第2話あ、そうだ。魔王辞めちゃえばいいじゃん

◇◆◇


……あれからどれくらい経ったのだろうか。体感8時間くらい書類に向き合っている。「なぁ作業再開してからどれくらい経ったのか?」取り敢えず聞いてみる。

「まだ、5時間です。が、もう書類の半分を片付けてますね。すごいですね。」

全く誠意のない返答だ。ほぼ棒読みだ。ここまで適当な返答はないと断言できるくらいだ。彼の気持ちもわかる。あまり経っていないというのに時間を聞いてくるのはご法度だ。機嫌を損ねやすい。ただ…作業中にふと考えてしまったのだ。魔族は実力至上主義社会だ。強い者ほど上に行く。それを利用して『四天王』の誰かを魔王にしてしまえばいいではないか!とそんな事を考えてしまったのだ。それ以降頭がその事をずっと考えている。作業に身が入らないのだ。だからこそだ。今言おう!

「ゲイル!魔王推薦試験をやろう!一ヶ月、いや1週間後にしよう!」僕は言う。そんな唐突に言われてもと言わんばかりの顔をしながら「…どうしてそんな唐突に物事を言えるのですか?」そんな事を言うゲイル。別にいいではないか。僕は魔王を辞めたい…!ゲイルには理解が出来ないと思うがこの最高の試験内容を語ろうではないか。

「まぁ、最初にオレは公務が嫌だ「そんな事魔王城の誰もが知ってます。」割り込むなよ!」

僕が公務が嫌いなのは周知の事実らしいみたいだった。

「…コホン、それ以外にも理由があってだな。魔族の統治はオレには向いてないと思うのだよ。オレは元々城下町の魔族だ。ただ才能があっただけだ。このような事はオレには不向きだ。何より魔王になった理由が魔族と人間との共生だ。魔族側に多大な問題があるのなら諦めるしかない。

理由はこんな感じだな。続いては試験内容の事だな。試験内容はまず、筆記試験。簡易的な魔族や人間への認識の確認。これは無知な者が魔王になったとしても崩れるだけだ。

そして次に基礎能力診断だ。これは〈心臓〉が2つ以上あれば出来るモノにしようと考えている。魔王になれる最低基準は〈心臓が2つ以上〉だからな。力無き者が魔王になっても魔族への圧力にはならない。最後にオレが出る。とは言ってもやる事は簡単だ。〈一歩も動かない魔王に攻撃し、膝をつけさせる事〉が出来ればクリアだ。まぁ、ある程度の反撃はするけどな。回避もする。ただ、回避以外で動かなければOKだ。

まぁこれはおまけだな。魔王に勝てたら一時的に〈歴代最強の魔王に勝った魔族〉のレッテルが貼られるからな。これで試験を受けた者が勝てば晴れてそいつは魔王となり、オレは『先代魔王』となる。先代魔王となったオレはおさらばバイバイになる。魔王になったそいつは上に上がれて嬉しい。まさにWin-Winと言うやつではないか。」

ふぅ、語り終えた。そういえば僕はあまり長文を喋らないタイプだったな。だが今は別にどうでもいい。魔族の抑制に失敗したと言うのもあるがそれとは別に公務にはもう懲り懲りと言うのもある。さて、この最高な案をゲイルの意見によっては改善しようと考えているのだ。さぁ、聞かせてくれ!「……面倒なやり方でやりますよね…たまに。」とてもでは言い表せない。何と言えばいいのかわからないくらい心を傷つけられた。落ち込んでいると「でもまぁやり方が回りくどいですけど試験的にはとても的を射ってますね。」心に希望がみえた。闇の禁断魔法くらいに暗くなっていた僕の心に一筋の光がみえた気がした。「……今日のアナタは表情がころころ変わりますね…。」とそんな事をゲイルが言っているがどうでもいい。第1段階は成功したのだ。後はどうやって魔族を集めるかだ。張り紙に出してもいい。僕直々に宣伝するのもいい。考えがいのあるものだ。

「はぁ、それは今溜まっている公務が終わったら実施さればいい話ではないじゃないですか。」

…たしかにそうだ。だが夢では無いことが確証された。これから先は頑張れそうだ。魔王を辞めるために…!

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魔王でしたが公務に疲れたので冒険者になってスローライフを送ろうと思います。 詩詠 @Valdisia7748

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