第24話 新魔法
「おお! 新しい魔法だ!!」
いつも通り、俺たちは魔法隊の基地にあるダンジョンの攻略を進めていた。
レベルもみるみる上がり、俺のステータスボードには合成魔法以来の新たな魔法が記載されていた。
「良かったね、拓也! ちなみになんていう魔法?」
久しぶりの新魔法で喜んでしまったので、当然俺の横にいた王子はそう聞く。
「それがあまり聞いたことが無い魔法で……空間魔法って知ってるか?」
「いや、僕は知らないけど……」
王子もその魔法は聞いたことがないと言った。しかし、そんな俺の一言を聞いて隊長が目を大きく見開いた。
「空間魔法!? すごいぞその魔法は!」
「え? そんなにですか?」
「魔法省が確認した中で一人だけいたんだ。その能力を見せてもらったんだが、異空間を作り出して物を出し入れできるというものなんだよ。探索者なら喉から手が出るほど欲しい魔法なんだが……運がいいな、多々良くんは」
「超便利じゃないですか! ちょっと試してみます!」
そう言って俺は早速空間魔法を発動する。すると、目の前に小さな黒い球体のようなものが現れた。
恐る恐る触ってみると、いきなりステータスボードのようなものが出てきた。
「うお! びっくりした! ……ここに収納したものが表示されるってことか?」
「試しに魔石でも入れてみるか?」
隊長はそう言い、拳大の緑色の魔石を取り出した。最近モンスターが強くなるにつれて、落とす魔石のサイズもだんだん大きくなってきている。
俺はその魔石を受け取ると、目の前にある黒い球体に近づける。
すると、まるで掃除機に吸われるかのように魔石は黒い球体の中へと消えてしまった。
「……これでいいのか?」
空間魔法で現れたボードを見ると、まるでゲームのシステムのように風属性の魔石(中)と表示されている。
「やはり便利だな」
「そうみたいですね。とりあえず、ドロップアイテムは俺が全部回収しますよ」
空間魔法の便利さに隊長も喜んでいた。最近、持ちきれなくなってドロップアイテムを捨てて帰ることもあったので、これからはそんなロスも無くなるだろう。
「はい、それじゃこれ頼むわね、荷物持ち」
鈴石はそう言うと背中に背負っていた大きなリュックをドン、と俺の前に置いた。
「その荷物持ちって呼び方はやめろ!」
「なんであんたって攻撃魔法が発現しないの?」
「そんなこと知るかよ。魔法具で戦えてるんだから別にいいだろ」
いちいち余計なことを言うやつだな……。
「そろそろ戻ろうか。ここまで潜ってきたら帰るにもかなり時間がかかる」
「了解です」
そうして俺たちは地上に戻ることになった。みんな手荷物が少なくなったからか、帰りの足取りはとても軽いように見えた。
◇◇◇
「上手くいかないなあ……」
俺は事務所で頭を悩ませていた。空間魔法のことについてである。
こんなに便利な魔法を使って、なにか魔法具が作れないかと考えたのだ。いわゆるアイテムボックスのようなものをイメージしていた。
ただ、創造魔法は自分の魔法と掛け合わせる、なんていうことができず、魔法具の開発は出来なかったのだ。
「良いアイデアだと思ったんだけどなあ……」
「あれ? 珍しいね拓也。魔法具作りで考え事?」
「ああ……アイテムボックスみたいなものが作りたかったんだけどダメみたいなんだよな……」
王子は俺が頭を抱えているのを見て声を掛けてくれた。
「いや、さすがにそんなのも作れたら異常すぎるよ? 拓也がいれば魔法隊は荷物の容量で困ることも無いし、気にしないほうが良いよ?」
「そうなんだけどなあ。思いついたものが作れないっていうのがなんだかもどかしくてよ……」
そうして、俺はいつも通りマガジンの補充作業に入ることにした。
相変わらず消費が激しので、この作業が日課になりつつある。
作業を続けて30分が経った頃だろうか? お菓子を食べながらバラエティ番組が流れるモニターを眺めていた沙織が珍しく大きな声を上げた。
「たくや……! これ見て!」
「ん? どうしたそんなに慌てて」
「いいから……!」
俺は沙織に引っ張られるようにモニターの前へと足を運んだ。モニターには、多くのモンスターが歩いているのが見えた。
「これどこのダンジョンだ? 市街地型のダンジョンなんかあったんだな……」
「違うの。これ、東京のど真ん中だよ……!」
「はあ……? だって、地上にモンスターが出るのはまだ先のはずだろ?」
絶望の日は今から約2週間後という話だった。時期が早くなるということも聞いていない。
報道を詳しく見ていると、近くにいた探索者が討伐にあたっており、順調に事態を解決しているようだ。
「まあ、これくらいならあっという間に討伐は終わるだろ。原因は分からんが、探索者は山ほどいるしな」
その後、イレギュラー的に発生したモンスターは無事探索者によって無事に討伐された。深夜の出来事ではあったが、どうやら白銀の騎士団の探索者が対応にあたっていたようだ。
厳戒態勢ということで、白銀の騎士団が辺りの警備を行ってくれることになり、俺は特に深く考えずにその日は休むことになった。
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