9

翌日




慣れないお酒を沢山呑んだからか頭が痛い。

女友達と呑むことはあるけど、男の人だからペースも早くて私にもお酒をすすめてくるしで、あんなに呑んだのは初めてだった。




人事部の部屋に挨拶をしてから鞄を置いた後、珈琲店へ。

店内の掃除を隅々までしていく。




何度か頭が痛くなり頭をおさえていると・・・




「二日酔いかよ。」




そんな言葉を掛けられ振り向くと、天野さんが笑いながら立っていた。




「二日酔い・・・そうかもしれません。」




「初めて?」




「はい・・・。」




「社内の男と飲みに行ったんだろ?」




そんな情報までもう知っていて、驚いて天野さんを見る。




「そいつらから朝言われた。

男と飲みに行くの初めてだったんだろ?」




「はい・・・。」




「それで二日酔いも初めてか。」




「はい・・・。」




私が答えると天野さんが私の胸に何かを優しく押し付けてきた。

見てみると何かの箱で・・・。




「市販薬。

それ飲んでから仕事しろ!」




「ありがとうございます・・・。」




「男と飲みに行く勉強も二日酔いの勉強もした方がいいけどな、他の男とやる勉強はすんなよ?」




天野さんが真面目な顔で私にそんなことを言ってきた。




「お前の処女を貰うのは俺だから、他の男とやるなよ?」




「あの、でも・・・私は・・・」




「お前は処女だろ!!!」




天野さんが怖いくらい真剣な顔でそう言って・・・私は天野さんの顔を見ながらいつもより多めに瞬きをした。




そんな私に天野さんが満足そうな顔で笑い・・・




「お前の処女は貰ってやるから、待ってろ。」




最後にそれだけ言って天野さんは珈琲店を出ていった。




私にそう言って・・・。




処女ではない私にそう言って・・・。




勿論、もう処女ではないのであげられるモノはないのに・・・。




天野さんは、処女ではない私から何を貰うつもりなのか・・・。




処女しか相手にしない天野さんからしてみると、私はそんなに処女の雰囲気なのか・・・。




私の処女は確かに貰われたのを私は鮮明に思い出せる。

私の処女は貰われた・・・。

貰われたはずなのに、私が処女のように天野さんには見えるらしい・・・。




入社をしてからしばらくして、こんな話をされるようになった。

でも半年経った今も天野さんは特に何かをしてくるわけではなくて・・・。




からかわれているのだと思っている。

私のこういう反応が処女みたいで面白いから、からかわれているのだと思う・・・。




憧れている天野さんからこういうからかいをされるのは結構悲しくて。

瞬きをしなくても今日は涙が流れてしまった・・・。

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