第22回 一方そのころ、リューナたち

※リューナ視点です。







「リューナ〜!! 来たよ〜〜」


 ちょうど一冊の本を読み終えた昼頃、ユーナが家に遊びにきました。

 家、といってもシーナ姉上様の家なのですけど。


 ドタドタと、私が使っている部屋まで足音が聞こえてきます。


「私もいるぞー!! リューナーー!!」


 コロロの声もします。

 部屋に入ってくるなり、勢いよく抱きついてきました。

 相変わらず、元気いっぱいなカップルです。


「わわっ、いらっしゃい、ユーナ、コロロ」


「遅くなってごめんね〜」


 今日は父上様のお墓に行く約束をしていたのです。

 父上様が暴漢に襲われ亡くなってから、もうすぐ二週間。

 毎日毎日涙が止まらなかったですけど、ユーナやコロロのおかげで、少しずつ乗り越えられるようになってきました。


 本当はユーナだって辛いのに、妹の私のために、明るく振る舞って。

 強くて優しい、大好きな姉です。


 コロロが机の上の本を見つけました。


「むむ、リューナ、今日も勉強していたな!! 偉いな!!」


「知識はあって困るものじゃないから」


「いいぞー。私はいつかパパ上様を継いで、この国の執政官になるから、リューナを私の専属秘書にしてやろう!!」


「え、えぇ……」


 ユーナが目を細めました。


「コロロが執政官になったらカロー滅んじゃうよー」


「なにをー!!」


「執政官には、私がなる!! リューナは私の秘書になるの!!」


「じゃあ執政官の座とリューナをかけて…………勝負だあああ!!!!」


 う、うるさいなあ……。

 二人のことは明るくて大好きですけど、どうしてこうも常にいつもずっと毎時毎時永続的に元気なのでしょう。

 この子たちと一緒に暮らしているクロロスルさん、気が休まらないでしょうね。


 ユーナとコロロがギャンギャン騒いでいると、ルルルンさんがナーサちゃんを抱えながらやってきました。


「ユーナちゃん、コロロちゃん、ナーサが泣いちゃうからちょ〜っと静かにしてもらえるかな?」


「「ご、ごめんなさい……」」


「そ、れ、と、次の執政官はナーサだから」


 まだ赤ちゃんなのに、気が早いです。


「だからリューナちゃんは、ナーサの秘書ちゃんね」


 さっきから疑問だったのですが、私が執政官になる選択肢はないんですね。

 べ、別に構わないんですけど……。


 ルルルンさんの提案に、ユーナがハッと手を叩きました。


「そうだ!! リューナさ、どうせナーサの秘書になるなら、いまのうちにナーサの教育係になったらいいじゃん。シーナ姉さまも喜ぶよ」


「わぁ、それはいいわね。リューナちゃん、どうかしら?」


 私が、ナーサに勉強を教える?

 責任重大で、とても恐れ多いです。


 もし間違った知識を教えてしまったらどうしましょう。

 ナーサがグレたら、私の責任になるのでしょうか。


 無理です!! むむむむ無理です!!!!


 首を横に振っているにも関わらず、ルルルンさんは笑顔で続けます。


「リューナちゃんならシーナも安心でしょうし、彼女も政治に専念できるかもしれないわねぇ。リューナちゃん、シーナのためにも、ぜひお願いしたいわ」


 うっ、確かに、私が知識を蓄えているのは、シーナ姉上様のため。

 ならば、姉上様の娘であるナーサの教育係になることは、必然なのかもしれません。


「が、がんばります」


 ひょんなことから、赤ちゃんの教育係になってしまいました。

 ナーサがどんな女の子に育つのか、私にかかっているわけです。

 大丈夫かな……。


「わっはっは!! パパ上様の娘vsシーナの娘になるわけだな!!」


 うーん、コロロ、さすがに意味がわからない。

 そもそも、シーナ姉上様とクロロスルさんは執政官じゃなくなっているのだから、継げるかどうかわからないし、世襲制でもないのです。

 今回の戦で、無事に帰ってくる保証もありません。


 あぁ、変に冷めきっているところが、私の短所なんでしょうね。

 ライナ姉上様のようには、まだなれないみたいです。

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