第7話
私は自室に入ると、自力で結い上げていた髪を解いた。
ツェリが衣装部屋に行き、部屋着のワンピースを持って来てくれる。制服を手間取りながらも脱いだ。ジャケットを脱ぎ、ジャンパースカートも同様にする。リボンを解き、ブラウスも脱いでしまう。
ワンピースを受け取り、自力で着てみるが。背中の方にあるファスナーが上手く上げられない。ツェリが見かねて、手伝ってくれた。
「……ありがとう、助かったわ」
「お嬢様には、まだ難しかったかもしれませんね。少しずつ慣れていきましょう」
私は頷いた。ツェリはファスナーを上げてしまうと、ポンと軽く肩を叩く。本来はダメなのだが、私は許容範囲だ。むしろ、よそよそしくされたら精神的に参ってしまうだろう。
「では、昼食をもらってきますね。お嬢様はゆっくり休んでいてください」
「わかったわ」
再び、頷くとツェリは部屋を出ていく。私はソファーに腰掛けた。ふうと大きく息をついた。しばらくは休んだのだった。
ツェリが昼食を持ってきてくれる。白パンにミネストローネ、ブロッコリーのサラダの三品だ。
どれも、あっさり系で食べやすい。ミネストローネには鶏肉が細かく刻んで入れてあり、なかなかに美味しいのだが。料理長が気を使ってくれているのがわかる。どれも気がついたら、完食していた。ツェリは食べ終わったのに気がついたらしい。無言で食器を片付けて、再び厨房に向かう。私は他にいたチェリーやテレサに声をかけた。
「ちょっと、早いけど。湯浴みを軽くしたいわ」
「わかりました、準備をしてきますね」
チェリーが頷き、テレサと一緒に浴室へと行く。私は待ったのだった。
しばらくして、入浴の準備ができたらしい。私はチェリー達に付いて行った。湯浴みを軽く済ませて、夜着のネグリジェに着替える。
「お嬢様、今日はお疲れのようですね」
「うん、珍しく緊張したわ。殿下とお話をしたしね」
「ま、もしかして。王太子殿下ですか?」
「そうよ」
「だったら、緊張するのもわかります。ゆっくりとお休みください」
チェリーが言ってくれたので頷いた。寝室に向かったのだった。
ベッドに横になり、ブランケットや毛布を首元まで引き上げる。またも、ほうとため息をつく。今日はライカ殿下に話しかけられるし、ヒロインのセイラには突っかかられたし。気の抜けない半日だった。気疲れしていたのは確かだ。ゆるゆると眠気がやってくる。深い眠りについた。
目が覚めたら、夜半過ぎになっていたようだ。様子をチェリーとツェリが見に来てくれた。
「お嬢様、目が覚めましたか?」
「あ、チェリー。うん、ついさっきにね」
「そうでしたか、お腹は空いていませんか?」
「そうね、軽くは食べたいかも」
「わかりました、軽食に出来そうな物をもらってきます」
頷くと、チェリーが小走りで寝室を出ていく。ツェリはそのまま、待機するようだ。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「……そうね、ちょっと怠さがあるかしら」
「明日も学園に行かないといけませんし、薬湯を後で持ってきますね」
私はお礼を述べた。ツェリが部屋から出ていく。入れ替わるように、チェリーが入ってくる。
「お嬢様、サンドウィッチやスープをもらってきました。後、柑橘水もありますよ」
「あら、ありがとう。早速、食べるわね」
トレーをサイドテーブルに置いてくれた。確かにサンドウィッチやポタージュスープ、柑橘水が入った水差しやコップがある。チェリーはベッドにセットできるテーブルを運んできた。それをセットし、トレーをテーブルの上に再度置く。
カトラリーを取り、スープからいただくことにした。どうやら、じゃがいものポタージュらしい。
なかなかに程よい温かさで体から力が抜ける。サンドウィッチにも手を伸ばした。
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