第15話 魔道馬車

 商業ギルドに行き、職人街に空いてる倉庫は無いか聞くと何件かあるとの事だったので間取りを見せて貰う。その中で賃料が安いのから見ていくと職人街の端にある倉庫が2番目に安い上に大きくて賃料も1ヶ月半金貨1枚との事だが7日間あれば事は済むので値段の交渉をする。交渉の結果7日間で銀貨9枚に負けて貰えたので、ここを見てから契約したい旨を伝える。

 ついでに魔道馬車を作っている工房が無いかを訪ねる。すると1件だけあるとの事なので紹介料を払い、紹介がてらどちらも案内して貰う。

 職人街の外側の方に駅馬車を使って乗っていく。ギルド員の乗車賃を出すのは俺だ。

 無事到着してギルド員について倉庫に行く。どうやらギルドが所有し管理している倉庫らしく、大家はギルドになるらしい。

 倉庫を見せて貰うと年月は経っている物の雨漏りは無いが古い建物なのと職人街の端にあるので賃料が安いらしい。

 見た所、問題はなさそうなので7日間の契約をする事にした。

 契約書にサインをして銀貨9枚を渡す。もちろん、契約書の写しと領収書も貰った。

 領収書はもちろん今までも貰っている。


 魔道馬車を作れる工房は倉庫から歩いて5分の所にあった。

 ギルド職員が大声を出して店主を呼ぶ。


「ヴィンチさ~ん!いらっしゃいませんか!!」

「五月蠅いね君は!私ならここだよ!」


そう痩身の男性が言っていた。少し神経質そうな顔をしていた。

ギルド職員は紹介状がてら来た事と俺が魔道馬車を欲しがっている事を伝えた。


「魔道馬車かい?それなら領軍が輸送用に注文したが、土台の完成後にキャンセルしてきた作りかけの魔道馬車ならあるが軍用なので普通の馬車よりも大きいよ・・・・・・欲しいのなら場所も取るのとギルドの紹介でもあるしね。それに領軍からキャンセル料も貰ったしでそれなりに安くしとくが、それでも結構な値がするよ?

 大体負けても金貨50枚はするね。最初からなら大金貨から相談だよ。制作期間も素材を集めるのに時間がかかるから半年は見て欲しいね」

「一旦、その土台を見せて頂けませんか?」

「こちらだよ」


そう言って奥の方に俺達を連れて行く。

行ってみればそこには馬車の土台と言うよりも自動車の土台と言っても良い様な物があった。

 よく見れば自動車にあるサスペンションのような物もあり、ブレーキもディスクブレーキだろ!と言う様なものがあった。

 更に詳細に見るとベアリングの様な物迄あった。

 現代に負けてないぞ!ファンタジー!!

 これは買わねばと思い値段の交渉をする。

「代金ですが、材料持ち込みだとどうなります?」

「その場合だと多めに見て金貨20枚で抑えられるね。でも、トレント材や他の希少な素材等があるから集めるだけでも大変だよ?」

「大丈夫です。それと、浮球と重球を使用したいのと魔法陣を設置する場合は俺が設置したいのでよろしくお願いします」


 浮球や重球というのは空鯨から捕れる球で、浮球はそのまま浮いていく性質を持っているので重しを付けないと何処までも浮いていってしまう。重球の方は魔力を流すと重くなり流す量によって重さをコントロールできる。


「浮球と重球を用意出来るのですか!それなら車体重量を軽く出来ます!その代わり浮球と重玉の装置が要りますね。知り合いの腕の良い魔道具技師に浮球と重球の装置を頼みましょう。魔法陣は大丈夫ですか?最後に設置して上から板を敷き詰めて隠すとしても大仕事だよ?」

「はい、板を敷き詰める事以外は任せてください。あ!幌馬車にしたいのですが、幌はスパイダーシルクでお願いします。前後の仕切りもスパイダーシルクでお願いします」

「浮球にスパイダーシルクですか!これは材料費の方が高くつきそうですが大丈夫ですか?」

「何とか大丈夫です。それで、材料を此方で明日にでも用意できた場合の工期はどうなりますか?」

「材料さえ揃っていれば1ヶ月で作ってみせるよ!」


 俺は背嚢から紙とペンを出して完成予想図を描き込んだ。絵は最初は下手だったが、こっちに来てから練習して何とか美味く描ける様になったんだ!

