第11話 車内電源装置のあり方にまで・・・

 先ほど山藤さんがおっしゃいました、電源装置を床下に装備した客車の車内騒音の件につきましては、実際、いくらかお声をいただいております。

 これまでにも、万博輸送用に開発しました急行用の12系客車のスハフ12や14系客車でも同じく座席車のスハフ14のほうは、座席車という点もありまして、さほど強い御批判を頂戴しておりませんでした。

 まあ、その電源のおかげで冷暖房が完備されるというところが大きいというのはあると思われます。まして14系座席車につきましては、簡易ではあるがリクライニングで切る座席をつけましたからね。


 ですが、寝台となりますと、横になって寝ていただく場所でございますから、座席車のようにまあいいかとは、やはりなりません。

 今後の車両電源をどうするかにつきましては、


従来型(20系客車のこと:著者注)のように電源車を作るか、

この14系客車のスハネフ14のように床下に装置を分散して置くようにするか、


今うちの会社でもかれこれ検討中でございまして、明確に「こちら!」といえるだけの結論が出るには、至れておりません。


 寝台のほうにつきましては、現に山藤さん御指摘の通り、中にはうるさくてたまらんというお客様もいくらかいらっしゃいます。

 今は急行列車で、しかもサービス品ということですからある程度批判は少なくて済んでおりますが、これを東京から九州筋の特急に使うとなれば、その分批判が厳しくなることも、十分予想できております。

 ではどう対策するかと申しますと、これはもう、時刻表に加えまして、みどりの窓口の係員にその旨を徹底して一言添えるなどの配慮を考えております。

 もちろん客数が少ない場合でしたら、現場の列車内で車掌の判断で他の車両に移乗していただく措置をとることもあってよろしいかとは、考えております。


・・・・・・・ ・・・・・ ・


 川中氏の発言に、まずは初対面の堀田教授が感想を述べる。

「やけど川中さん、混雑時に他の車両への移乗は、さすがに無理違いますか?」

「堀田先生の御指摘通りです。山藤さんみたいな図太い方ばかりでしたら(一同爆笑)そんな心配、一切しなくてもいいものですが、世の中、いろいろな人がいらっしゃいますから。その最大公約数をどこに求めるかって、難しいですよねぇ」

「私は根っからの職業軍人の山藤君と違いまして、画期的な判決を書く勇気もないほどのいささかならず繊細な文官でありましたが(爆笑に近い苦笑)、それでも、車外はともかく車内であのくらいであれば、むしろ新たな風情でもできたようで、さほど気になりませんでした」

 この席で最年長の真鍋弁護士の弁に、更なる笑いが酒席に広がった。

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