異端審問

バサっ!


ゴミ袋が剥がされた。

しかし両手は縄で縛られ足はガムテで巻かれている。

周りを見渡すとそこは暗い部屋に蝋燭が灯され所々にはムチや斧、貼り付け器具があり物騒である。

そしてその部屋にはヨーロッパの仮面舞踏会に着けていそうな仮面をつけた50人は超えそうな大量の男と俺の隣には俺と同じ手と足を縛られ更には口に竹を噛まされている透がいた。


「これより異端審問を始める」

「「「始める」」」

「彼の者たちに罰を!!」

「「「罰を!」」」


机を組み立て黒い布を被せ裁判の机に似せた物の中央に座る男がドスの効いた声で開始を合図をする。

というか俺はこの声の正体を知っている。


「おい、たけし。ダメ元で言うがこれはなんなんだ?」

「黙れ!私は武などではないレヴィアタン教司教モルペウスである!」


モルペウスって、確か夢や幻想を見せる悪魔だよな。


「これより貴様らには神罰を受けてもらう!!」

「「「神罰!」」」


「神罰って俺たちの罪状はなんだよ!」

「しらばっくれるのではない!貴様の罪はなんでお前なんだの罪だ!!」

「あ〜〜何故こんな奴があんな美少女姉妹のエスコートを・・・」

「神よ罪人に罰を!」

「我らに祝福を!!」


なんだその馬鹿っぽい名前の刑は?それにこいつら嘆いたり祈ったり忙しいな。


「そして貴様だ!!」


たけ・・・モルペウスは手に持つ小さな木槌を透に向ける。


「ふー?はふがはひひたっへひふんは!(はー?俺が何したっていうんだ!)」

「何をしただと!!しらばっくれるのも良い加減しろ!!」

「そうだ!この悪魔め!!」

「貴様以上の悪はこの場に存在しない!」

「今度こそ貴様に天寿を下してやる!!」


なんかさっきより盛り上がってんな。

ていうかアイツら今の聴き取れたのかよ。

それにしても透に対しての憎しみが他とは比べものにならないな。


「貴様は・・・いつもいつも我らの目の前でイチャイチャとハグにキスに囁き合って!!!なんだそれは!!」


モルペウスは片足を机に乗せ身を乗り出して拳を強く握りしめる。


それに関しては本当になんだそれはだな。


「貴様はそれだけにも飽き足らず!!他の女の子にももてはやされファンクラブまで!!何故貴様なのだ!!何故貴様だけそんなにモテるのだ!!何故神はこの様な悪魔を地上に解き放ってしまったのか!!!」


周りの奴らもモルペウスに同調して嘆いたり落ち込んだり歯を食いしばり過ぎて涙を流す奴もいる。


「だが・・・!そう、だが・・・!ついに、ついにこの時が!」


モルペウスはまるで親の仇を討つかのような迫力で叫ぶ。


「峯口透よ貴様に判決を言い渡す!被告峯口透は有罪!!被告にはこの世に生まれてきたことを後悔せよ罪を言い渡す!!」

「「「おおおおおお!!!!!」


モルペウスも含め俺と透以外の奴らは物凄い盛り上がりをみせる。


「さぁ諸君!!早速実刑へと・・・」


バン!!!

ドカーン!!


突然外から爆発音がした。

それもかなり至近距離で。

レヴィアタンの奴らの一部が外が気になったのか黒いカーテンの一部をずらし外を見るとそこには。


「なっ!大変です!司祭様!」

「どうした!一体何が起こっているのだ!!」

「友坂先生と漣先生です!」

「くっ!まさかこんなに早く見つかるとは!?」

『あーてすてす、てすてす。聞こえているなレヴィアタンの諸君』


窓の外から女性の声が聞こえる。

これは友坂先生の声だな。


『君たちは現在包囲されている。大人しく人質を解放しろ』


友坂先生は落ち着きのある感じで言う。

それに対してレヴィアタン一行は。


「大人しく解放だと?」

「ようやくこの日を夢に見たんだ」

「去って行った先輩方から託された約束を果たせるチャンスなのだ」


そんな中モルペウスが窓へと向かう。


「大人しく人質を解放しろだと。笑わせるな!これは我らレヴィアタンの宿願なのだ!そう簡単に諦めると思っているのか!!」

「そ、そうだ!」

「ここまで来て諦められるか!」

「司祭様流石です!」


モルペウスの宣言により再び自信をつけるレヴィアタン一行。

しかし


『君たちそんなんだからモテないんだよ』


「「「「グハッ!!(口から血)」」」」


友坂先生からの容赦の無い一言にレヴィアタン一行は口から血を流し倒れる。

しかしそれでもモルペウスは倒れない。


「な、なんのこれしき・・・そんな戯言で我を倒せるとでも思っているのか!!」


『そう?私からは君たちが口から血を流す姿が見えたが?』


俺も見えました。というかそいつ以外全員死んでます。


『仕方ない。私もこれはしたくなかったんだが』


友坂先生は手で合図を出して一人の生徒を呼んだ。

そしてその生徒に手に持っていたメガホンを渡した。


『あー、あのー聞こえますか?』


その声に俺は聞き覚えがあった。


『えーと、私転校してきた3年生の藤堂春香です』


なんと春香姉さんだった。


春香は大きく息を吸って思いっ切り言った。


『ナギ君を虐める人達は大っ嫌いです!!!』


「カッ!!」


さっきまでなんとか耐えていたモルペウスいや武も遂に崩れて堕ちた。

死んでいた奴らも意識まで失っておらず号泣する奴まで出てきた。


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