魔王でしたが公務に疲れたので冒険者になってスローライフを送ろうと思います。
詩詠
第1話魔王になろうと思った自分をぶん殴りたい…
異世界といえば勇者、魔王が一番に出てくるであろう。実際そうだ。童話では勇者が悪い魔王を倒して世界を平和にする題材が多い。だが、僕は思う。弁明したい!と。別に僕は何もしていないし何かやろうと思わない。せいぜい魔物の行動の抑制、統治魔物がやらかした場合は僕直々に制裁を食らわしたり魔王軍に入ってない野良の魔物を編入(監視しやすいように)するくらいだ。だが!だがなのだ。何も関係無い天災も王の訃報も全てこちら、魔王である僕に向いて来るのだ。さて、現実逃避はここまでにして今を見ようではないか。そう思いゆっくりと瞳を開ける。すると目の前に現れたのは先代のツケ、魔王軍がやった損害の報告書、僕がいい年だからという名目でのお見合い相手の情報が書かれたゴミ、どうしてこんなにも紙の山が出来ているのだろうか?頭ではわかってる。だが動けないのだ。この大量の書類に。
「なぁ、この世で一番怖いものって…何だとおもう?」
「なんですか?急に、働き過ぎて脳が一部破壊されましたか?」「そういう訳じゃないよ。ただお前の怖いものが気になったっただけだ。」
僕が怖いものといえば一つしかない。それは…目の前の終わりのない強制的な仕事だ。最近とある世界では多様化が進んでおり、自由な考えとまではいかないが多少柔らかい思考回路をもつ事が出来る社会だとあった。魔王になった理由もそうだ。魔族の実力社会は後に考えるが今大事なのは『人間との交流、貿易、種族の壁を超えたものだ。』その目的を達する為に元々魔王推薦があった僕はそれを承諾し、魔王になったのだ。その目的の道半ばなのだが…こいつらやっぱ潜在的な考えが取り払われてはいない。魔族説得が出来なければ真の平和は夢のまた夢だ。そんな事を考える僕を差し置いていう。
「私は…死が一番怖いですね。」
と、なんとも誰もが思うであろう言葉その1、『死ぬのが一番怖い!』だ。
「面白みがないよな。ゲイル。」「なっ…そちらから聞いてきたでしょう?!とばっちりではないですか?!」
そうそう、紹介が遅れたがこいつはゲイル・ヴィシア。秘書ともいえるし側近ともいえるなんともいえない立場のやつだ。
因みに僕はヴァルディス・ゼノグレイスだ。
「うん。自己紹介は必要だよな。」思わず言ってしまう。もちろんの事ゲイルは何だこの人という目で見てきたので言っておく。
「観測者が来ただけだからな。」「何も言ってませんよ?!?!てか観測者って誰です?!?!」
何か喚いているが関係無い。あ、そうだ。観測者よ。世界を観光しに来ないか?大丈夫。『器』は用意する。………駄目か…ま、いい答えは求めていなかったからいいや。…………さて、やらなければ。だがその前に言いたい。
「魔王になろうと思った自分をぶん殴りたい…!」「何言い始めてるんですか?!?!先代の想いを無下にしないでくださいよ!」
…反応は面白いが何かと面倒なタイプなんだよな。こいつ。まぁ、どうせ言ったとしてもこいつには理解ができないであろう。理解できたとしても何十年後だ。理解してほしいと少しは思うがしないでほしいと思う。矛盾してしまっているがどうしようもない。だってそうだろ?知恵持つ者たちは矛盾と矛盾が重なり合って出来ている。もちろんの事、僕もだ。
……さて、徹夜記録更新しそうだな。後で姉に珈琲を淹れて貰おう。それだけで頑張れるのだ。
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