倒れたススムと特別試合の提案

翌朝起きてこないススムを心配してダグはススムの部屋へ向かった。

ノックするが返事が無い。ダグは部屋に入り寝ているススムの額に手を当てると熱い。ダグは慌ててブラギを呼びに行った。ブラギは侍医を呼んだ。

侍医はススムを診て「疲れが出たんでしょう、水分を取りながらゆっくりを休めば治りますよ」と言った。


ススムが熱を出したことは、軍にも王宮にも伝えられた。テュールとウルは大会への準備をススム無しで行うことにし、王女は見舞いの品を送った。


ススムは夢を見ていた。同級生からいじめられ、親から叱責される悪夢。そうじゃない!否定しようとすればするほど倍返しのように繰り返される。

「ススム、ススム」

ススムはうっすらと目を開けた。ダグが心配そうな顔でのぞき込んでいた。

「ずいぶんうなされていたけど大丈夫か?熱を出したんだ。水飲めるか?」

ススムは頷いた。ダグは水差して水を飲ませた。

「疲れが出たと侍医が言っていた。ゆっくり休め。熱が下がれば起きれるようになる」

「ありがとう」そう言うとススムはまた眠った。

数日後、ブラギが瓶を持って城から帰ってきた。

「これをススムに飲ませるようにと王女が」ススムに聖水を飲ませると嘘のように熱は引いた。

呼吸が楽になり、侍医は「数日すれば起き上がれるようになるでしょう」と言った。

2,3日するとススムは起きれるようになった。少しづつ食べれるようになり、体調も安定してきた。


ある日、テュールとウルが尋ねてきた。

「ススム具合はどうだい」「これでも行きたいのを我慢していたんだぜ」

二人の言葉にススムは苦笑いするしかなかった。

「闘技場での大会の準備は着々と進んでいる。王が王女の提案を聞き入れ大会の許可が出た。民への公示も行われた。軍一丸となって準備に取り掛かっている。」

「それでよ、優勝者を決めるだけじゃ面白くない。俺が出れないんだよ。格が違い過ぎるって。どうにかならないか?」

「格闘と、剣ですか?」

「そうだ!」

「それなら優勝者と特別試合をしたらどうですか?勝敗抜きで。そうすれば暴れられるでしょう?」

「そりやーいい!!それなら俺も参加できるってわけだ、テュールお前も弓の方でやれ!」

「そうだな、競技の優勝者と特別試合か。うん、それいいなやろう」

「ありがとな、これで大会が盛り上がる。来てよかった」

「準備の方はこちらでやるから、養生して大会は見に来てくれよ」

「約束だぞ!」

「はい、必ず行きます」

その答えに満足した二人は帰って行った。


ススムは二人の心遣いが嬉しかった。自分を元気づけようと来てくれたに違いない。

この国の人々はとても暖かい。来てよかった。ススムは心底そう思った。


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