妹が世界屈指の勇者候補の超人だけどオレ意外とまともに会話出来ない限界ちゃんなので、どうにか勇者になるまでプロデュースしていきたいと思います
第22話 方針会議という名の その4 パジャマと先生とホットパンツ
第22話 方針会議という名の その4 パジャマと先生とホットパンツ
――翌日 朝
「んんん! 誰も起きて来ませんぞ!」
やはりというかなんというか、異世界に転移してきて最初の夜にしてダメ人間達の飲み会の翌日。
既に正午を回りそうだというのに、屋敷の主の悪役令嬢も、ツレの酒豪のギルド受付嬢も、当然ながら我が愛する超人駄妹も、誰も起きてこなかった。
なっちゃんについては、アルコールインストールしていようがしていまいが変わらんが。
もちろん、昨晩の夕食の前にアヤメが行っていた『今後の方針』なんてものは、あの晩酌の場で当然ながら何一つ決まっていない。
本当に、正真正銘無駄に酒を煽っただけである。
オレはいったい、何のためにこの世界へ……。
――いやまあ、別に目的をもって来たわけではなく完全に事故なのだが。
と、そんな何の実りも無い事を考えていたら。
ガチャリ。
「おはようございます……。アキヒサさん……」
「アキ……。お水貰えますか……?」
頭を押さえたパスタさんとアヤメが、寝間着姿でリビングへ入ってきた。
二人とも少しはだけた姿が色っぽいのだが。
それでもやはり、なぜこんなに残念なのか……。
という気持ちが勝ってしまうのであった。
もしかして、昨日のオレは重大な選択ミスをしてしまったのではなかろうか……。
■
「はい。まずは簡単なクエストをクリアして、冒険者ランクをあげていきましょう」
パスタ先生が眼鏡をかけたタイトスカート姿でそう言った。
簡単な朝(昼)食のあと、朝(昼)シャンならぬバスタイムを終わらせた二人は、ようやっとアルコールも抜けたのかスッキリした顔でリビングへ戻ってきた。
本日は、受付嬢業務がお休みだというパスタさんは、いつもよりも少しピッチリしたシャツとスカートの、まるで敏腕秘書といった姿をしながら差し棒を持っていた。
一方、昨日までパーティーが組めずある意味ニート同然のお嬢様アヤメはというと、昨日の豪奢なドレス姿ではなく、Tシャツのような服に短いホットパンツ姿であぐらをかいてストレッチをしている。
完全に自宅でリラックスモードである。
お前絶対その姿の方が素だろ。
ちなみに全く起きてこないなっちゃんは、オレが部屋からここまで担いできたのだが、ソファーの上で器用に両手足を大の字に広げながらデカいいびきをかいている。
うん。ベッドから出したぐらいで起きるわけないよね。
まあ、これからなっちゃんは肉体労働担当だから。
オレがその辺りは上手く操っていきまっしょう。
「な、なんだか嫌な予感がしたかも……」
目をこすりながら、もそりと上体を起こす駄妹であった。
欠伸をしている姿がなんだか猫のようである。中身はナマケモノだが。
まあ、なっちゃんは放っておこう。
「はいパスタ先生」
挙手。
「はいアキヒサさん」
パスタさんがピシっと差し棒をこちらへ向ける。
完全に先生役になりきっていた。
どうやら、こういうコスプレっぽいのが好きらしい。
「冒険者ランクを上げると何か良い事があるんでしょーか」
「良い質問です。お二人がこの世界の事を全くご存じない理由も、昨晩で良く解りましたので、そちらも踏まえて」
ガラガラガラガラ。
何やら、大きな板と黒板のような物が出てきた。
カッカッカッと子気味良い音を立てて、パスタさんの手によって黒板にEからAのアルファベットが並ぶ。
「冒険者にはA~Eと、更にその上に一部の冒険者だけが認められたランクが存在します」
言いながら、各アルファベットの下に、ウサギのような何か、狼のような何か、ゴーレムのような何か、ドラゴンのような何かがそれぞれ書き込まれていく。
恐らく、強さを表しているのだろう。
「それぞれは、パーティーの強さや適応力を表しています。Aランクパーティーは竜種に相当するモンスターと戦う力があるというイメージですね」
細かく説明するとまた違ってきますが、大まかに分ければこのような感じです。
と付け加えるパスタさん。
「同じように、ギルドで受ける事が出来るクエストにもランクが振られています。また、遺跡や迷宮などにも同じようにランクが振られています」
アヤメは、そのラフな格好には全く似合わない扇で自分に風を送りながら黙って聞いていた。
今日は初夏の初めぐらいでそこまで暑くは無いと思うが。
氷魔法使いは暑さに弱いのだろうか。
でも氷漬けのギルドの中では、普通にクシャミしてたよなぁ……?
単純に、温度変化に弱いだけかもしれん。
「大まかに危険度が割り振られていると思ってください。そして、ランクが足りていない場合は入る事が出来ない場所があります。Eランクパーティーが、Aランクの迷宮入っても、全滅するのが目に見えているからですね」
「そこでランクが必要になってくる訳ですわ」
アヤメがあぐらをかいたまま、扇をバサっと広げる。
めちゃくちゃミスマッチだなその組み合わせ。
「アキたちが故郷の世界に帰る方法は、当然ですが普通のパーティーが入れるような場所には情報すらないでしょう。もしあるのなら、とうの昔にこちらの世界とそちらの世界で交流も出来ているでしょうし」
ふむ。
極めて論理的な思考だ。パスタさんに教えてもらったのか?
「……何か失礼なことを考えていません?」
……意外にカンがいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます