美少女姉妹の正体
「という訳で何度も声をかけてもアンタは何にも反応しなかったんだから」
「そ、そうなんだ」
「それにしても本当にナギ君があのグリモワールなんだね」
「そうよね、最初は疑ってたけどこれを見たら認めざるを得ないのよね」
「え、えーと俺を知っているみたいだけどそんなに驚くことか?」
「「当たり前よ!!」」
渚は二人のあまりの迫力に後ずさる。
「はあ・・・とりあえずもう夜だしご飯にしましょ」
「話はその後にね」
「あ、ああ」
それから三人はリビングで夕飯を食べ終え渚は二人と向かいあってさっきの続きを話始める。
「まず私たちがするグリモワールつまりあなたについて説明するは」
「グリモワールはWebラノベ界では万能小説家として知られていてそれぞれに独特のストーリーと世界感の作り込みがすごいことが有名なの」
「そ、そうなんだ」
今まで書くことに満足していてあんまりpv数とか気にしなかったから全然気づかなかった。
「あとアンチコメにお願いをしてるのでも有名なのよね。なんでアンタアンチコメントに詳しく嫌いなことを書いてくれたら嬉しいって説明欄に書いてんのよ」
そうなのだ。
渚は投稿してる全ての説明欄にその記載をしている。
「あ、ああそれはその方がよりいい作品にできると思ってるから」
「「いい作品に?」」
「アンチコメントを詳しく書いてくれるとそこには作品のダメな点や自分にはない発想が書かれてることがあるんだよ。そしてそれが俺をもっと成長させてくれると思ってるから。それにコメントしてくれるってことはそれほどその作品を読んでくれてるってことでしょ」
春香と詩織は渚のその言葉に呆然となる。
「そんな考えが・・・・・・」
「どうして・・・・・・」
「じゃあ次はこっちから。どうして二人はグリモワールを知ってるんだ?」
「えっ・・・!?」
「そ、それは・・・・・・」
「俺は自業自得とはいえ秘密を話したんだ。二人にも話てもらうよ」
渚はすかさず自分から二人に問いかける。
そのことにより攻守が逆転した。
春香と詩織は渚から目を逸らし口を閉じていたが。
「うん、そうだよねナギ君だけは不公平だよね」
「お、お姉ちゃん!?」
とうとう春香が語り出す。
「ナギ君、私たちにはね秘密があるのこれはお父さんにも言ってないの」
「慎吾さんにも・・・」
「だからね。一つ約束して欲しいの」
「慎吾さん、それと母さんには黙っておく」
「ありがとう」
春香は深呼吸をし重い口を開ける。
「私たちわね。小説家なの」
「小説家・・・・・・それって」
「ナギ君が書いてる物と同じライトノベルよ」
「ま、マジかよ」
渚は言葉を失った。
それもそのはずだ自分が目指した姿を体現した人物がこんな近くにいたのだから。
「それでね何で私たちがナギ君のペンネームを知ってるのかって言うと」
春香姉さんの話によれば一時期スランプの時期があった時担当の編集者の人からネットでも書籍媒体でもいいから色んな種類のラノベを読んでみてほしいと言われその経緯で俺を見つけたらしい。
「でもそれだとちょっとおかしくないか、普通なら作者ではなく作品名だけを覚える場合が多い。けど二人はまず先に俺の名を言った。それはどういうことだ?」
「それはね」
「アンタの作品には私たちにないものが詰まってたからよ」
「二人の作品に無いもの?」
「そう。あ、ちなみに私のペンネームは
「で、私が『ミミちゃん』」
「霧の内霊先生にミミちゃん先生!?」
渚はまたまた二人の言葉に驚く。
霧の内霊、それは今ラノベ界で最も勢いのある小説家の一人で異世界ものと現代ファンタジーを得意としている。
ミミちゃんも同じく最も勢いのある小説家のひとりでラブコメと恋愛小説を得意としている。
もちろん渚も二人の
小説を買って読んでいる。
「マジで!?ちょっと部屋戻って・・・・・・グェッ!?」
「落ち着きなさいよ」
渚が立ち上がりテーブルから離れようとした瞬間詩織に首根っこを掴まれ椅子に座らされた。
「それで話の続きなんだけど私とお姉ちゃんの得意なジャンルって全然違うじゃん」
「まあ多少被るところはあるけどね」
「でもね一つだけ共通することがあるの」
「共通すること?」
詩織が得意とするのが非日常系のフィクション系で春香姉さんが得意とするのが日常系のノンフィクション系。
ジャンルに関しては全くと言っていいほど正反対。
つまり二人の言う共通する部分は二人の作風にもしくはそのストーリー性やキャラクターに関することか?
思い出せ二人の作品の特徴を。
渚は思い返す、今まで自分が読んできた二人の作品を。
「一貫のなさ?」
「「!!」」
渚の呟きに二人は驚く。
「どうしてそう思ったの」
春香の質問に渚は自分の考察を話す。
「俺が二人の作品を思い返して思ったことは基本的には面白いということ」
「基本的〜〜?」
「だから待てって、別につまらないとは思って無いから」
「そう」
「ん、んえーとさっきの続きに戻るんだけど二人の作品って中盤から終盤にかけるなかほぼ確実と言っていいほどグダるよね?」
「「う、!!」」
二人は気まずそうにそっぽを向く。
「会社の意向でしょ?」
「な、どうして・・・!?」
「知ってるの・・・?」
渚も小説家に夢を持っているその業界に関する知識は多少は持っている。
「ラノベでは少ないけど漫画では多い傾向にある会社の意向による作品の引き延ばし。特に二人の作品の中でも人気な作品にはそれが顕著に出てる気がする」
「・・・ねえ渚。どうしてそれに気づいたの?正直に言うけど確かに私たちの作品のほとんどはアンタの言った通り引き伸ばしが行われているわ。それでも私たちはそれをカバーするためのキャラにストーリーに新しい伏線とかを販売する前に何度も確認したわ。それなのにどうして・・・」
「正直言って最初はただの偶然だった。読んだ時に違和感を感じたんだ。でもそれが伏線なのか偶々なのか分からなかった。でも完結した作品を読み返した時最初の冒頭と違うところに気づいた。ほんの小さな差異だった。そこでもし自分が作者だったらこの部分を入れる必要があったのか、そう考えた時もしかしたら引き延ばしが行われてるんじゃいかって思ったんだ」
「そうなんだ」
「一応他にも根拠があるよ」
「「ま、まだあるの!?」」
「例えば文量。いつもの周期より時間が掛かった割に短いこと」
「「あ、」」
どうやら二人にも思い当たる節があるようだ。
「他にはキャラクリが荒いこと。最初からいたキャラに比べて重要性に中身が薄いことなどなど・・・・・・」
それから30分後
「「・・・・・・」」
「それと・・・って大丈夫か?」
春香と詩織は渚の解説に自分たちの堀った墓穴、それにそのことに思い当たるふしが沢山あり過ぎて
ガーンとなっている。
「まあ、そういうこと。・・・・・・そこでさ俺らの仲間にならないか?」
「「へ?」」
小説家姉妹はリアルもラブコメかよ!! 鳳隼人 @dusdngd65838
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