 描いた完成予想図を見せてヴィンチさんに説明する。


「御者台はこの絵の様にスパイダーシルクのひさしが折りたたんでいて雨の時は前に出せる様にして欲しいのだけれどもできますか?」

「完成予想図があれば分かりやすいね!もちろん出来るとも」

「それでは材料はここから5分程にある職人街の端にあるギルドが管理している倉庫に明日の朝の鐘が6つ鳴る頃迄に置いておきますので材料のリストと数量を貰えますか?」

「朝の鐘6つ時とは早いね。まぁ、何とか明日の朝5つ時には起きてスタッフの皆がいる様にしようじゃ無いか。リストを書くから少し待っていてくれたまえ」


 そういってヴィンチ氏はリストを書いて渡してきた。


「これが材料の名前と数量になるよ。これを明日の朝の鐘6つ時に倉庫を開けてくれれば、うちのスタッフが取りに行くよ」

「ありがとうございます。それでは見届け人にギルドを挟んで契約書を作ってもらいますのでサインをお願いします」

 

ギルド員は行き成り契約書の話になり驚いた様だが、契約書を作ると言う事で契約用紙は何にするのか聞いてきた。

 普通の契約用紙と強制力のある契約用魔紙だ。普通の契約用紙は銀貨1枚だが、契約用魔紙は銀貨10枚もする。

 金額が大きいので銀貨10枚支払い契約用魔紙で契約する。


 此方は最大金貨20枚で支払い材料は此方で用意する事などが書かれ、ヴィンチさんの項目には材料が俺が全て用意して設計の変更等が無ければ1ヶ月後に最大で金貨20枚と引き換えに魔道馬車を引き渡す事。

 金貨の支払いが出来ない場合や金貨を支払ったが引き渡しされない場合等は強制的に魔紙の効力が発揮され此方が賠償金として代金の金貨20枚に加えてさらに金貨20枚と材料費をヴィンチ氏が支払う事奴隷に落ちても遂行する事になるのと引き渡しが遅れる場合には損害金として1日に金貨1枚が支払いから除外される旨が書かれていた。

 本契約書と控えの2枚が書かれ、それぞれに俺とヴィンチ氏がサインをし、俺が本契約書を商業ギルドが控えを持つ事になった。


 ヴィンチ氏とギルド員と別れ、鍵のかかった借りている倉庫に行き、ヴィンチ氏から貰った材料のリストにある物をインベントリでコピーして出していく。浮球と重球は両方が箱の中に入った600kgの重さの釣り合っている状態の専用箱に入れられているのがあったのでそれを出す。

 二度合っているか確認をして倉庫から商業地区にテレポートで移動する。


 小マップを出してこの町で一番センスが良くて腕の良い高級服屋で検索してみると比較的今居る場所から遠くなかったので行ってみる事にした。

 行ってみると高級な面構えをした店だった。中に入ると、すぐに店員が寄ってきて話しかけきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用でしょうか?」

「此方の店は町一番のセンスのある腕の良い店だと聞いてきたんだけど・・・・・・王侯貴族様にも会っても大丈夫な服装を一式見積もって欲しいんだ。それをデザイン違いで合計2着欲しい。後は普段着出来る様な服を長袖も含めて6着ほど欲しいな」

「結構な出費となりますが宜しいでしょうか?」


 小袋に金貨50枚を発生させて小袋の口を開けて見せる。


「この通り、お金ならありますので大丈夫だ!」

「失礼致しました。それでは生地からのお任せで宜しいでしょうか?」

「ええ。お願い致します」

「かしこまりました。それでは各種計測をするので此方にご一緒下さい」


俺は了承すると店員について行き、各種計測された後で生地を見せられ、デザインを見せられうんざりした。

 ただ、驚いたのが王侯貴族に会う服がとても派手で俺だと奇抜だと思える様な服が普通にお勧めされるので驚いたが、この店に来ている男性客を見ると納得するしか無かった。

 結局、全て店員のお勧め通りにしたが、高性能の適温維持と状態保存の付与魔法陣は全てに付けてもらう事にした。

 普段着は奇抜じゃ無かったので安心した。

 出来上がりが1ヶ月かかる所を交渉して金貨3枚多く払う事で2週間になった。

 合計金貨10枚になったので支払い、領収書を貰った。

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