第25話 コボルトと狼

 宿屋の眠る猫亭に戻り、珍しく魚の夕食を食べてる。

 と、その途中で冒険者が急いで入ってきて言った。


「コボルトに率いられた狼の襲撃だ!戦える者は一度、冒険者ギルドに来てくれ!

俺は他の宿屋にも伝えに行く!」


 俺は急いで戦える支度をすると、冒険者ギルドに行った。

 冒険者ギルドでは結構な人数が集まっていた。眠る猫亭は冒険者が比較的少ないから知らせるのが遅れたのだろう。

 集められた冒険者は参加する者は名簿に名前を書いてくれと言われて名前の記入待ちの行列が出来ていた。

 記入が終わった者から順に西門にある牧場が襲われているので助けに行く様言われている。その際、リーダーは級が高い者がする事と言われている。

 俺も行列に並び、並んでいる間に小マップでコボルト・狼と検索してコボルトと狼の場所を把握する。幸いデビットの牧場の方には未だ行っていない様だった。俺の番が来たので番号と名前を記入する。

 そして、俺も西門に向かう。

 西門ではいつもの門番達がおらず、一人だけ警護の兵士がいるのみで残りは牧場の防衛に行ったらしい。

 俺は名前を言い、到着した事を知らせる。

パーティーの経験はと聞かれたので無いと答えるとじゃぁ、遊撃で参加して自由に敵を葬ってくれとの事だったのでそうする事にした。

 小マップで見た1番牧場に入ってきてる群れに向かって行く。


「わう!わわわん!ぎゃう!ぎゃわん(獲物を殺したらワーカーに運ばせるから犬ども殺した奴らは遠吠えを上げろ!)」

「わうーん!わん!わん!(リーダーの言う通りにしろ)」

「きゃん!わわん!わう~ん!わわわん(この獲物はもうすぐ死にそうだぜ、誰か手伝ってくれ!)」


 なんでコボルトや狼の言葉が分かるんだと思った時に思い出した。”全ての言語が分かる言語理解”の所為だ!

 何というか、”全ての言語が分かる言語理解”が欲しいと言わなきゃ良かった。

 コボルトや狼の言葉まで分かるというのは精神的に堪えるな。

 俺はとりあえずもうすぐ死にそうになっているという獲物を助けるべくそちらに向かうと羊が殺されそうになっていた。

 俺は羊の喉元を噛んでいる狼を剣で一撃で殺すと手当てした。

 無詠唱じゃ無くて詠唱で魔法を使ったから回復魔法と分かるだろう。


「おい!俺はシモンだ!サンダーの魔法をかけるから気を付けてくれ!」


 俺は大声で叫び小マップを使って人と戦っていないコボルトと狼を標的にしてサンダーの魔法を使った。ズドンという大きな音と光と共に目の前の約半数の狼とコボルトが死んだ。

 コボルトも狼も他の冒険者も呆然としている。


「おい!呆けてないで目の前の敵を倒せよ!!」


 そう俺が大声をかけると冒険者が我に返り、戦い出す。

 一方のコボルトと狼はと言うと、腰が引けていた。


「きゃう~ん!きゃん!きゃん!(ヤバい!者ども引き上げだ!)」

「キャン!キャウン!キャン!(死にたくないよ~、おかあちゃ~ん)」

「ぎゃうん!キャン!ク~ン!(逃げろ!逃げなきゃ死ぬぞ!)」


 この戦場でコボルトと狼が逃げていく。それに気がついたのか、他の戦場でも逃げていくコボルトや狼が多くなり、結局、全面的に撤退していった。

 その後に暫く様子を見たが戻ってこない様なので冒険者ギルドへ行き、いったん解散となる。今回の緊急依頼の報酬等は明日以降だ。


 もう仕舞ってるとは思うが一応、宿屋の眠る猫亭に行ってみると女将さんが入り口を開けて待っていてくれた。

未だ、何人か帰って来ていないのでこのまま待っているとの事だ。

 俺は感謝の言葉を言い、部屋に戻って自分にクリーンをかけて寝た。



 翌日、冒険者ギルドに行ってみると冒険者でいっぱいだった。

 ギルド員が昨日の冒険者個人の各戦果を確認して調べているのだ。

 俺の所にも戦果の確認に来た。


「昨日、緊急依頼に参加されていましたか?」

「ああ。していた」

「お名前を伺っても?」

「シモン」

「ああ!もしかして昨日、サンダーの魔法で半数の敵を倒したシモンさんですか!?」

「半数は言い過ぎだな。多分三分の一くらいだと思う」

「そうですか!戦果を多く語る人は居ても少なく語る人はあなたが初めてですよ!」

「そう?」

「どちらにせよ、昨日の戦功第1位なので覚えておいて下さい」

「了解したよ」

「それはそうと、今日、昨日の緊急依頼の報酬を貰えるのはコボルトの巣を駆除依頼を受けてない人だけだよ。受けてる人は時間が無いから後でコボルトの巣を駆除と一緒に精算されるよ!」

