動画配信者への道

紅音「やっぱ美味いわ〜」


ナデシコ特製の豪華絢爛な弁当を食べながら、そう呟く僕。


あの日以降、僕とナデシコは一緒に暮らすようになり、学生生活で忙しい僕に代わって、ナデシコが家事をするようになった。


僕自身としては、せめて洗濯ぐらいはやりたかったものの.....


「全てワタクシにお任せください♡」


結局、ナデシコに押されてしまったのだった。


ちなみに、ナデシコのことを知らない人達には、彼女のことを〈知り合いのお姉さん〉として紹介している。


だって、正体を知ったら気絶しそうだしね。


樹「にしても.....お前の知り合いのお姉さんってスゲェよな」

紅音「それ思った」


家事の腕はパーフェクトだし、何より神獣だからな。


樹「特に、このだし巻き卵がめちゃくちゃ美味いよな。何というか.....一度食べたら、普通の卵焼きが食べれなくなるっていうか..........」

紅音「それな」


ナデシコの料理は、どれも手が込んでて美味いんだよな〜。


樹「..........紅音、お前の知り合いのお姉さんってさ、料理の天才じゃねぇのか?」

紅音「正しくは、だけどね」

樹「ふぅん.......」


僕の言葉を聞いた樹は、何かを考えた後..........こう言った。


樹「てかさ、これって.................動画配信のネタになるんじゃね?」

紅音「ブフォッ!?」


樹の発言に対し、思わず目を見開きながら、ませてしまう僕。


紅音「え、何だよ急に」

樹「紅音、お前.....この前言ってたよな、『動画配信にチャレンジしてみたい』って、だったらさ、これをネタにしてみるのもありじゃないかって思っただけ」


た、確かに.........


紅音「けど、僕の家には機材とかはないぞ?」

樹「大丈夫大丈夫!!俺に任せとけ!!」


............本当に大丈夫なのか?


そう思いながら、弁当のおかずを一口食べる僕なのだった。




☆☆☆



紅音「というわけで、動画配信をやろうと思うんだけど..........ナデシコ的にはどう思うんだ?」

ナデシコ「もちろん、オールOKですわ♡」


わぁ、即答だぁ。


紅音「な、ナデシコはそれでいいの?」

ナデシコ「主様のやることに反対していては、妻は務まりませんからね♡」


うーむ、ナデシコらしい発言だなぁ。


ナデシコ「それで、どんな動画を配信するんですか?」

紅音「ナデシコの料理作り配信」

ナデシコ「ワタクシの料理.....ですか?」


不思議そうな顔で、そう言うナデシコ。


紅音「うん、ナデシコの料理ってめちゃくちゃ美味いだろ?だから、それをネタにしてみようと思って」

ナデシコ「主様.......」


僕の言葉を聞き、何故か涙目になるナデシコ。


...........僕、なんか変なことでも言ったのかな?


ナデシコ「このワタクシの料理をネタにするなんて...........あぁ、ナデシコは幸せ者ですわ♡」


あ、涙は涙でも、嬉し涙なのね。


紅音「ま、まぁ、ナデシコが良いのなら、良かったよ」

ナデシコ「ですが主様、撮影用の機材はどうするつもりなのですか?」

紅音「そこは樹が何とかしてくれるってさ」

ナデシコ「まぁ!!それは助かりますわね」


ただ、どうやって入手するかが心配だけどな。


ナデシコ「ワタクシの料理をネタにするのは良いんですけど...........最初の料理は何にしましょうか?」

紅音「とりあえず、最初の配信のネタは、ナデシコ特製だし巻き卵にしようかなって思ってる」


だって、めちゃくちゃ美味いんだもん。


ナデシコ「了解しましたわ♡」


俺のリクエストを聞き、嬉しそうに返事をするナデシコ。


...........そういえば、ナデシコが作るダシ系のご飯が、何故かめちゃくちゃ美味い気がするのは、あれは気のせいなのか?


そう思っていると.....ナデシコは、どこからか、ミイラ化したキノコっぽい物を、キッチンに持ってきていた。


紅音「...........ナデシコ」

ナデシコ「はい、何でしょう?」

紅音「そのキノコっぽいヤツは何?」

ナデシコ「何って.....マタンゴの干物ですわ♡」


ナデシコの口から、マタンゴという単語が出た瞬間、俺の思考はフリーズした。


マタンゴ。


それは、キノコ系のモンスターがメインのダンジョン...........【キノコの王国】によく出現するモンスターで、戦闘面では弱いものの、逃げ足が早いために、B級モンスターとして名を知られている。


そして、そんなモンスターの干物が、今現在、僕の目の前にあるのだ。


紅音「ま、まさかとは思うけど..........そのマタンゴの干物で、ダシを取っているのか!?」

ナデシコ「流石は主様、大正解ですわ!!」


パチパチパチと手を叩きながら、僕を褒めるように言うナデシコ。


...........どうりでダシがめちゃくちゃ美味いわけだ。


紅音「..............後で色々と面倒なことが起きなきゃいいけど」


先のことに対し、不安を感じながらも、僕はそう呟くだった。


ナデシコ「あ、もしかしてワタクシに見惚れてます?」

紅音「いや違うからね!!」

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