あとで正式なタイトルをつける01

生き残るためには何が必要か。

ただ死なないだけではなく、できるだけ長く、出来れば幸せに暮らしたい。

空気、水、食料の問題は一応解決した。

燃料はガソリンは無理としても、煮炊きする程度の薪は確保できる。

住居は車で寝泊まりできるし、1週間から1か月くらいはなんとか二人で生きていけなくはない。当座はしのげるが、そこからが問題だ。


「一応と思って試してみたが、スマホ同士で連絡は取れるから最悪の事態になっても片方は助かる可能性が高い。」

「んで、生き残ったは、ええが、手詰まりになったらどうするよ?」

「色々やってなんとかする。幸い、約1tの鉄資源もあるしな。」

その“車”はまだローン終わってないなんですけど。


兄の話では、道中に人間が暮らしているらしい形跡があったらしい。

もし、現地人と出会ったら?


「個人的には※7 Want to be closeなんだけど、その次の一手が問題だわな。」

「※8 グラディウスかペルソナ3でいく?それとも?」

「※9 花札で高得点とっても、相手の数が多すぎて最期は※10 戦国自衛隊になるから、できれば※11 The Super SHABERIで。」

「さすがにわかんねえよ。」

「じゃあ、異世界おじさんで。」

「ん、わかった。捕まって殴られるのはそっちね。」

「例え捕まっても※12 長男だから我慢できる。お前には我慢できない。」

「はいはい。つよいつよい。」


フィールドワークの出来るタイプの文系の兄は基本的に日本人以外となら基本的に誰とでも会話できる。兄いわく、同族嫌悪というか。だそうだ。

交渉さえ出来ればきっと何とかしてくれるだろう。

話題も次第になくなり、将来を考えて暗澹たる気分になりそうなときに不意に兄は下手な歌を歌い始めた。多分、機嫌が良い証拠だ。

歌は俺の方が大分上手いのだが、兄はリズム感だけは申し分ないので黙って聞いてやることにした。

…って、インストばっかりだし、ビッグブリッヂの死闘とかベルベットルームの曲とか本当、何考えてるのか微妙な選曲ばっかりしやがって…。

※13「わんわん。“西暦2521年7月13日。あれから1年が経とうとしていた。船のエネルギー、食糧が底を尽きはじめ…”」

いつしか、伝説的なSTG(シューティングゲーム)のインスト+語りになっていた。絶望的な状況に聞こえるが、この曲名は確か……。

ひとまず、正面からの戦闘はなるべく避けろってことはわかった。


異世界でも兄は兄で変わらなかった。

その変わらなさを、弟である自分には弱さを見せない芯の強さを、ほんの少しだけうらやましく思った。


あ、でもあのゲーム絶望的な難度じゃん。

やっぱこの兄、何も考えてないな。


「だが、それがいい!」


人の心を読むかのような合の手を入れるなや!




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