12.スキル検証①(二回目の召喚)
時刻は多分、十五時ぐらいになっているんじゃなかろうか。
大分、日も傾き、すっかり西日になり始めていた――て、あぁ、そうか。
俺は目を細めながら銅色になり始めていた太陽を見て、あることを思い出していた。
それはずばり、方位である。
すっかり失念していたけど、太陽の位置で方角わかるんだったな。
今、俺たちがいる砂浜は左右に細長い三日月型をしていて、更にその丁度、中央辺りの岩場に、俺たちはいるようだった。
なので、そこから考えてみるに、この岩場を基準とした方位はというと、海が南、森が北、左右に伸びる三日月状の白浜の左手が西、右手が東といった感じになっていた。
まぁ、だからどうだって話ではあるんだけど、今後、早い段階で自分たちが暮らすためのベースキャンプも作らないといけないし、それを拠点にして、島の全容も調べた方がいいだろうから、そのときに必ず必要となってくる地図作りや探検に、方位は重要となってくるはずだ。
だから、知っておいて損はない。
とりあえず、今いる場所はそんな感じだった。
「それじゃ、早速始めるとするか」
俺は今からやろうとしていることを念のため、エルフィーネにも話しておいた。
何をするかというと、当然、スキル検証だ。
調べたい項目はいくつかある。
まずは当然、何を呼び出せるかだ。
呼び出すものを強く明確にイメージし、その上で、『
このときに重要となってくるのは、勿論、召喚と叫ぶか、それともサモンと叫ぶかなどといったしょうもないことではない。
言わずもがな、妄想力である。
『うへへへ』『げへへへ』とかっていう、変態さんがよくやるあれだ。
いや、冗談ではなく、本当のこと。
つまり、そのぐらい強烈な想像力が必要となってくるらしい。
だからだと思う。
あのとき、初回召喚時に――別に俺は変態じゃないけど、あのときめっちゃ色々なことを妄想してたからな。
エルフの理想像とか島とか。
あれがあったからこそ、想像してた以上の美人エルフさんが目の前に召喚されたわけだし。
つまりはそういうことだ。
召喚と叫ぼうが、サモンと叫ぼうがそんなことはこの際、どうでもいい。
スキル的にも特に区別されないようだから、どれだけ想像力を働かせられるか。
ただその一点のみ重要なようだった。
それから、この召喚スキルなんだけど、どうやらレベルとか消費魔力とかが設定されているらしい。
ただ、どのレベルで何が召喚されるかといった詳細な説明はまったくなかった。
俺の頭の中にインプリンティングされているスキル説明にも、その辺の記載がまるでない。
それでも、一応、今現在の俺のスキルがどういうステータスになっているのかだけはなんとなくわかっていた。
理屈とかそういったものじゃなくて、なんか、感覚的にというか、さも最初から知っていたかのような、そんな不思議な感覚だった。
そして、それが告げている俺の召喚スキルの現在はというと――
【異世界召喚スキル『レベル0』/召喚対象『小規模物体』】
ということらしい。
現在の魔力量がどれぐらいあって、一回の召喚でどのくらい減るのかとか、どうやったらレベルが上がるのかといった、そういった基本的な情報はまるでなかった。
つまり、使って試せ。手探りで色々調べて覚えろ。
そういうことなのだろう。
なんとも不便で不親切なスキルだった。
だけど、やるしかない。やらなければ現状、俺たちに生きる術はないのだから。
「エル。今からちょっと何が召喚できるのか試してみるけど、何が起こるかわからないから、いつでも逃げられるようにしておいて」
召喚というのは必ず成功するわけじゃないらしい。
明確なイメージを持たなければ必ず失敗する。
そして、失敗したら具体的にどうなるかなどといったことはまるでわからなかった。
魔力が減るだけで何も呼び出せないとかだったらいいけど、おかしなものを呼び出したら非常に困る。
ここは異世界の無人島だからな。
とんでもないものを呼び出さないとも限らない。
――例えば、魔王とか!
俺は彼女から少し離れて、砂浜へと移動して行った。
「ユキ! よくわかりませんが、気をつけてください!」
「あぁ、任せて!」
「もし最悪、おかしなものを呼び出したりしても、倒せそうだったら私の精霊魔法でやっつけますので!」
甲高くて大きな声でそう告げてくる麗しのエルフィーネ様。
なんとも逞しい台詞じゃないか。
思わず涙が出そうだよ。
本当なら、俺も正面切って戦いたいところだけど、そんなスキル――
「あ……」
そう言えば、戦闘スキルももらえるとか言ってたな。
どうする?
先にそちらを調べるか?
しかし、もう既に日没まであまり時間もない。
大分腹も減ってきているし、それに、こんな常夏の島だ。
飲まず食わずなんかでいたら、速攻で干からびてしまう。
だから、後回しにした。
「やるか」
俺は覚悟を決め、目を瞑った。強く深く、意識を集中した。
多分、今俺が一番欲しいものを想像した方が成功率は高いだろう。
であれば、一つしかない。
水! キンキンに冷えたペットボトルに入った水だ!
「召喚!」
かっと目を見開き、近くに綺麗なエルフ娘がいることも忘れて、そう叫んでいた。
その瞬間――
どさっと、目の前に何かが現れて、真っ白い砂浜の上にそれが転がった。
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