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キーボードを打つのに時間が掛かってしまい、今日も定時よりも随分と遅くなってから人事部の部屋を出た。




エレベーターを待っていると・・・

隣に2人の男性社員が立ち「笠原さんお疲れ様!」と声を掛けてくれたので、返事をしながら小さくお辞儀をした。




「珈琲店にいる時と雰囲気違うよね?

男苦手なの?」




「苦手というか・・・。

あんまり関わってこなかったので・・・。」




「女子校出身?」




「いえ、公立の共学でしたけど・・・。

話し掛けられることも話し掛けることもありませんでしたので・・・。」




「なんで!?普通に可愛いのに!!」




そんなお世辞まで言ってくれ、苦笑いをしながら男性社員2人を少し見ながら瞬きをした。




それに男性社員が明らかに口元を緩ませながら私を見下ろしてくる。




「たまにするその顔可愛いよね!!

上目遣いで見詰めてきて瞬きしてくる顔!!」




「・・・ごめんなさい、癖で。」




「全然良いよ!!凄い可愛い!!!」




「もう30歳なので可愛い年齢でもないので・・・。」




「・・・30だっけ!?

若く見られるって言われない!?」




エレベーターがやっときて苦笑いをしながら乗り込み、1階のボタンを押して“開”ボタンを押したタイミングで男性社員2人も乗り込んだ。




エレベーターの扉が閉まって少し静かになったと思ったら・・・




「笠原さん、処女じゃないんだって?」




男性社員からこんな発言が出てきた・・・。




それにどうリアクションをしていいのか分からないくらい、私は男の人と関わることがなさすぎて・・・。




小学校の頃から放課後は自営業のお父さんの店の店番をしていたし、学校生活では女の子の友達はいたけどそこに男子はいなくて。

特に男子とは話すことがないまま高校を卒業して、そのまま扶養範囲内でバイトをしていたチェーン店のカフェでバイトを続けていた。




仕事と思えば男性の社員やスタッフ、お客様とも勿論話せる。

でも、仕事とは違う場面になるとそれが難しくて。

これまでそういう場面が少な過ぎてどう対応すればいいのかが全然分からない。




私が無言でいるからそれが答えだと判断してくれたようで、男性社員から少し笑い声が聞こえてきた。




「天野に言った方がいいよ!

アイツ笠原さんが処女だと思ってるからちょっかい出して来てるだろ、絶対。」




「私が天野さんの採用だからだとは思いますけど・・・。」




「天野の採用増えてきてるけど、他の子にはそんなことしてないって!」




「私がキーボードもまともに打てないので心配されているとは思います・・・。」




「まあ、面倒見が良い時もあるからな。

でもあの感じは絶対にちょっかい出してる雰囲気だって!」




エレベーターの扉が開き1階に着いたのを確認し、“開”ボタンを押すと男性社員2人が先に出た。

それにホッとしていたら男性社員2人は私のことを待っていて・・・。

それに驚いていると2人が楽しそうな笑顔で私を見てきた。




「これから飲みに行かない?」




人生で初めて、男性からこんな風に誘われた・・・。




目の前に立つ男性社員2人を見上げ瞬きをする。

それからゆっくりと首を縦に振った。

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