第18話
私は数日経ってから、セシルに今後の事を話した。
まず、私達の仲を陛下やセシルの母君などに認知してもらわないといけない。けど、セシルは話を聞いた途端に黙って考え込んでしまう。
「……あの、セシル?」
「ルイゼ、本当に陛下に言ってしまうのですか?」
「それは、言わないといけないじゃない」
私が咄嗟に答えると、セシルは眉を潜めた。
「……私は今のままでも、構わないと思っています。わざわざ、事を荒立てなくてもいいのでは?」
「そうだけど」
「それに、私が女装をしている件は極秘事項です。陛下が簡単に許可をくださるとは思えません」
やはり、無駄足だったのだろうか。私は本当にセシルとの仲を認めてもらいたいのに。
「ルイゼ、私達はまだ学園に入って一年も経っていないんです。時期尚早だとは思いませんか」
「……確かにそれは言えているわ」
「なら、せめて後一年は待ちましょう。二学年になったら、私から陛下に話してみます。ルイゼは待っていてください」
私は渋々頷いた。まあ、セシルの言葉通りではある。彼が女装をしているのは、極秘事項だ。何せ、陛下直々の命ではあるのだし。仕方ないと思うしかなかった。
セシルとその後はとりとめのない話をした。
翌日、ソアレ侯爵邸から普段通りに学園に通学する。
「おはよう、ルイゼ」
「おはよう、セイラ」
お互いに挨拶を交わす。姉は既に婚約者のロバートと一緒に教室に行っている。
「さ、行きましょ。セイラ」
「うん」
女装をしている際は、セイラもといセシルも敬語なしだ。普通に口をきいてくれる。け
ど、セシルに戻ると何故か敬語なのだが。私の前では敢えてそうしているのかもしれない。モヤモヤとした気持ちが頭をもたげる。
「どうかした、ルイゼ?」
「なんでもないわ」
「なら、いいのだけど」
セシルが怪訝な表情をした。私は誤魔化すために、笑う。けど、やはりセシルの表情は晴れない。
「……後で話をしましょう、いいですね?」
「わかった」
小声で言われて頷く。セシルは苦笑いしながら、私に言った。
「ルイゼ、もう授業が始まるわ。行きましょう」
「わかったわ」
頷いて私は、セシルと共に教室に入る。授業を受けるための準備をするのだった。
お昼になり、私はセシルと二人で中庭にいた。膝の上には彼が作ってきてくれたお弁当がある。もちろん、セシルの分もあった。
「今日は、ミートボールがあるわね」
「うん、頑張って作ってみたの」
「美味しそう」
私はそう言って、フォークで突き刺す。口に運んだら、なかなかに美味しくて呻ってしまう。
「うーん、美味しい!」
「褒めても何にも出ないわよ」
「それでも、言ってしまうわ!」
私はその後も彼が作った料理を堪能した。本当に、セシルの料理は絶品だから、仕方がない。それくらいには私も見習いたかった。
お昼休みも終わり、午後の授業を受けた。食事を終えて間無しだから、ちょっと眠気はあるが。今は五時限目だ。魔法学についての座学をやっていた。
「……このフローレンス王国には、昔から魔法がありました。そして、魔法には五大元素があります」
そう、魔法学担当のイザベル先生が話す。イザベル先生はまだ二十代と若いが、なかなかに魔法学についての造詣が深い。私はいつも、この先生の授業は楽しみにしていた。
「五大元素というのは、風、木、火、水、土になりますね。自然を構成する重要な元素にもなりますが。では、皆さん。教科書の十ページを開いてください」
先生の指示に生徒達が応じて、教科書を皆が開く。パラパラと紙を捲る音がそこかしこで聞こえた。
「十ページには、こうありますね。「五大元素は人や自然の万物に宿る」と。これは皆さんの体にも五大元素の内の一つは必ず、宿っているという事です」
成程と私は無言で頷く。やはり、イザベル先生の話は簡潔でわかりやすいわ。目も覚めてきた。その後も授業を受けたのだった。
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