第3話 お風呂上がりとドライヤー

「さてとお昼何か食べて帰ろうか、陽向葵は何か食べたいものある」


「あ、うん、何でも良いかな」


 まだ手を繋いだままだ、普段は大体車での移動なのでお兄ちゃんとこうして外を歩くのは久しぶりな気がする。なんだか道を歩く人がみんな私達を見ているようでドキドキする、周りからは恋人のように見えているのかな。お兄ちゃんの顔をそっと見てみると目が合ってニコリと微笑んできた。あーもう普段から見慣れているはずなのに今日は一段とかっこよく見えるよ。


「あれ? お兄ちゃんマネージャーさんは?」


「ああ、陽向葵のマネージャの斉藤さんと僕のマネージャーの相良さんは先に帰ってもらったよ、今日はもう僕も陽向葵もお仕事無いからね」


「そうなんだ、お兄ちゃんありがとう」


「どういたしまして」


 そう言って二人して笑い合う、なんだか通じ合っているこの瞬間が好き。

 この後は新しく出来た美味しいと評判のオムライスのお店で昼食を食べて家に帰宅した。家に帰って来て少し休憩したあと私はリビングで宿題をする。


 お兄ちゃんはソファーに座りコーヒー片手に文庫本を読んでいる。その横顔をついつい見てしまって宿題が進まない。


「どうしたの? わからない所があったら聞いていいからね」


「ん、大丈夫だよ、そんなにいっぱいじゃないし難しくないから」


 それから30分ほどで宿題を終わらせる、部屋に戻って忘れないうちにカバンに入れておく、ついでに月曜日の教科書なども用意しておく、これでオッケーかな。時計を見ると16時を過ぎていた、晩御飯の用意をしないと今日はお母さん帰ってくるのかな、リビングで読書をしているお兄ちゃんに聞いてみることにした。


「お兄ちゃんそろそろ晩ごはん作ろうと思うんだけど今日はお母さん帰ってくるのかな」


「どうだったかな、メッセージ送ってみるよ」


「うん、お願いするね、それと晩ごはん何かリクエストあるかな、といっても冷蔵庫の中確認しないといけないけど」


「陽向葵の作るものはどれも美味しから何でも良いよ」


「もう、何でもいいって言うのが一番困るんだけどね、冷蔵庫の中身見て決めるね」


 冷蔵庫の中身を確認しする、時間も微妙だしあまり凝ったものは作れなさそうだけど、ぱっと見た感じだと野菜炒めなら行けそうだ。


 豚バラスライス、キャベツ、玉ねぎ、人参、ピーマン、もやし。まずは豚肉に下味をつけて、次に野菜を切って……、おっとご飯を炊かないとご飯なしになるところだった。ちゃっとお米を洗い炊飯器のスイッチをぴっと押す。


 フライパンを用意してサラダ油をひいて生姜とにんにくを少々、豚肉を入れてその後は野菜を順番に入れていく、強火で炒め塩と醤油で味付けして完成。キャベツを1つ摘んで味見、うん大丈夫だね。


「お母さん今日は帰ってこないって、明日の朝には帰ってくるってメッセージ来たよ」


「はーい、お米が炊けるまで少し時間あるからお兄ちゃん先にお風呂済ませてきてよ」


「わかったよ、陽向葵も一緒に入る?」


「は、入らないよ、もう私14歳なんだからね!」


「ははは、冗談だよそれじゃ先にお風呂入ってくるね」


「(も、もう、冗談でも言って良いことと悪いことが……)」


「陽向葵何か言った?」


「何も言ってないよ、ご飯準備しておくから早く入ってきて」


 はぁ、焦っちゃったよ、もう少しで一緒に入るって言いそうだったよ。小学校低学年までは一緒に入っていたけど流石にもう無理だよ、恥ずかしいよ。


 ご飯がたけたので、ご飯と野菜炒めをテーブルに並べるとお兄ちゃんがお風呂から上がってきて席に着く。


「「いただきます」」


「うん陽向葵の野菜炒め今日も美味しいよ、いつもありがとうね」


「もう、お礼なんて言って今日はどうしたのよ」


「一緒に家で御飯食べるのは久しぶりだからね、ちゃんと感謝の気持ちは伝えておかないとと思ってね」


「そうなんだ、美味しいと思ってもらえて私も嬉しいよ」


 他愛のない会話をしながらご飯を食べる。


「ごちそうさま、美味しかったよ」


「お粗末さまでした」


「食べ終わったら食器は僕が洗うからそのまま置いておいていいよ、陽向葵はお風呂に入っておいで」


「えーっと、それじゃあお願いしようかな、食器だけつけておくね」


 私は急いで残りを平らげると食器をキッチンの洗い場に置きお願いすることにした。


「お兄ちゃんそれじゃあお風呂入ってくるね」


「ゆっくりしておいで、あがったら髪乾かしてあげるからね」


「はーい」


 返事をしながら私は自分の部屋に戻り着替えを持ってお風呂に向かった。

 今日はお風呂上がりにお兄ちゃんにドライヤーで髪を乾かしてもらうのが今から楽しみだ。

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