第18回 不死身の軍団!!

「ふん、せいぜい俺の邪魔だけはするなよ、ガキども」


 翌日、クロロスルも街に到着した。

 私たちの配属を拒否ってくれたらよかったのに、てやんでい。


 そんでもってさらに翌日、クロロスル軍は北東へと出兵した。

 ベキリア軍を偵察した結果、シーナ軍が正面から、クロロスル軍が横から攻め込む作戦でいくらしい。


「足手まといになるなよ、アオコ」


「あんたこそ」


 シーナは私とアンリを結婚させたがっているが、そのつもりは毛頭ない。

 アンリだってそうだ。

 そもそも、私は人生をライナに捧げているのだ。

 もう彼女はいないけど、あの子への忠誠心は変わらない。

 他の女を愛するような不義理は犯さない。


 やがて川にぶつかり、そこから上流を目指して川沿いを歩く。

 いまごろシーナはどうしているのか。もう敵と交戦しているのか。


「おいアオコ」


 アンリが呼んだ。


「なにか……来る……」


 空が暗くなる。

 違う。覆っているのだ。巨大な怪鳥が、日光を遮っている。


「え、なに?」


 地響きが聞こえる。

 地が揺れる。

 ゾウよりも大きなカバのような怪物や、一つ目の巨人、毛深い四足獣の群れが迫ってきた。


「ま、魔獣?」


「わかりやすいほどの殺気だ」


 魔獣たちの突然の奇襲に、兵士たちは簡単に吹き飛ばされていく。


「まだ魔獣軍団が残っていたの?」


「違うな。あれは滅多に群れない魔獣ばかりだ。ゴブリン如きには従わない」


「じゃあなんで?」


「知らん、とにかく戦うぞ!!」


 同時に剣を抜く。

 とりあえずスローを発動して魔獣たちの足を切ってみる。

 が、浅い。浅すぎる。相手が大きすぎてまったくダメージになっていない。


 スローが解除されると、背後にいた巨人に蹴り飛ばされた。

 痛い。意識が飛ぶところだった。呼吸ができない。


 これじゃあクロロスル軍は崩壊……するかと思ったけど、


「慌てるな。立て直せ!!」


 クロロスルの兵士たちは誰も死んでいなかった。

 あれだけ襲われたのに、致命傷を負っていた兵士もピンピンしている。

 私もだ。気づけば痛みが消えている。


 これは、クロロスルのスキル?

 こいつのスキルは自分を回復させるものだと推測していたけど、違う。周囲の仲間すら癒やすんだ。


 そうか、ようやく理解できた。

 私が召喚されたばかりのころ、クロロスル軍は凄い速さでカローの首都に帰っていた。

 ロクに休んでいなかったんだ。この人のスキルで体力を回復させて、ひたすら歩き続けたからあんなに速く到着したんだ。


「ぼーっとするな、アオコ」


「う、うん!!」


 いくら相手が巨大でも、こっちは不死身の軍団。

 負けるわけがない。


 正直、クロロスル軍の兵士たちは弱い。

 私でもスキル無しで倒せそうなほど、身のこなしも力も劣っている。

 きっとクロロスルのスキルに甘えているからだ。

 それでも、決して敗北することがないから、厄介なのだ。


「ふん、我が軍は不滅!!」


 一体一体、魔獣たちを倒していく。

 すると敗色濃厚と感じたのか、魔獣たちは潰走していった。

 あいつらは、どうして私たちに攻撃してきたのだろう。


「おそらく、魔獣を操るスキル持ちがいたな」


「そうなの? アンリ」


「怪鳥の背に人がいた気がした。となると、問題は何故私たちの居場所がバレたか、だが。敵側のスキルの可能性が高いな」


 ベキリア人、本当に強敵みたいだ。

 しかしクロロスルがいれば負けはない。まさかこんなに頼りになるやつだったなんて。


「クロロスル殿!!」


 兵士が彼に駆け寄る。

 目を凝らせば、クロロスルは苦しそうに跪いていた。


「大丈夫ですか!?」


「へ、平気だ。少し休めば歩ける」


 どうしたんだろう。

 私の疑問に答えるように、アンリが呟いた。


「お前も油断するなよ」


「え?」


「クロロスルのスキル、代償があるようだ。範囲と効果に比例して、自分が苦しむらしい」


 ……そう、物事はすべて都合よくいかないか。

 彼のおかげ、私たちは元気だ。もう少しすれば再出発できるだろう。

 シーナ、無事でいるといいけど。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


☆あとがき☆


ここから長い戦争編がはじまります。

アオコが国に帰るまで、二〇話以上かかるかな〜。

度々カローの様子も描くので、ユーナ、リューナ、コロロちゃんたちも大活躍しますっ!!


お楽しみに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る