刺された

 そう感じたのは背中に熱を得たからだ。

 金属が背中に突き刺さったのであれば、最初に感じるのは冷たさのはず。なのにそれは熱を伴った感触で私を襲った。

 全身から力が抜け、気付けばかたりと膝を落とす。

 そこでようやく気づいた。自分は人間ではない。

 ブリキだろうか。金属でできた体だ。

 もしかしたらプラスチックかもしれない。金属にしては音が軽過ぎる。


 ともかく、私はかたりと倒れ伏した。

 血は出ない。

 熱は錯覚だった。

 ただただ、体が冷えていく。

 最初から冷たかったのか。それとも刺されて死ぬと確定したから作り物だったことになったのか。


 末期まで、判断はできなかった。

 ただ、私以外に誰も私の停止を観察するものがいなかったのは確かだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る