してもらおうか?」


「お待ちを勇者様、そちらのタカシ殿は我らの村を守ってくれたのです」


 前にマオー城へ向かう途中に村には立ち寄ったら出て来た村長の顔をイツカズは覚えていた。


「本当ですか村長?」


「ええ、そもそも駐屯の兵士さん達が全滅してしまい……」


「彼と後ろの部下たちが防衛したと?」


 後ろに数十名のマオー軍の装備を付けている兵士がいるのをイツカズは確認した。タカシ同様に彼らの装備もボロボロなのを見て話を聞くと村長の話では防衛したのはやはり彼らだったと判明した。


「だが、どうして?」


「傭兵に身を落とし売り込もうとしていたら、たまたま村が襲われてただけだ」


「それで助けたと……報酬も貰わずに?」


 嘘だなとイツカズは心の中だけで言ってニヤリと笑うと向こうはバツが悪そうに口を開く。兵士らは困惑していたがクルミは気付いてウインクしていた。


「村が復興してから頂くつもりだったんだ!!」


「そういうことにしておこう、なら情報を買いたい報酬は払う、どうだ?」


 イツカズの言葉に今度はタカシが不思議そうな顔をしていた。


「どういう意味だ?」


「この魔物はお前達の使役した魔獣じゃない。その原因や出所を知りたい。それにマオー軍では無い魔族が率いていたのも気になる……今は情報が欲しい」


 その言葉にタカシは一瞬だけ悩んだ素振りを見せた後に口を開いた。その話は予想外であり同時に新たな紛争の火種となる情報となった。




「まさかそんな事が……」


「ああ、マオー軍が崩壊したから、もう止められん」


「とにかく情報は感謝する。今は手持ちがこれだけだから前金で渡そう」


「それは後でいい、村に回してやれ」


 それだけ言うとタカシは歩いて付近の見回りをすると言って部下たちの元へ行ってしまった。


「ねえ、今の話って……」


「ああ、危険だ。そして俺のやり残した仕事です」


「野生化した魔獣と交配を繰り返す魔物、それを利用する魔族……か」


 クルミの言葉が現在の状況だと二人はタカシに教えられた。マオーを倒した日に城も崩壊し残党狩りは兵士らに任せていたが不完全だった。マオー軍の研究所や実験施設を何者かが襲撃し魔獣や研究資料を奪って悪さをしているらしい。


「それで対処が出来ずマオー軍のせいだって嘘報告して全滅したと……なるほど」


「頭痛くなって来た……クルミン」


 戦果の虚偽報告だけなら良かったが制御し切れない魔獣が野に解き放たれ今は放し飼い状態で交配を繰り返し増え続けていると判明した。僅か数週間で爆発的に増えたから駐屯部隊は壊滅したのだろう。


「いや普通に王様や大臣さんに報告すれば?」


 クルミの言う事は正論だ。しかし実はそう単純な話では無い。これには国家としてのメンツや内部事情が大きく関わって来る。


「今の弱った王国が対応出来るかどうか……」


「戦争終わってすぐだから難しいって話?」


 簡単に言えばそうだが、それだけでは無く王国の兵士が起こした不祥事は最悪の場合、国王にまで責任問題が波及し叛乱や暴動に繋がる可能性も有る。マオー軍の残党狩りを兵士らの手柄にし仕事を与えた国王の政策が徒になってしまったのだ。


「……とにかく付近の村人たちは皆この村に集まってるらしいから逃げ遅れた人が居ないかだけ確認したら報告かな」


「う~ん、実績作りだけだったのに……色々と厄介になって来た」


「それは諦めて、それにクルミンには今回のことも手伝ってもらいたいし」


 アイドルにこんな事を頼むのはどうかと思うけどと付け加えると意外にもクルミは気にして無いらしい。


「ま、非常時なら協力するわよ……にしても米とか無いのねこっち」


「ああ、そういえば米は見ませんね……外国に有るかも」


 記憶が戻って十三年そういえばと気付いたイツカズ。スープとサンドイッチよりも味噌汁とオニギリを久しく食べて無いと思い出す。


「こういう時の炊き出しって基本オニギリだったし、私も……そうだったから」


「え? クルミンも? それは……いや、今はやるべき事をやろう!!」


 クルミの言葉が気になったイツカズだが今は救助活動が先だと動き出す。それからも何度か襲撃が有ったがイツカズは全て一人で撃退した。その光景は圧倒的だった。




「す、凄い……」


「聖女様は勇者様の戦闘は初めてご覧に?」


「うん……で、でもさ、その……あの武器って」


 護衛の兵士と話すクルミは目の前の戦いを見てはなはだ疑問が有った。魔法を放つのはまだ分かる。問題は今イツカズが手にしている武器に有った。


「武器? あれは勇者様専用装備ですが……」


「う、うん……だろうね、でもさマシンガン使ってたら圧勝よね、そりゃ!!」


 そう、イツカズの使用している武器は剣でも槍でも弓でも無く銃、アサルトライフルだった。


「マシンガンじゃ無いよクルミン。これはAK-12というアサルトライフルさ!!」


「んなこと知らわないわよ!! 普通は剣でしょ!! ファンタジーなら!!」

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