第34回 一方そのころ、コロロ奮闘!!
「よーし!! この私についてこい!! このコロロ様が守ってやるぞ!!」
夜道、コロロが高らかに宣言しました。
私とユーナ、そしてコロロの三人で私の家の様子を見ることにしたのです。
父上様が亡くなり、私たちは現在シーナ姉上様の家で暮らしています。アオコさんもいないわけで、つまりも抜けの殻。最近は物騒ですから、変な人が住み着いていないか、確かめに行くのです。
「うぅ、リューナ、大丈夫かな〜」
ユーナが私の腕に抱きついて震えています。
「だ、誰かいても私たちで追い返そう!!」
「それもだけど、お、おばけとか……」
「おばけなんかいないよ」
昔から、ユーナはおばけが大嫌いなのです。
そんなもの存在しないのに。
コロロが大声で笑います。
夜なのに。
「なーはっは!! 安心しろユーナ。この最強美人品行方正天才カロー人、コロロ様がいるのだからな!!」
こういうとき、コロロのいつでも自信満々な性格は頼りになります。
それから大通りを歩きながら、街の様子を伺います。
普段ならまだ営業している飲み屋やいかがわしいお店が、閉まっていました。
執政官ポルシウスと主要な元老院がいなくなり、この街が物騒になったからです。
姉上様の代わりに帰国したアンリさんのおかげで、荒くれた無法者たちはある程度逮捕されたのですが、それ以前なんか、女の子だけで出歩くことすらできませんでした。
身ぐるみを剥がされ、最悪どこかの悪い女の人に売られてしまうから。
家に着くと、
「灯りがついてる……」
「え!? おばけ?」
「おばけは灯りつけないよ」
誰かいました。
そそっと庭に侵入し、窓から中を覗いてみれば、いました。
ガラの悪そうな二人の男が、家のお酒を勝手に飲んでいました。
「退治しないと……。コロロ、本当に大丈夫?」
「任せろ!! 幼い頃からパパ上様に鍛えられているからな!! とりゃーーー!!!!」
あ、コロロが窓から飛び込んでしまいました。
「なんだこのガキ!!」
「我が家に伝わる最強拳法をくらえーー!!」
「おらっ!!」
「うぎゃーーー!!!!」
コロロが負けた!!
ど、どうしましょう。このまま家を乗っ取られるくらいなら、いっそ燃やしてしまいましょうか??
などと混乱の極みに陥っていると、
「お前たち、何をしている」
アンリさんが、後ろから現れたのです。
「まったく、しょうがないからアオコの家の様子を確かめてみれば」
呆れた顔で、アンリさんは同じく窓から家に入ると、不審者たちをボッコボコにしました。
秒でポコパンです。
さすが、シーナ姉上様が信頼している兵士。
「平気か、クロロスルの娘」
「うぅ〜、我が家の拳法が効かないとは、あいつらおばけなのか……」
そのワードにユーナがビビって腰を抜かしました。
「お家がおばけに乗っ取られたーーっ!!」
「いやユーナ、おばけじゃないし、いまアンリさんが倒してくれたでしょ」
アンリさんが縄で不審者たちを縛ります。
「家に誰かいないか不安になったのか。気持ちはわかるが、こんな危ない真似はもう止めるんだ」
「す、すみません」
「一応、私が毎日巡回しているし」
「そうなんですか?」
照れくさそうに、アンリさんが顔を背けます。
「ふん、アオコのためじゃないぞ。シーナ様の旧家だからだ」
それから中に入って、荒らされていないか確認しました。
酒が無くなっている程度で、どの部屋も大した被害はありません。
よかったです。
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帰り道、私たちだけでは心配だとアンリさんが家まで同行してくれることになりました。
その途中、市民の喧嘩に気づいたアンリさんが対処をしていると、
「コロロ様」
知らないおじさんが、コロロに話しかけてきたのです。
「あれ、お前……パパ上様の」
「お久しゅうございます」
「ケイミス!! てっきり戦地で亡くなったものと思っていたぞ!! 無事でよかった!!」
コロロが涙を流しながら抱きつきました。
きっと
「コロロ様、私も耳にしました。クロロスル様が亡くなり、どれほど苦労したことが」
「……」
家も財産も、コロロは失ってしまったのです。
元々クロロスルさんはいろんな人から恨みを買うタイプでしたから、その仕返しを受けてしまったのでしょう。
コロロは何も悪くないのに。
「ですが、我々はまだ終わってはいません。クロロスル様が果たせなかったことを、あなたが成し遂げるのです!! コロロ様!!」
「え?」
「この世の全てを、あなたの手に!!」
アンリさんが戻ってくると、いつの間にかケイミスさんは消えていました。
困惑しているコロロに、ユーナが話しかけます。
「大丈夫? コロロ」
「へ? うむ!! なんだかよくわからないが、私はいまの生活に満足しているし、気にしてないぞ!!」
「な、ならよかった」
「でも……」
コロロの表情が曇りました。
「いまの私を見たら、パパ上様はどう思うのかな」
数秒の沈黙が、私たちを包みます。
胸中に湧き上がる嫌な予感が、言葉をせき止めているのです。
まさかコロロ、クロロスルさんのような人になるんじゃ……。
いえ、きっとコロロなら大丈夫です。
だって品行方正最強カロー人、ですからね。
この話はここで終わり、私たちはシーナ姉上様の家に戻りました。
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