11.精霊魔法でライフラインを確保
二人で話し合った結果、やはり、今すぐには死なないまでも、手持ちの水と食料だけでは三日も持たないだろうと再確認することとなった。
「これ、早急になんとかしないと、マジやばいよな」
「そうですね。ですがこの島、なんとなくですが、あまりいい魔力の流れを感じないんですよね」
エルフィーネはそんなことを言いながら、背後の森を仰ぎ見るようにした。
俺も釣られてそちらを見た。
今現在、何時なのかはなんとなくわかる。
先程、携帯電話の電源を切ったときにちらっと時間を確認したんだけど、丁度十四時ぐらいだった。
この異空間にも外の世界の時間が適用されるかわからないけど、それでも太陽の位置を確認してみると、多分、似たようなものだろうと思えた。
そんな時間帯の森。
鬱蒼と生い茂る樹木はそのほとんどがかなりの高さまで育っていて、遠くの景色を拝むことはできなかった。
俺の右手側三十メートルぐらい先にある大海原がどのぐらいの広さかわからないけど、沖合まで出ればなんとか島の全容を確認できるかもしれない。
けれど、さすがにそこまでしたくはなかった。
ていうか、よく考えてみたら、この現実世界にできた異世界すべてが俺の領土みたいなものなんだよな。
この島は元より、島の外の海も全部俺のプライベートビーチみたいなものだし。
なんだか急に金持ちになったみたいだな。
無人島丸ごと買い占めて、そこから二百メートル海里すべて、俺の領土! みたいな。
そう考えてみると、今の状況は悪くない。
南国リゾートを手に入れたようなもんだからな。
だけど、そう簡単に喜べる状況でないのは言うまでもない。
何しろ、水も食料も何もないのだから。
調達方法もまだ何もわかっていないし、寝床の確保だってやらないといけない。
とんでもなく問題山積だった。
それに、エルフィーネじゃないけど、確かにこの島、なんだか嫌な気配が漂っているんだよな。
それがなんなのかよくわからないけど。
「ねぇ、エル」
「はい?」
俺の呼びかけに応じて、彼女が振り返った。
出会ってからまだ一時間も経っていないけど、大分俺に気を許してくれているみたいで、最初はあれだけ離れた距離から思い切り警戒されていたのに、今は手を伸ばせば触れられるような至近距離に、彼女は座っていた。
そして、表情には硬さも見られない。
俺はそれだけを確認して、心の中で安堵の吐息を吐いた。
「エルの精霊魔法? とかで水とか火とか出せたりしないかな? 食べ物は森の中を探せばなんとかなるかもしれないけど、水までは確保できるかわからないし」
「そうですね。ウンディーネとサラマンダーを召喚すれば、そちらはなんとかなるかもしれません」
「マジで!?」
「はい。水の精霊ウンディーネは文字通り、水魔法を得意としますから。あまり大量には用意できませんが、なんとかなると思います。火の精霊サラマンダーも、呼び出せば火を起こすことぐらいは可能でしょう。ですが、どちらも魔力を消耗しますので、一日に何度も呼び出すのはちょっと……。魔力の回復も、一晩寝れば完全に回復するというわけではありませんので」
そう言って、彼女は美しい顔を曇らせた。
「そっか。じゃぁ、毎日のように継続して使うのは無理か」
「はい。なんだか、申し訳ありません」
頭を下げてくる彼女に、俺は大慌てになった。
「いや、エルが謝ることじゃないよ。全部俺の責任だし。だから顔を上げてくれ」
「はい……」
俺の言葉にエルフィーネは元通りの姿勢へと上体を戻す。
それを見ながら、俺はどうしようかなと考えた。
いきなりこんなサバイバルな人生を送ることになるとは、夢にも思っていなかったからな。
キャンプとかアウトドアとか嫌いじゃないけど、そこまで積極的にやってこなかったから、こういうときどうしていいのかさっぱりわからないぞ?
こんなことになるんだったら、もうちょっと定期的に一人キャンプでもやっとけばよかったよ。
そうすれば、森の中から水とかを調達する方法も思いついたかもしれないのに。
だけれど――
忘れてはいけないのは、ここは現実世界であって異世界でもあるということだった。
今までの常識なんかまったく通用しない、そんな場所だ。
だからこそ、地球での知識があったって、なんの役にも立たないかもしれない。
だったら、何が役に立つというんだ? 異世界なんかで――
「あ……」
そこまで考えて、俺は大事なことを失念していることに気が付いた。
そうだよ。俺には異世界召喚スキルとかっていう、意味のわからないものがあったじゃないか。
そう。異世界に存在する、ありとあらゆるものを召喚できるとかっていう、とんでもスキルが。
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