はじめに
この物語は旅行記を元にしたフィクションであり、非実在と注釈がある場合は実在する団体等と名称・目的等が酷似する団体等が存在したとしても単なる偶然の一致であり、同名の実在する団体等とは一切関係がありません。
「簡潔に説明しよう、ここは異世界だ。」
※2 アイエエエ、イセカイ、イセカイナンデ?
「まあ、めんどい説明は置いといて、見ろ。月がきれいだぞ。」
弟にむかってそれ?兄よ、大丈夫か??
仮に夏目漱石なら近親おっさんBLで完全にジャンル違和やぞ。
眺めた月は確かにきれいだった。
明かりの無い星月夜に浮かぶそれは妙につるんとした半月だった。
「そう、2つ妙な点があるな。特徴的なクレーターがないこと、月にクレーターができたのは人類成立以前、それと5月5日は十五夜の大潮のはずが、今日は半月だ。」
「つまり、時間及び空間を超越した可能性が高い。それに、じっと見てると※3 月が回ってるんだわ。つまり、ここは地球ではないどこかである可能性が高い。」
「あと、結論から言うとこの世界はハビタブルゾーン=我々が生きていける世界である可能性が高い。食べたり飲んだりした結果からも明らかだ。」
と、※4 満州帰りに仕込まれたボーイスカウトの技術を応用したペットボトル製の簡易ろ過機と宇奈月ビールの空き缶で作ったアルミ鍋で沸かした水を飲んでいた。
ご飯も何故か炊けている。
兄はいつもそうだ。2人の時は必ず危険な方を選ぶ。
俺に好きなようにさせてくれて、危なくなる前に止めに入る。
すぐに状況に適応し、普段は面倒くさがりで……そして現代日本に致命的に向いていないラノベワナビだった。今回は願ったり叶ったりというところか。
兄の話をまとめたら、※5 人間原理という理論によると、観測者である我々二人はこの世界に適応するように作り変えられて、例えば、この世界の酸素に相当するものを消費して二酸化炭素に相当するものを吐き出している。だから呼吸ができる。水分やカロリー、栄養などもそうだと仮定できるそうだ。他にも、この世界の1日が地球時間の12時間だとすれば、時計が倍の速さで進んだり、概日サイクル(体内時計)が約12時間のサイクルになっているので、特に地球にいるときと違和感なく過ごせるようになっているらしい。1年は計算によると300~400日の間くらい。
以下長くてくどくなるので省略
なので、異世界転移ではなく、転生と主張したいらしい。
「さて、では何をする?何をしたい?」
兄が紳士スーツのはるやまで89800円の7割引きで買ったご自慢のコートを翻しながら突然、現代人にとっての究極とも言える問いを問いかけてきた。
「どっちゃでもいいけど今はとりあえず※6 “ライオン”かな」
「OK、“ライオンは強い”な。」
とりあえずの方針は定まった。
家系的に下戸の兄と酒を酌み交わし、来し方、行く末に思いをはせる。
どうしようもない兄とのどうしようもない異世界に乾杯。
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