第6話 映画のオファーをもらいました

 一学期の期末テストも終わり、テスト休みのさなかお母さんに呼ばれた。リビングへ向かうとお兄ちゃんも呼ばれたようでソファーに座っている。私がお兄ちゃんの横に座るとお母さんの話が始まった。


「二人に映画の出演オファーが来ているのそれも主演の、作品は少女漫画が原作で『秘めた恋愛』というのだけど知っている?」


 お兄ちゃんと一度視線を合わせお母さんに向き合って二人して知らないと首を振る。


「まあ、そうね古い作品だから知らなくて当然かな、簡単に言うとね兄妹で恋愛をする話なのよね、この作品の監督がねあなた達二人が兄妹だという事を知っててね今回依頼が来たのよね、私自身はちょっとどうかなとは思ったのだけど受けるか受けないかは二人に任せるわ」


 そんなこと急に言われても……。


「と言ってもどういう内容かわからないと決めかねないでしょうから、原作の漫画買ってきたわ、読んでからでいいから決めてほしいわ」


 そう言ってお母さんは紙袋を2つテーブルに置いた。全部で10巻みたいだ、同じ本を2セットも買ってもったいないなと思うけど、とりあえず一巻を手にとって中を読んで見る。


 パラパラと読み進める、小さい頃から台本などを読んだり覚えたりしているので速読は結構得意だったりする。それはいいのだけど肝心の中身はこんな感じになっている。


 主人公は16歳の高校生で名前は恋川可憐こいかわかれん、そして同じ年齢の兄で恋川隼人こいかわはやととの物語。同じ年だけど双子というわけではなく、お互いの片親は死別しており小学校の頃にお互いの親同士の再婚で兄妹になってひとつ屋根の下で暮らしている。


 二人はお互いを気にしながらも兄妹と言うことで適度の距離を取って生活していたのだけど、ある時父親が長期の海外出張をする事になってそれに母親もついて行くということで二人暮らしが始まる。クリスマスやお正月それとバレンタインなどのイベントやハプニングがあり、ゆっくりとではあるけどに距離を縮める二人。


 だけど偶然に二人はある事を知ってしまう、そのある事とは二人は血の繋がらない兄妹だと思っていたのだけど、実は父親が同じ人物つまり異母兄弟妹だったの。信じられないし、信じたくない二人は色々と調べたが異母兄妹だという事実だけが残ってしまう。


 この辺りで一度本から目を放し天を仰いだのは仕方ないと思う、これ本当に少女漫画なのかな? 異母兄妹で親が再婚の上にもう片親はどっちも死別とか恋愛というよりミステリーとかサスペンスではないのかな?

 思うことは色々あるけど本筋じゃなさそうだし続きですね。


 お互い微妙なスレ違いが増え距離が離れていく、結局最後は二人で過ごすはずだった二度目のクリスマスの夜、兄に別れを告げ主人公は両親のいる海外へと旅立って終る、と言うお話。


 なんだか細部は違う気がするけど、どこかわたしたちと似た境遇な気がする、私とお兄ちゃんは本当に血が繋がっていない所とか年齢差とかぜんぜん違うのだけどなんだか最後の終わりがもやもしてしまう。


 そんな私の心情を察してかお母さんが付け加えてくれたのだけど、漫画が出た当時は賛否両論が出て色々と荒れたとの事だった。そしてこの映画の撮影ではまだラストをどうするか決まってない、というよりも決めていないみたい。


「それで二人はこのお仕事どうする?」


「僕は受けてもいいと思うよ、陽向葵次第だけどね」


 お兄ちゃんがこちらを伺ってくる。


「お兄ちゃんが出るなら私も出てもいいかな」


 そんな私とお兄ちゃんを見てお母さんが「ひなちゃん、ちょっとこっちに座りなさい」といつもと違う雰囲気でお母さんの座ってるソファーのすぐ横をポンポンと叩く。私は何か嫌な気配を感じたけど移動してお母さんのすぐ横に座る。


「月夜ちゃん少しひなちゃんとお話するからコーヒー3人分入れてきてもらっていい?」


「うんわかったよ、僕もちょうどの飲みたかったし入れてくるよ」


「お願いね」


 そう言ってお兄ちゃんはキッチンへ歩いていった。それを見送ってからお母さんが私と視線を合わせてくる。お兄ちゃんを交えずにする話しってなんなのだろう、少し不安になってきた。

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