民の意識の変化と吹っ切れたススム

闘技場大会が終わって、民にも変化が表れてきた。

民たちは会うと大会のことを話し、あんなことが出来るとはと言いあった。

優勝したのに蔓の冠しか商品が無かったことを悪く言う者もいたが、

優勝者の「そんなことよりもあのお二人が本気で戦ってくださったことの方が嬉しいんだ、物じゃないんだよ」との言葉と、満足げな表情に、物以上に大切なものがあることに気がついた。

『決まりに基づいて物事をやる』今までになかった意識が芽生え広がり始めた。


軍の方でも変化があった。「自分も闘技場で戦いたい」と志願する人が増えたのである。軍は適性検査を行い、優秀な兵士を手に入れられるようになった。

軍に入るために、普段から鍛錬を行う民も増えここかしこで練習が行われるようになった。


テュールとウルは志願者が増えたことに喜んでいたが、何も訓練していない者がいきなり闘技場での種目が出来るというわけではない。どうしたらいいかとススムに相談に来た。

「基礎体力を付ければいいんですよね?」

「そうだな、無理な鍛錬をすると体を痛める」

「一番簡単なのは走ることですかね?」

「そりゃー走るのは基本中の基だけどさ、どうやるのさ」

「同じ距離を8~10人ぐらい並んで合図で一斉に走るんです。全力で、それで順位を決める。あと長距離をコースを決めて走るという方法です。私の国では短距離走と長距離走と言ってましたが、短距離は瞬発力。長距離は持久力が付きます」

「そうか!それなら、兵士がどれくらい出来るかわかりやすい。程度によって組を作って、出来るようになったら上の組に上がるようにするすれば、上に上がろうと奮起するな!」

「おお、それを訓練に組み込めばいいんだな、なあ、お前の国ではこうゆうのも大会が開かれるのか?」

「はい、そうです」

「本当に、なんでも競技に出来るんだな」

「とにかく、その走ることを訓練に取り入れよう。ススム又何かあったら頼むよ」

「私は私の国でやっていることを教えているだけなんです」

「でもよ、俺たちには小僧の国でやっていることを知らない。だから小僧がいないとどうにもならないんだよ」

「その通り、ススムはここで馬に乗ることを教わったんだろう?それと一緒だよ」

ススムはその言葉にハッとした。

「また来るぜ!」「またな!」

そう言って、二人は帰って行った。

ススムは自分のモヤモヤが晴れる気がした。皆が敬意を払ってくれるのがどうしても受け入れられなかったのだが、テュールとウルの言葉で、知らないことを教え合っていると思えるようになった。


それからも、色々な相談を受け、馬に乗れるようになったススムはその場所を見に行ったり、ルールを考えたりと、忙しい日々を送った。







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