「て事は、今日これからコボルトの巣を駆除するんだ」

「そう言う事!」


 そうこうしている間にコボルトの巣の駆除依頼を受けてない人の精算が終わったのかギルド長が現れて、これから駆除に行くという。

 参加人数はそれほど多くは無い。報酬が渋い所為だ。

 参加者の中で一番高い級でも金級が一番高く、しかも一組だけだ。

 作戦は金級パーティーの”金の鐘”が正面を隠れながら巣に近づき、指定の時間までに他のパーティーが巣の周りを囲み取り逃がさないと同時にもうすでに逃げ出したコボルトがいるならそれの追跡・駆除に当たるという事になっている。

 包囲が完了したら鳥の鳴き声に似た笛を吹く事になっている。

 何故か俺は、巣の裏口・・・・・・2番目に重要な箇所からの襲撃を頼まれた。

 何でも昨日の戦功1位が効いてるらしい。

 コボルトの鼻の良さを舐めずに皆に消臭の魔法ディオドライズを森の手前でかけてから行動するらしい。

 各パーティーの配置の振り分けが終わり、出発する事になった。

 


 西の森に着き、消臭の魔法ディオドライズをかけて貰い斥候に案内されて巣の裏口近くに隠れる。

 暫く待っていると甲高い鳥の鳴き声の様な音が聞こえてきたので此方も鳴らす。

 四方全てから鳴ったので包囲は完了している。小マップを出しコボルト・狼で配置を調べると既に逃げ出したコボルト達がいる事が分かった。

 これは他の冒険者の仲間に託すしか無いかな?

 正面から空に閃光が走ったので襲撃の合図だと思い、裏口から襲撃をかける。

 気配を消し足音を立てずに巣に近づいたので未だ誰も気付いていない。

 正面に杖を持ったコボルトの背中が2匹あったので首を切り飛ばす。

 コボルトマジシャンだろう。一応、大声を上げてコボルトマジシャンを2匹討ち取った事を知らせておく。

 まぁ、斥候役が見ているので大丈夫だとは思うが・・・・・・。

 ついでに数が少なく既に逃げた集団がいるだろうとも付け加えておく。

 コボルトの巣・・・・・・集落には雌や子供の数が少なかった。多分、あの逃げているコボルトの集団が雌や子供なんだろう。

 その少ない雌と子供を殺すんだが、これが精神に来る。なまじ相手の言葉が分かる分、”弟の命は助けて”だの”せめて子供だけでも”と言った言葉が突き刺さるのだ。

 まぁ、それで見逃して報復でもされたら事なので無理矢理心を奮い立たせて殺っている・・・・・・。

 コボルトよりも力を入れているのが狼の駆除である。家の中には余りいないのでサンダーでズドンで完了の簡単なお仕事である。

 何故コボルトもサンダーで殺らないかというと、火事が出る可能性が高い為である。

 その結果、隠れているコボルトを探し出して殺す羽目になっているのだが・・・・・・。

 あらかた片づいた20分後になってようやく”金の鐘”がコボルトリーダーを倒したぞと言う声が聞こえてきた。

 襲撃当初から戦闘になっていたのに遅いんだよ!

 お陰でこっちはガラスのメンタルが砕けそうな程傷ついたわ!

 あ~、今日から数日は睡眠薬飲まないと眠れんな、こりゃ。

 そうこうしている間に巣の掃討は終わり、数えてみれば三分の二しかいなかった。残りは前もって逃げ出していた訳だが、仲間の冒険者が間に合ったのか心配だ。


 結局、逃げたコボルトに仲間の冒険者は追いついたが、雄のコボルトと狼の連携で倒すのに時間が掛かり、雌や子供には逃げられたそうだ。

 



―――――――――――――――――――――――――――――


もし、出来ましたら目次の下の方にある評価の方をよろしくお願いします。

何かお気に召さないと言うかたは★☆☆を、少しでも気になるという方や普通だなと言うかたは★★☆を。何か気に入ったや続きが気になるという方は★★★を付けて下されば幸いです。

♡で応援するでも良いのでよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る