第8話
私はツェリが調合して煎じてくれた薬湯を飲んだ。
疲労回復効果があるらしい。ツェリは飲みやすいようにと、ハッカ草や蜂蜜を入れたと言っていた。道理で甘さがあるし、後味すっきりだったわけね。納得しながら、飲みきった。
「お嬢様、もう休んでくださいね。夜中ですし」
「わかったわ」
ツェリに言われてベッドのブランケットの中に入る。毛布もだが。ゆるゆると眠気が来る。気がついたら、深い眠りについていた。
翌朝、六の刻くらいに目が覚める。今日も学園に行かないと。そう思いながら、起き上がる。ベッドから降りて窓のカーテンを自分で開けに行く。そうしていたら、ドアがノックされた。
「お嬢様、おはようございます。ツェリです」
「おはよう、今日も学園だったわね」
「はい、今から入りますね」
ツェリがドアを開けて中に入ってきた。チェリーとテレサも一緒だ。三人がテキパキと動く。
「お嬢様、まずは歯磨きなどを済ませてきてください」
「わかったわ」
頷くとチェリーが歯磨きセットなどを持たせてくれた。そのまま洗面所に行く。
水を蛇口から出しながら、陶器製のコップに水を入れた。歯ブラシに粉をつける。歯を磨いた。しばらくは無心でする。
一通りしたら水で口の中をゆすぐ。何度かして歯ブラシやコップもついでに洗う。それらを洗面台の端などに置くと最後にぬるま湯を出す。洗顔もそれで済ませた。タオルで水気を拭いたら、使ったそれらを持って寝室に戻る。
「……終わったわよ」
「では、使った道具類を。片付けてきますね」
「ええ」
チェリーに歯磨きセットを手渡す。テレサが今度は鏡台に来るように言う。鏡台の椅子に腰掛ける。テレサはまず、香油の小瓶を手に取った。蓋を開けて中身を手のひらに出した。トロリとした薄茶色の液体だ。甘い華やかな香りがする。それを体温で温めたら、両手のひらで揉み込み、髪に塗り込んでいく。
全体的に広げてから、ブラシで丹念に
「お嬢様、明日も同じ髪型でよろしいですか?」
「ええ、これの方がスッキリしていいわ」
「わかりました」
テレサは頷く。次にお化粧水などを塗り込み、薄くお化粧もした。必要ないのではと思ったが。テレサには何か考えがあるのだろうと思い、敢えて言わずにおいた。
制服に着替えて学園に持っていく筆記用具や教科書にノートなどを昨日に配布されたプリントを見ながら、用意していく。急いでしたら、食堂に行った。チェリーが食べやすいようにとサンドウィッチとスープ、柑橘水を用意してくれる。手早く食べてからエントランスホールに向かう。昨日と同じく、姉が待っているはずだ。
私がエントランスホールに着くと姉が既に待っていてくれた。が、意外な人物もいる。
何でか、昨日に紹介された姉の婚約者のロバートまでいたのだ。これにはただ、驚くしかない。
「……姉上、どうしてロバート先輩までいるんですか?」
「あ、ルイゼ。ごめん、ロバートがどうしてもあなたが心配だって言うから。だから、一緒に来たんだけど」
「そうなんですか」
私が言うと、ロバートは苦笑いした。
「ルイゼちゃん、今日はまだ学園が始まって二日目だしね。僕やロッテがいた方が心強いだろうと思ったんだ」
「はあ、それはどうも」
「さ、行こうか」
ロバートが言うと姉や私もエントランスホールを出た。
馬車には先にロバートが乗る。二番目に姉、最後に私と言った順番だが。ちなみに乗る際はロバートがエスコートしてくれた。
こうして、学園へと向かったのだった。
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